深窓の異世界転移者2世(聖女の息子)は未だ愛を知らない

仮名山ミムミム

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魔物討伐隊 立入制限区域レベル6にて

お喋りな精霊たち 1

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***





そんなやり取りをした後、ノエルとメイは温泉からあがり、風の魔術で身体を乾かし着替えて洞窟を出た。





洞窟にあった露天風呂の雰囲気やデザインはノエルの実家にある温泉とは大分異なっていた。



その為、アーサーが作り出したのかと問われても「判断できない」というのがノエルの答えだった。結局、誰の手によって作られたのか謎は解けないままだ。






「このままオンセンをここに残しておくと、誰の魔術なのかと変に勘ぐる噂が立つかもしれねーから、一旦隠しておく」





メイはそう言うと、洞窟の入り口を外側から塞ぎ、中に侵入できないようにさせた後、自身の魔術痕を消す魔術も二重に施す。これは使える者が限られる、かなりスキルの高い魔術であった。




そして、メイの運転するローバーで、2人はテントの張ってある場所まで戻ってきた。



メイは、ランドルフとリッツェンから連絡が入っていたことがわかると、ノエルの頭にポンと手を置き「湯冷めするなよ」と声をかけ、詳しい報告するため自分のテントへと戻っていった。





ノエルは、イスタがちゃんと特効薬を飲んでくれたのかどうか気になったので、イスタの居るテントに向かうことにする。




ノエルがテントに向かって歩き出した時、耳元でクスクスと小さく笑う声が聞こえた。ノエルは立ち止まって辺りを見回す。ノエル以外にテントの外に出ている者はいなかった。




ノエルはまさかと思いながら、バッと勢いをつけて後ろを振り返る。そこには白くて丸い光がぼおっと2つ空中に浮かんでいた。






「その琥珀石のピンから、カレンの魔力を感じるな。君は誰?」





「ふふっ、変なの。髪の毛の色なんて変えちゃって…本当はカレンちゃんと同じ黒い髪なのにねぇ」




2つの光は、精霊だった。ノエルは驚いて声をあげそうになるのを既のところで抑える。



精霊は気紛れだ。煩いなどと思われたら、すぐに消えていなくなってしまうかもしれない。ノエルが慎重に精霊の様子を伺っていると、光はますますノエルに近付いてきた。



ノエルは思い切って精霊に声をかけた。






「…僕は、楠木カレンの息子で、ノエルと言います。髪の毛は、産まれたばかりの頃、母と育ての父とで今の色に変えられた…そうです」






「えっ、君、カレンの子なの?僕知ってる…でも、君、こーんなに小さくなかった?」




ノエルには、カレンのように精霊をはっきりと認識できる力は無く、丸い光のように見えるだけだ。





なので精霊の一人が「こーんなに」と言ってるのがどれくらいの大きさを表しているのかわからない。





「ばかねぇ…ニンゲンは、樹と一緒で成長するのよ」




「そうだった。ニンゲンは成長するんだった。でも、あのは、それが嫌なんだろ」






ノエルは精霊の一人が発した言葉にびくっと身体を震わせる。そして、質問するチャンスかもしれないと、1番聞きたかったことを尋ねた。






「そっ、その…って誰のことなんですか?母に呪いをかけたのも、魔女なんですよね…?」






「えっ、君、カレンの子なんだよね?カレンの呪いが誰のしわざか知らないんだ?」





そう言いながら、お喋りな精霊はくるくるとノエルの周りを回っている。





もう一人の精霊は、ノエルにそっと近付くと耳元で囁いた。




「王都のお城の中に、王様といるのが魔女よ。精霊の力を使って成長しないで居るのが好きなの。そして、黒い髪の毛をしてる人は大嫌いなんだってぇ…だからカレンちゃんに呪いをかけたのかもね」




ノエルはぶるっと身震いをすると、無意識に自分の髪の毛を触った。黒い髪の毛…つまり聖女だったからカレンは呪いを受けたというのか…そんなことができる人は限られている。



国王と一緒にいるということは…ノエルの頭の中にずっとあった、ある1つの答えがより鮮明に浮かび上がってくる。






「その、呪いをかけたのは…もう一人の『聖女』なんですね?」
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