15 / 140
魔物討伐隊 立入制限区域レベル6にて
男娼とよばれる仕事
しおりを挟む
すぐにはじまった、治療士業務説明ミーティングでは、基本的な治療士の業務と、魔物討伐部隊特有の業務の説明を、現場で働く治療士の先輩が自分の体験を踏まえ説明してくれるというものだった。
治療士という職業は、色んな原因が絡み合い、魔物討伐部隊の前線に配属される魔術騎士や魔術士の一部から『男娼』と蔑まれて呼ばれることがある。
しかし、一般的に、治療士は、人の不調を感知し、症状を抑えるため身体に直接治療魔術を施し、癒すのが仕事だ。
一方、魔術士は、治療分野だけではなく、生活や移動のための魔術、魔物の攻撃のための魔術などを研究し開発したり、薬を精製したり、魔法陣を編み出したりと、仕事の範囲は多岐に上る。魔術士は何かを精製したり開発する、謂わば研究者のような役目を担っている。
そのため、魔術士になる試験は項目数も多く、難易度は治療士の10倍以上とも言われている。
ちなみに魔術騎士は魔術士試験に加えて、身体能力・戦闘能力が問われ、合格するのがさらに難しくなっている。
このことが、治療士が侮られる原因でもあったのだが、男娼と言われるのには別の理由があった。
「ここまでで、何か質問はありますか?」
魔物討伐部隊における基本的な治療士の説明をしてくれた、先輩治療士は、新人治療士3人に問いかけた。
すぐに、コニー・ユーストマが手をあげる。
「魔力の交換を行うことはありますか?」
治療士は、人体に直接働きかける魔術として、魔力の交換を行うことがある。
患者に自分の魔力を送り、その者の持っている防衛本能を増幅させたり、潜在能力を引き出すことができる。
相手の症状をよく知っていた方が、念を送りやすく、効率的に症状を軽減・緩和させることが可能となる。
その最も効率の良い方法が、体液の交換、所謂キスやその他の性的接触・性行為であった。
町中にある治療院では、もちろんそんなことをすることはなく、通常の治療魔術を行う。
性的接触・性行為による魔術の交換が行われるのは、魔物討伐部隊の前線のみである。
魔物の討伐には、魔力の増幅や攻撃を受けた場合の治療など、市井の治療院で通常行われている治療魔術よりも多くの魔力が必要とされるからだ。
病魔ウイルス立入制限区域内の魔物討伐には、体力・魔力の数値が多い、男性の魔術騎士が配置される。
その為、妊娠の可能性がある女性の治療士は討伐部隊前線に派遣されることはなく、男性の治療士が派遣される。
スキルの高くない治療士の場合、高度な治療術を行使する代わりに、安易に性行為をして魔術騎士や魔術士の治療をしてしまうことが横行していた。
その為魔物討伐隊の前線では、治療士はいつしか『男娼』と侮蔑的に称されることになってしまったのである。
「我々の配属されている魔物討伐統合部隊は、国の精鋭が指揮する部隊でもあります。そんなところで風紀が乱れるような魔力の交換は許されないだろうし、不測の緊急の事態はおそらく無いと思いますよ」
説明役の先輩治療士がそう答えると、コニーは少し残念そうに、なるほど…といいながら、答えてくれた先輩治療士にお礼を言った。
ノエルが数日前、瀕死のランドルフを魔力の交換(キス)によって助けたことは、この先輩治療士にも伝わっていないようだった。
ノエルも質問するために、手をあげた。
「成熟した聖樹が見つかった場合、治療士の現場への帯同は許可されますか?」
質問を受けた先輩治療士は、まさかと言うふうに
「成熟した聖樹が見つかるケースはレアですし、A級クラス以上の魔物が複数出現する可能性があります。そんな現場に治療士が帯同した事例は聞いたことがありません」
と、答えた。
ノエルは、それ以上質問するのをやめた。次に手をあげたのは、エミン・グスタフだった。
「治療士が討伐の現場に帯同した場合、特別手当がでると聞きました。本当でしょうか?」
「はい。C級クラス以下の魔物の討伐の際には治療士が控えることもあるので、その場合は特別手当が支給されます。希望した者の中から、討伐部隊の責任者によって任命されます」
説明を聞いた。エミンは安心した様子で、先輩治療士にお礼を言った。
ほどなくしてミーティングは終了した。先輩治療士が退出したあと、コニーは、ノエルとエミンに話しかけた。
「邪魔されたくないから、先に言っておくけど、僕はリッツェン殿下に見初められるために、今回の討伐部隊に参加したんだ。たとえ、男娼とよばれても側妃になれるならなんだってやるつもり」
「私も、家庭の事情から現場に帯同させてもらうことを目指しているから、ユーストマ君のことを邪魔する気も否定する気もないよ」
エミンがそう答えると、コニーは、ノエルの方をみた。
「…リンデジャックは?どうなの?」
「僕は…」
ノエルが何て言ったらいいのか悩んでいた時、先程のミーティングに参加していた人とは別の先輩治療士が顔を出した。
「ちょっと、そこの新人さん達!すぐに、一番大きな救護室に来てくれる?魔術騎士達が、聖樹の葉を採取して戻ってきたところだから、手を貸してほしいんだけど」
治療士という職業は、色んな原因が絡み合い、魔物討伐部隊の前線に配属される魔術騎士や魔術士の一部から『男娼』と蔑まれて呼ばれることがある。
しかし、一般的に、治療士は、人の不調を感知し、症状を抑えるため身体に直接治療魔術を施し、癒すのが仕事だ。
一方、魔術士は、治療分野だけではなく、生活や移動のための魔術、魔物の攻撃のための魔術などを研究し開発したり、薬を精製したり、魔法陣を編み出したりと、仕事の範囲は多岐に上る。魔術士は何かを精製したり開発する、謂わば研究者のような役目を担っている。
そのため、魔術士になる試験は項目数も多く、難易度は治療士の10倍以上とも言われている。
