深窓の異世界転移者2世(聖女の息子)は未だ愛を知らない

仮名山ミムミム

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魔物討伐隊 立入制限区域レベル6にて

男娼とよばれる仕事

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すぐにはじまった、治療士業務説明ミーティングでは、基本的な治療士の業務と、魔物討伐部隊特有の業務の説明を、現場で働く治療士の先輩が自分の体験を踏まえ説明してくれるというものだった。


治療士という職業は、色んな原因が絡み合い、魔物討伐部隊の前線に配属される魔術騎士や魔術士の一部から『男娼』と蔑まれて呼ばれることがある。


しかし、一般的に、治療士は、人の不調を感知し、症状を抑えるため身体に直接治療魔術を施し、癒すのが仕事だ。


一方、魔術士は、治療分野だけではなく、生活や移動のための魔術、魔物の攻撃のための魔術などを研究し開発したり、薬を精製したり、魔法陣を編み出したりと、仕事の範囲は多岐に上る。魔術士は何かを精製したり開発する、謂わば研究者のような役目を担っている。


そのため、魔術士になる試験は項目数も多く、難易度は治療士の10倍以上とも言われている。


ちなみに魔術騎士は魔術士試験に加えて、身体能力・戦闘能力が問われ、合格するのがさらに難しくなっている。


このことが、治療士が侮られる原因でもあったのだが、男娼と言われるのには別の理由があった。



「ここまでで、何か質問はありますか?」



魔物討伐部隊における基本的な治療士の説明をしてくれた、先輩治療士は、新人治療士3人に問いかけた。


すぐに、コニー・ユーストマが手をあげる。


「魔力の交換を行うことはありますか?」


治療士は、人体に直接働きかける魔術として、魔力の交換を行うことがある。


患者に自分の魔力を送り、その者の持っている防衛本能を増幅させたり、潜在能力を引き出すことができる。

相手の症状をよく知っていた方が、念を送りやすく、効率的に症状を軽減・緩和させることが可能となる。


その最も効率の良い方法が、体液の交換、所謂キスやその他の性的接触・性行為であった。


町中にある治療院では、もちろんそんなことをすることはなく、通常の治療魔術を行う。


性的接触・性行為による魔術の交換が行われるのは、魔物討伐部隊の前線のみである。


魔物の討伐には、魔力の増幅や攻撃を受けた場合の治療など、市井の治療院で通常行われている治療魔術よりも多くの魔力が必要とされるからだ。

病魔ウイルス立入制限区域内の魔物討伐には、体力・魔力の数値が多い、男性の魔術騎士が配置される。

その為、妊娠の可能性がある女性の治療士は討伐部隊前線に派遣されることはなく、男性の治療士が派遣される。

スキルの高くない治療士の場合、高度な治療術を行使する代わりに、安易に性行為をして魔術騎士や魔術士の治療をしてしまうことが横行していた。

その為魔物討伐隊の前線では、治療士はいつしか『男娼』と侮蔑的に称されることになってしまったのである。



「我々の配属されている魔物討伐統合部隊は、国の精鋭が指揮する部隊でもあります。そんなところで風紀が乱れるような魔力の交換は許されないだろうし、不測の緊急の事態はおそらく無いと思いますよ」


説明役の先輩治療士がそう答えると、コニーは少し残念そうに、なるほど…といいながら、答えてくれた先輩治療士にお礼を言った。


ノエルが数日前、瀕死のランドルフを魔力の交換(キス)によって助けたことは、この先輩治療士にも伝わっていないようだった。


ノエルも質問するために、手をあげた。


「成熟した聖樹が見つかった場合、治療士の現場への帯同は許可されますか?」


質問を受けた先輩治療士は、まさかと言うふうに


「成熟した聖樹が見つかるケースはレアですし、A級クラス以上の魔物が複数出現する可能性があります。そんな現場に治療士が帯同した事例は聞いたことがありません」


と、答えた。


ノエルは、それ以上質問するのをやめた。次に手をあげたのは、エミン・グスタフだった。


「治療士が討伐の現場に帯同した場合、特別手当がでると聞きました。本当でしょうか?」


「はい。C級クラス以下の魔物の討伐の際には治療士が控えることもあるので、その場合は特別手当が支給されます。希望した者の中から、討伐部隊の責任者によって任命されます」


説明を聞いた。エミンは安心した様子で、先輩治療士にお礼を言った。


ほどなくしてミーティングは終了した。先輩治療士が退出したあと、コニーは、ノエルとエミンに話しかけた。


「邪魔されたくないから、先に言っておくけど、僕はリッツェン殿下に見初められるために、今回の討伐部隊に参加したんだ。たとえ、男娼とよばれても側妃になれるならなんだってやるつもり」


「私も、家庭の事情から現場に帯同させてもらうことを目指しているから、ユーストマ君のことを邪魔する気も否定する気もないよ」


エミンがそう答えると、コニーは、ノエルの方をみた。


「…リンデジャックは?どうなの?」


「僕は…」


ノエルが何て言ったらいいのか悩んでいた時、先程のミーティングに参加していた人とは別の先輩治療士が顔を出した。


「ちょっと、そこの新人さん達!すぐに、一番大きな救護室に来てくれる?魔術騎士達が、聖樹の葉を採取して戻ってきたところだから、手を貸してほしいんだけど」
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