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5.ふれあい
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「ごはんを食べてくる」。エリカはそう言い残してベッドの上で眠ってしまった。
デーモンは悪魔であり食事と睡眠を必要としない、しかしながら、睡眠が食事に結びつかないことは理解していた。
そのため、「ごはんを食べる」と言ってベッドで寝転がり眠り始めたエリカに、彼女はひどく戸惑ったものであった。
しかしながら、ベッドの上で眠るエリカの愛らしい姿を見て、彼女はそんなことどうでもよく思えてしまっていた。再び起きたときに聞けばよいだけのことだと。
彼女はベッド脇に置いたラブリーなチェアに座って、ぐっすりと眠るエリカをずっと隣で見守っていた。
彼女がエリカのお腹におもむろに手をのせると、エリカのお腹はゆっくりと上下して、呼吸していることがわかった。
彼女は椅子から腰を上げて、エリカの胸に耳を寄せる。すると、ドクンドクンと一定のリズムを刻んでいる心臓の音が聴こえてきた。胸から耳を離し、エリカの細い腕を軽く握ると、トクントクンと、心臓より控えめな血管の律動を感じた。
どうやら生きているようだ。眠った人間を見たことがない彼女は、エリカが死んでしまってはいないだろうかと確認したのだ。
眠っているエリカはまるで抜け殻のようで、彼女はそこに魂の所在を感じることができず、不安になってしまっていた。
だから、エリカの寝ている間、彼女は度々そのような行動を取っていた。
エリカは大の字に足を広げて無防備な姿で眠っている。腕はバンザイをするように投げ出され、頭の横で軽く握られた両手は、今にも花弁を広げそうなネモフィラの蕾のようであった。
彼女は、そんなエリカの手に触れようと手を伸ばした。エリカの手は彼女の手の半分ほどの大きさしかない。
彼女がぷにぷにとしたエリカの手のひらの感触を確かめていると、エリカの指がゆっくりと閉じて、彼女の人差し指と中指が握り込まれた。
温かかった。二本の指が握られているだけであるはずなのに、彼女は握られた二本の指から全身に熱が巡るのを感じた。
彼女はエリカの顔に自分の顔を近づけていく。
ぷっくりと赤みを帯びた頬、暖かい春のそよ風のような睫毛。
少しだけ開いた小さな口からは、スヤスヤと安らかな寝息が聞こえてきた。
その時、エリカの瞼がぱっと開いた。
「「うわっ!」」
エリカが目を覚ましたのだ。
二人は同時に驚きの声を上げて飛び上がった。
「びっくりした~、心臓が止まるかと思ったわよ」
エリカはベッドの上で後ずさりをして、胸に手を当て驚いた表情をしている。
「すまない、ちゃんと息をしているのか気になって……」
彼女も自身の胸を手で抑えて、バクバクと大きく脈打つ心臓の音を感じていた。
「なによそれ、心配しなくても元気いっぱいよ! まだ若いんだから! それに、ごはんも食べてきたもの!」
エリカはえっへんと両手を腰に当てて答えた。
「その……つかぬことを聞くが、人間は眠って食事を摂るのか?」
彼女はエリカの起きぬけに、疑問に思っていたことを聞いてみることにした。
「そんなわけないじゃない」
エリカは「そんなことも知らないの?」と続けて呆れた顔をした。
「私は眠ったことがないんだ。悪魔は食事も睡眠も必要としないからな」
「ふーん、眠らなくても明日は来るの?」
「来ないのか?」
「さあ? わからないから聞いてるの」
お互いに疑問符を投げかけた二人の間に沈黙が流れる。
暫しの沈黙の後、口を開いて語りだしたエリカの話によると、エリカはいまだに夜と朝の境を経験したことがないとのことらしい。エリカにとっての明日とは、時計が0時を指した時ではなく、夜が明けて朝が来たときのことであった。つまり、エリカは物心ついてから今の今まで、空が暗いうちに眠り、夜が明けて太陽が上ってからしか目を覚ましたことがないのだ。だから、「眠らなくても明日は来るのか?」それはロマンチストな哲学でもなんでもなく、エリカの純粋な疑問でしかなかった。
「……それが本当なのだとしたら、私には一度も明日が訪れていないことになる」
「そうね」
「でも、明日が訪れているお前と明日が訪れていない私が、今同じ時間を過ごしているのはおかしくないか?」
「難しいことを言わないでちょうだい。そもそもあなたはゲームの人なんだから、明日なんて来てなくても不思議じゃないわ」
エリカの発言に彼女は首を傾げる。
「ゲーム……?」
「ああ……ごめんなさい」
エリカはまずいことを言ったような顔をして口を手で抑えた。そして、「なんでもないのよ、気にしないで」と手を振って話をはぐらかせる。
「私も明日がほしい……」
彼女は神妙な面持ちをしてそんなことを独りごちる。
「あらそう、眠ればいいじゃない」
エリカはそれにあっけらかんとして答えた。
「眠り方がわからない」
「目を閉じればいいのよ」
エリカにそう言われた彼女は、試しに目を閉じてみることにした。そして、数秒も経たないうちに目を開いた。
「眠れない……」
「わたしと話してるときに眠らないでちょうだい」
「はい、ごめんなさい」
エリカに怒られた彼女は小気味よい返事とともに謝罪した。
