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魔物討伐隊 立入制限区域レベル6にて
ゆけむり 6
しおりを挟むノエルがメイの言ったセリフについて考えようとした時、二の腕を掴まれ、メイの近くに引き寄せられた。あっという間も無く、メイのルビー色の瞳がノエルの目の前にあった。
「本当、キレーな瞳だな…」
メイはノエルの頬を両手で包み込む。そして、薄茶色に緑が入り込んだヘーゼルナッツの瞳を覗き込むと、ノエルにキスをした。
「――んっ」
すぐに、メイの舌がノエルの口内に侵入する。そして、メイの魔力がノエルに流し込まれた。
ノエルの身体全体に、温泉のお湯とは違う温かい力が広がっていく。少しずつ絶妙な力加減で、ノエルの身体を労わるように、治療魔術がかけられる。
「――はぁっ…んっ…」
メイの舌は反射的に逃げようとするノエルの舌を絡め取る。そして、優しく舌全体を絞って舐める。
甘い味がノエルの口全体に広がるとともに、メイの魔魔力が身体中をじんわりと流れていく。頭がぽーっとして微酔状態になっていくノエルは、このままではメイの魔力を吸い取る一方になってしまうと、自分からも小さい舌を動かし魔力を流す。
温泉の白い湯けむりが立ち昇る中、ちゅぱちゅぱとお互いの口を吸う音が響く。
「――んっ、んっ、……」
しばらく『魔力の交換』を行った後、メイは顔を見られたくないのか、ノエルの小さな身体を、ぎゅっと抱きしめた。
温泉のお湯であたためられた肌が直に触れ合う。ノエルは、心臓がドキドキと大きく波打つのを感じた。
メイの治療魔術は完璧だった。ノエルは自分の身体が芯から回復したことを感じとる。
メイの身体からも、紐状になった黒い点がすっかりと消えて無くなっている。メイの魔術スキルには到底敵わないと感じ、ノエルはメイの存在の大きさを認識する。
「――メイ隊長?」
ノエルは、メイにずっと身体を抱きしめられたまま、ドギマギしながら呼びかけた。
メイは、ゆっくり抱擁を解くと、ノエルの顔を覗き込む。
「――真っ赤な顔だな。…だからなんで、ちょっと悔しそうなんだよ」
メイはお腹を押さえながら、くつくつと笑い始める。ノエルは、両手で自分の頬を包み込んだ。
「……悔しいといいますか、メイ隊長の魔術は完璧過ぎて…」
「そうかよ。この特別機動部隊の派遣が終わったら…覚悟しておけよ。次は今と違うセリフを言わすからな」
メイの色を孕んだルビーの瞳に見つめられ、ノエルはさらに胸の鼓動が早まるのを感じた。
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