深窓の異世界転移者2世(聖女の息子)は未だ愛を知らない

仮名山ミムミム

文字の大きさ
95 / 140
魔物討伐隊 立入制限区域レベル6にて

ゆけむり 5

しおりを挟む

ノエルの上半身には、リッツェンの付けたキスマークがまだたくさん残っていた。ノエルの白い肌は、お湯の熱でほんのりピンクに色付きはじめ、その上に濃い赤色のキスマークが花弁の如く浮かび上がっていた。



ノエルは恥ずかしさと居た堪れなさから、顔までも赤く染める。






「アイツ…牽制のつもりかよ…」





メイは呆れたようにそう言うとノエルの両腕を解放して、身体1つ分のスペースを空けた場所に再び身体を湯に沈めた。





「悪かったな…リッツの側にお前を配置させたのは俺の責任でもある。アイツは、王族のくせに前線に出て結構無茶すんだよ。だから治療士のお前が側にいて、回復させてやることは、割と重要だったりすんだよな…」





ノエルは、お湯が顎の先に付くくらいまで、露天風呂に沈み込んだ。





「……自分の役目はわかってるつもりです。リッツェン隊長の近くから、全力で現場の指揮にあたる姿を拝見していたので、メイ隊長が仰ってることも、よくわかります。だから謝る必要は無いというか…その…無理矢理にというわけではなかった…ですし…」




リッツェンがノエルにつけたキスマークを見て、満足そうにする姿を見て、見えないところならつけてもいいと許したのはノエルだった。




「お前…そんな態度でどうすんだよ…少しずつ囲い込まれてんだぞ。リッツはあんな王子面してるが、腹ん中は誰よりも黒い。一度欲しいと思ったら、どんな事をしても取りにいくタイプだ。しかも、国内で最強と謂われるランドも、お前を離すつもりはないときてる…」





ノエルは、メイの言うことを一生懸命理解しようと、頭の中でメイの言葉を噛み砕いた。しかし、肝心なところが何を言いたいのかわからない。







「その、離すつもりがないとか、取りにいくとか、僕の討伐部隊での人事配置のことでしょうか…?」






「バカ、ちげぇよ!リッツとランドの嫁になるっつー話だろ。今の流れでなんで人事の話だと思うんだよ」





メイは、ノエルの見当違いな思考に呆れ返り「深窓育ちにも程があるだろ…」と額に手を当てる。






「――よっ嫁!?それって、結婚ってことですか!?」





ノエルにとっては、思っても見なかったことであった。


タースルという小さい島で、世の中からほぼ遮断された生活を送り、年頃になった頃、王立魔術師団学校に入学し、3年間勉強や研究一筋だったノエルは初恋もまだであった。恋人だって居たこともないのに、結婚なんて考えたこともなかった。





「当たり前だろ、あの2人と付き合うんだぞ。第3王子と未来の師団長だ。遊びでは終われねーぞ」





パラビナ王国では、複数婚や同性婚は一般的に行なわれている。特に貴族であれば家同士の繋がりも重視されるので、そういった計略の上で婚姻を結ぶこともある。


複数婚や同性婚が当たり前に認められ、恋愛に自由であるように見える一方で、結婚した後は不貞は絶対に許されないという風潮があった。



その為、愛する人と結婚し末永く結ばれるということは人々の理想であり、貴族の間でも愛ある結婚は誰しもが憧れるものであった。





「遊びとか、そんなことは思ってないです!リッツェン隊長とランドルフ隊長のことは、もちろん尊敬してます。けっ、結婚なんて…僕はまだまだお二人には敵わないし…お相手として相応しくないと思います」





メイは、リッツェンとランドルフとの結婚などあり得ないといったノエルの様子をじっと観察する。






「…あの2人についてのお前の考えはわかった。だったら、遠慮はしねえからな」







「えっ…?」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

たとえば、俺が幸せになってもいいのなら

夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語――― 父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。 弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。 助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? 騎士×妖精

とある美醜逆転世界の王子様

狼蝶
BL
とある美醜逆転世界には一風変わった王子がいた。容姿が悪くとも誰でも可愛がる様子にB専だという認識を持たれていた彼だが、実際のところは――??

処理中です...