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第三話 バルデス辺境伯との結婚
「……サンドラ嬢」
アルバロ様、バルデス辺境伯閣下が私の前に跪きました。
野趣に満ちたお顔が私を見上げ、獣のような琥珀の瞳が私を映します。
低くて艶やかな声が言葉を続けます。
「これは政略結婚だ。だが貴女が俺を愛してくれるのなら、俺は命懸けで貴女を守り幸せにすると誓おう」
「……アルバロ様は私を愛してくださいませんの?」
「ああ、それなんだが……」
彼は少年のような笑みを浮かべて、恥ずかしそうにご自分の頭をかきました。
「貴女があんまり別嬪さんだったんで、年甲斐もなくときめいてるんだ。たぶんもう惚れかけてる」
「わ、私は傲慢令嬢と呼ばれているのですけれど、それでもよろしいのですか?」
「貴女が傲慢令嬢だから、俺は求婚する気になったんだ。なにしろ、うちの辺境伯領にはヤベェのばっかりだからな。優しいだけの女じゃ食い殺されちまう」
そんなわけで、傲慢令嬢は辺境伯閣下に嫁ぐことになりましたの。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
旦那様がお見合いのときにおっしゃっていた、食い殺された優しいだけの女性とは前の奥様のことでしたの。
彼女は中央貴族派との政略結婚で嫁いで来た方で、美しい容姿と優しい性格が魅力だったそうです。
……旦那様の好みとは違っていたそうですけれどね!
美しい容姿はともかく優しい性格のその方は、魔の森から響いてくる魔獣の咆哮に怯え、魔獣の血を浴びたバルデス辺境伯領の騎士団に怯え、最後には騎士団が訓練する剣戟の音にも怯えるようになっていたそうです。
都会育ちの彼女には魔石目当てに甘い言葉で近寄ってくる悪徳商人どものほうが心休まる存在で、優しい性格のために彼らが明らかに悪事をおこなっていても窘めることも出来ず──魔獣と荒くれ騎士と傭兵が集まっているだけでもヤベェのに、辺境伯領にヤベェ悪徳商人の巣まで作ってしまったわけですわ。
結局心労でお亡くなりになっているわけですが……この過去を旦那様のせいにするのは酷というものでしょう。旦那様は魔獣の大暴走を制圧して、騎士団を鍛えて、領地の村や町を回って、山賊や盗賊を見つけたら退治して、と大変な毎日を送ってらっしゃるのですもの。
彼女の性格や辺境伯領の状況も考えずにゴリ押しした、中央貴族派の仲人が一番罪深いと思いますわ。
悪徳商人どもの裏にいるのも彼らではないかしら。
敵対する派閥の辺境伯領を食いものにするつもりだったに違いありませんわ。
旦那様がこの結婚を断れなかったのは、魔獣の大暴走の規模が大きかった年に中央貴族派から食糧の援助を受けたからですの。
魔獣に畑を台無しにされたからといって、領民を飢えさせるわけにはいきませんものね。
前の奥様のことを教えていただいても私の心は変わらず、お見合いから一ヶ月もしない内にバルデス辺境伯領へと嫁ぐことになったのですわ。
ちなみに初夜は最高でしたわ!
二度目のときにフラカソ王太子殿下に嫁いだ記憶が残っているので、アルバロ様に淫らな女だと思われるのではないかと心配していましたけれど、そんな心配無用のものでしたわ。
殿下は本当に貧弱な坊やで……いえ、夫でもない方の体の一部や技巧に言及するのは失礼なことですわね。とにかくアルバロ様が最高ということですわ。
アルバロ様、バルデス辺境伯閣下が私の前に跪きました。
野趣に満ちたお顔が私を見上げ、獣のような琥珀の瞳が私を映します。
低くて艶やかな声が言葉を続けます。
「これは政略結婚だ。だが貴女が俺を愛してくれるのなら、俺は命懸けで貴女を守り幸せにすると誓おう」
「……アルバロ様は私を愛してくださいませんの?」
「ああ、それなんだが……」
彼は少年のような笑みを浮かべて、恥ずかしそうにご自分の頭をかきました。
「貴女があんまり別嬪さんだったんで、年甲斐もなくときめいてるんだ。たぶんもう惚れかけてる」
「わ、私は傲慢令嬢と呼ばれているのですけれど、それでもよろしいのですか?」
「貴女が傲慢令嬢だから、俺は求婚する気になったんだ。なにしろ、うちの辺境伯領にはヤベェのばっかりだからな。優しいだけの女じゃ食い殺されちまう」
そんなわけで、傲慢令嬢は辺境伯閣下に嫁ぐことになりましたの。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
旦那様がお見合いのときにおっしゃっていた、食い殺された優しいだけの女性とは前の奥様のことでしたの。
彼女は中央貴族派との政略結婚で嫁いで来た方で、美しい容姿と優しい性格が魅力だったそうです。
……旦那様の好みとは違っていたそうですけれどね!
美しい容姿はともかく優しい性格のその方は、魔の森から響いてくる魔獣の咆哮に怯え、魔獣の血を浴びたバルデス辺境伯領の騎士団に怯え、最後には騎士団が訓練する剣戟の音にも怯えるようになっていたそうです。
都会育ちの彼女には魔石目当てに甘い言葉で近寄ってくる悪徳商人どものほうが心休まる存在で、優しい性格のために彼らが明らかに悪事をおこなっていても窘めることも出来ず──魔獣と荒くれ騎士と傭兵が集まっているだけでもヤベェのに、辺境伯領にヤベェ悪徳商人の巣まで作ってしまったわけですわ。
結局心労でお亡くなりになっているわけですが……この過去を旦那様のせいにするのは酷というものでしょう。旦那様は魔獣の大暴走を制圧して、騎士団を鍛えて、領地の村や町を回って、山賊や盗賊を見つけたら退治して、と大変な毎日を送ってらっしゃるのですもの。
彼女の性格や辺境伯領の状況も考えずにゴリ押しした、中央貴族派の仲人が一番罪深いと思いますわ。
悪徳商人どもの裏にいるのも彼らではないかしら。
敵対する派閥の辺境伯領を食いものにするつもりだったに違いありませんわ。
旦那様がこの結婚を断れなかったのは、魔獣の大暴走の規模が大きかった年に中央貴族派から食糧の援助を受けたからですの。
魔獣に畑を台無しにされたからといって、領民を飢えさせるわけにはいきませんものね。
前の奥様のことを教えていただいても私の心は変わらず、お見合いから一ヶ月もしない内にバルデス辺境伯領へと嫁ぐことになったのですわ。
ちなみに初夜は最高でしたわ!
二度目のときにフラカソ王太子殿下に嫁いだ記憶が残っているので、アルバロ様に淫らな女だと思われるのではないかと心配していましたけれど、そんな心配無用のものでしたわ。
殿下は本当に貧弱な坊やで……いえ、夫でもない方の体の一部や技巧に言及するのは失礼なことですわね。とにかくアルバロ様が最高ということですわ。
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