デーモンは悪魔であり食事と睡眠を必要としない、しかしながら、睡眠が食事に結びつかないことは理解していた。
そのため、「ごはんを食べる」と言ってベッドで寝転がり眠り始めたエリカに、彼女はひどく戸惑ったものであった。
しかしながら、ベッドの上で眠るエリカの愛らしい姿を見て、彼女はそんなことどうでもよく思えてしまっていた。再び起きたときに聞けばよいだけのことだと。
彼女はベッド脇に置いたラブリーなチェアに座って、ぐっすりと眠るエリカをずっと隣で見守っていた。
彼女がエリカのお腹におもむろに手をのせると、エリカのお腹はゆっくりと上下して、呼吸していることがわかった。
彼女は椅子から腰を上げて、エリカの胸に耳を寄せる。すると、ドクンドクンと一定のリズムを刻んでいる心臓の音が聴こえてきた。胸から耳を離し、エリカの細い腕を軽く握ると、トクントクンと、心臓より控えめな血管の律動を感じた。
どうやら生きているようだ。眠った人間を見たことがない彼女は、エリカが死んでしまってはいないだろうかと確認したのだ。
眠っているエリカはまるで抜け殻のようで、彼女はそこに魂の所在を感じることができず、不安になってしまっていた。
だから、エリカの寝ている間、彼女は度々そのような行動を取っていた。
エリカは大の字に足を広げて無防備な姿で眠っている。腕はバンザイをするように投げ出され、頭の横で軽く握られた両手は、今にも花弁を広げそうなネモフィラの蕾のようであった。
彼女は、そんなエリカの手に触れようと手を伸ばした。エリカの手は彼女の手の半分ほどの大きさしかない。
彼女がぷにぷにとしたエリカの手のひらの感触を確かめていると、エリカの指がゆっくりと閉じて、彼女の人差し指と中指が握り込まれた。
温かかった。二本の指が握られているだけであるはずなのに、彼女は握られた二本の指から全身に熱が巡るのを感じた。
彼女はエリカの顔に自分の顔を近づけていく。
ぷっくりと赤みを帯びた頬、暖かい春のそよ風のような睫毛。
少しだけ開いた小さな口からは、スヤスヤと安らかな寝息が聞こえてきた。
その時、エリカの瞼がぱっと開いた。
「「うわっ!」」
エリカが目を覚ましたのだ。
二人は同時に驚きの声を上げて飛び上がった。
「びっくりした~、心臓が止まるかと思ったわよ」
エリカはベッドの上で後ずさりをして、胸に手を当て驚いた表情をしている。
「すまない、ちゃんと息をしているのか気になって……」
彼女も自身の胸を手で抑えて、バクバクと大きく脈打つ心臓の音を感じていた。
「なによそれ、心配しなくても元気いっぱいよ! まだ若いんだから! それに、ごはんも食べてきたもの!」
エリカはえっへんと両手を腰に当てて答えた。
「その……つかぬことを聞くが、人間は眠って食事を摂るのか?」
彼女はエリカの起きぬけに、疑問に思っていたことを聞いてみることにした。
「そんなわけないじゃない」
エリカは「そんなことも知らないの?」と続けて呆れた顔をした。
「私は眠ったことがないんだ。悪魔は食事も睡眠も必要としないからな」
「ふーん、眠らなくても明日は来るの?」
「来ないのか?」
「さあ? わからないから聞いてるの」
お互いに疑問符を投げかけた二人の間に沈黙が流れる。
暫しの沈黙の後、口を開いて語りだしたエリカの話によると、エリカはいまだに夜と朝の境を経験したことがないとのことらしい。エリカにとっての明日とは、時計が0時を指した時ではなく、夜が明けて朝が来たときのことであった。つまり、エリカは物心ついてから今の今まで、空が暗いうちに眠り、夜が明けて太陽が上ってからしか目を覚ましたことがないのだ。だから、「眠らなくても明日は来るのか?」それはロマンチストな哲学でもなんでもなく、エリカの純粋な疑問でしかなかった。
「……それが本当なのだとしたら、私には一度も明日が訪れていないことになる」
「そうね」
「でも、明日が訪れているお前と明日が訪れていない私が、今同じ時間を過ごしているのはおかしくないか?」
「難しいことを言わないでちょうだい。そもそもあなたはゲームの人なんだから、明日なんて来てなくても不思議じゃないわ」
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「ゲーム……?」
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エリカはまずいことを言ったような顔をして口を手で抑えた。そして、「なんでもないのよ、気にしないで」と手を振って話をはぐらかせる。
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彼女は神妙な面持ちをしてそんなことを独りごちる。
「あらそう、眠ればいいじゃない」
エリカはそれにあっけらかんとして答えた。
「眠り方がわからない」
「目を閉じればいいのよ」
エリカにそう言われた彼女は、試しに目を閉じてみることにした。そして、数秒も経たないうちに目を開いた。
「眠れない……」
「わたしと話してるときに眠らないでちょうだい」
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