ちなみに魔術騎士は魔術士試験に加えて、身体能力・戦闘能力が問われ、合格するのがさらに難しくなっている。
このことが、治療士が侮られる原因でもあったのだが、男娼と言われるのには別の理由があった。
「ここまでで、何か質問はありますか?」
魔物討伐部隊における基本的な治療士の説明をしてくれた、先輩治療士は、新人治療士3人に問いかけた。
すぐに、コニー・ユーストマが手をあげる。
「魔力の交換を行うことはありますか?」
治療士は、人体に直接働きかける魔術として、魔力の交換を行うことがある。
患者に自分の魔力を送り、その者の持っている防衛本能を増幅させたり、潜在能力を引き出すことができる。
相手の症状をよく知っていた方が、念を送りやすく、効率的に症状を軽減・緩和させることが可能となる。
その最も効率の良い方法が、体液の交換、所謂キスやその他の性的接触・性行為であった。
町中にある治療院では、もちろんそんなことをすることはなく、通常の治療魔術を行う。
性的接触・性行為による魔術の交換が行われるのは、魔物討伐部隊の前線のみである。
魔物の討伐には、魔力の増幅や攻撃を受けた場合の治療など、市井の治療院で通常行われている治療魔術よりも多くの魔力が必要とされるからだ。
病魔ウイルス立入制限区域内の魔物討伐には、体力・魔力の数値が多い、男性の魔術騎士が配置される。
その為、妊娠の可能性がある女性の治療士は討伐部隊前線に派遣されることはなく、男性の治療士が派遣される。
スキルの高くない治療士の場合、高度な治療術を行使する代わりに、安易に性行為をして魔術騎士や魔術士の治療をしてしまうことが横行していた。
その為魔物討伐隊の前線では、治療士はいつしか『男娼』と侮蔑的に称されることになってしまったのである。
「我々の配属されている魔物討伐統合部隊は、国の精鋭が指揮する部隊でもあります。そんなところで風紀が乱れるような魔力の交換は許されないだろうし、不測の緊急の事態はおそらく無いと思いますよ」
説明役の先輩治療士がそう答えると、コニーは少し残念そうに、なるほど…といいながら、答えてくれた先輩治療士にお礼を言った。
ノエルが数日前、瀕死のランドルフを魔力の交換(キス)によって助けたことは、この先輩治療士にも伝わっていないようだった。
ノエルも質問するために、手をあげた。
「成熟した聖樹が見つかった場合、治療士の現場への帯同は許可されますか?」
質問を受けた先輩治療士は、まさかと言うふうに
「成熟した聖樹が見つかるケースはレアですし、A級クラス以上の魔物が複数出現する可能性があります。そんな現場に治療士が帯同した事例は聞いたことがありません」
と、答えた。
ノエルは、それ以上質問するのをやめた。次に手をあげたのは、エミン・グスタフだった。
「治療士が討伐の現場に帯同した場合、特別手当がでると聞きました。本当でしょうか?」
「はい。C級クラス以下の魔物の討伐の際には治療士が控えることもあるので、その場合は特別手当が支給されます。希望した者の中から、討伐部隊の責任者によって任命されます」
説明を聞いた。エミンは安心した様子で、先輩治療士にお礼を言った。
ほどなくしてミーティングは終了した。先輩治療士が退出したあと、コニーは、ノエルとエミンに話しかけた。
「邪魔されたくないから、先に言っておくけど、僕はリッツェン殿下に見初められるために、今回の討伐部隊に参加したんだ。たとえ、男娼とよばれても側妃になれるならなんだってやるつもり」
「私も、家庭の事情から現場に帯同させてもらうことを目指しているから、ユーストマ君のことを邪魔する気も否定する気もないよ」
エミンがそう答えると、コニーは、ノエルの方をみた。
「…リンデジャックは?どうなの?」
「僕は…」
ノエルが何て言ったらいいのか悩んでいた時、先程のミーティングに参加していた人とは別の先輩治療士が顔を出した。
「ちょっと、そこの新人さん達!すぐに、一番大きな救護室に来てくれる?魔術騎士達が、聖樹の葉を採取して戻ってきたところだから、手を貸してほしいんだけど」
160
あなたにおすすめの小説
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)
九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。
半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。
そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。
これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。
注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。
*ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)
たとえば、俺が幸せになってもいいのなら
夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語―――
父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。
弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。
助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
騎士×妖精
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる