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第三話 私を殺さないでくださいね、どうせ死にますから。
昨夜の初夜で心を殺されて、私はもうなにもかもどうでも良い気分でいました。
私の髪飾りが年代物だと気づいたからといって、ロドルフ陛下が私との過去を思い出してくださったわけではありませんし、謝られたとしても髪飾りが元に戻ったりはしません。
私は陛下を王妃の寝室から追い出して、控えの間の侍女達も無視してひとりで眠りました。
どうせ侍女もヴィダル侯爵の寄子貴族の娘達なのです。
デスティネ様には忠義を尽くしても、私の役には立ってくれません。
ロドルフ陛下の希望とドゥモン王国の側妃一派の悪意で、私には祖国から連れてきた使用人達はいません。伯父様は最後まで反対してくださいましたが、どうしても同行を許されませんでした。
この王宮にいるのは敵ばかりです。ですが一晩寝て、私の気持ちに変化がありました。
悪魔にこの身を捧げるという約束を破ることは出来ません。
それ以前に大精霊様方から罰を受けるかもしれません。
けれどラブレー大公である伯父様の憂いを取り除き、私にとっては敵でも味方でもないデュピュイ王国の民を救うことは出来るかもしれません。
複雑そうな顔で隣に立っている陛下には許可を取っています。
お飾りの王妃の発言を許してくださったのは、自分が砕いた髪飾りがラブレー大公家で長い刻を経た大切なものだったということを理解してくださったからでしょう。
初恋云々は、もうどうでも良いことです。
邪魔されたくなかったので侍女達は控えの間に閉じ込めたままです。
最初から私を嘲るつもりで集まったヴィダル侯爵一派の顔を見回して、私は口を開きました。
デスティネ様を囲む方々は気づかぬ体でお喋りを続けていらっしゃいます。
「初めまして、ヴィダル侯爵一派の皆様。私はドゥモン王国から嫁いで来た王女レアです。ラブレー大公である伯父が私の持参金としてつけてくれた領地さえ手に入れば、私のことなど殺しても良いのだとお思いなのだと思いますが、デュピュイ王国を滅ぼしたくなければ私を殺さないでくださいね」
どう反応して良いのかわからないでいる参列者達に、私は微笑みました。
隣にいる陛下も戸惑っているようです。
陛下には自分の口から挨拶をしたいということ以外はお伝えしていません。
「実は私、東の帝国のアザール公爵からも求婚されておりましたの。もちろん愛などございませんし、正当な王女である私や母の実家のラブレー大公家に力を持たせたくない側妃一派によってこのちっぽけなデュピュイ王国に嫁ぐことになってしまいましたけれど」
私はアザール公爵のお顔も知りません。
前のときデュピュイ王国のお飾りの王妃としてお会いしたこともあるのですけれど、伝説の龍人族を先祖に持つというアザール公爵家の当主である彼は自分では抑えきれないほど魔力が強いとのことで、いつも魔力を抑制する仮面をつけていらっしゃったのです。
あの少しくぐもった声は、仮面がなかったらどんな風に聞こえたのでしょうか。
私の言葉に怒りを見せた参列者達の姿を確認して、私は話を続けます。
実際は側妃一派の悪意だけではなく、私を想う伯父様の優しさと私自身の恋心でこの国に嫁ぐことを決めたのですが、今となっては愚考だったとしか思えません。
でもアザール公爵はきっと、私が断るとわかった上で求婚してきたのでしょう。
「どうしてアザール公爵が祖国で冷遇王女と蔑まれている私に求婚して来たのだとお思いになります?」
私の髪飾りが年代物だと気づいたからといって、ロドルフ陛下が私との過去を思い出してくださったわけではありませんし、謝られたとしても髪飾りが元に戻ったりはしません。
私は陛下を王妃の寝室から追い出して、控えの間の侍女達も無視してひとりで眠りました。
どうせ侍女もヴィダル侯爵の寄子貴族の娘達なのです。
デスティネ様には忠義を尽くしても、私の役には立ってくれません。
ロドルフ陛下の希望とドゥモン王国の側妃一派の悪意で、私には祖国から連れてきた使用人達はいません。伯父様は最後まで反対してくださいましたが、どうしても同行を許されませんでした。
この王宮にいるのは敵ばかりです。ですが一晩寝て、私の気持ちに変化がありました。
悪魔にこの身を捧げるという約束を破ることは出来ません。
それ以前に大精霊様方から罰を受けるかもしれません。
けれどラブレー大公である伯父様の憂いを取り除き、私にとっては敵でも味方でもないデュピュイ王国の民を救うことは出来るかもしれません。
複雑そうな顔で隣に立っている陛下には許可を取っています。
お飾りの王妃の発言を許してくださったのは、自分が砕いた髪飾りがラブレー大公家で長い刻を経た大切なものだったということを理解してくださったからでしょう。
初恋云々は、もうどうでも良いことです。
邪魔されたくなかったので侍女達は控えの間に閉じ込めたままです。
最初から私を嘲るつもりで集まったヴィダル侯爵一派の顔を見回して、私は口を開きました。
デスティネ様を囲む方々は気づかぬ体でお喋りを続けていらっしゃいます。
「初めまして、ヴィダル侯爵一派の皆様。私はドゥモン王国から嫁いで来た王女レアです。ラブレー大公である伯父が私の持参金としてつけてくれた領地さえ手に入れば、私のことなど殺しても良いのだとお思いなのだと思いますが、デュピュイ王国を滅ぼしたくなければ私を殺さないでくださいね」
どう反応して良いのかわからないでいる参列者達に、私は微笑みました。
隣にいる陛下も戸惑っているようです。
陛下には自分の口から挨拶をしたいということ以外はお伝えしていません。
「実は私、東の帝国のアザール公爵からも求婚されておりましたの。もちろん愛などございませんし、正当な王女である私や母の実家のラブレー大公家に力を持たせたくない側妃一派によってこのちっぽけなデュピュイ王国に嫁ぐことになってしまいましたけれど」
私はアザール公爵のお顔も知りません。
前のときデュピュイ王国のお飾りの王妃としてお会いしたこともあるのですけれど、伝説の龍人族を先祖に持つというアザール公爵家の当主である彼は自分では抑えきれないほど魔力が強いとのことで、いつも魔力を抑制する仮面をつけていらっしゃったのです。
あの少しくぐもった声は、仮面がなかったらどんな風に聞こえたのでしょうか。
私の言葉に怒りを見せた参列者達の姿を確認して、私は話を続けます。
実際は側妃一派の悪意だけではなく、私を想う伯父様の優しさと私自身の恋心でこの国に嫁ぐことを決めたのですが、今となっては愚考だったとしか思えません。
でもアザール公爵はきっと、私が断るとわかった上で求婚してきたのでしょう。
「どうしてアザール公爵が祖国で冷遇王女と蔑まれている私に求婚して来たのだとお思いになります?」
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