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魔物討伐隊 立入制限区域レベル6にて
お喋りな精霊たち 2
しおりを挟む「セイジョって、君たちはあの魔女をそう呼んでるんだっけ?」
精霊にとっては、聖女という存在にはどうやら興味が無いらしくいまいちピンとこないのか、質問したのに逆に聞き返されてしまった。
「カレンちゃんもセイジョって呼ばれたね。魔女も、異世界から転移してきた黒髪のニンゲンよ」
もう一人の精霊がそう親切に教えてくれる。
パラビナ王国には、50年から100年に一度、ニホンという国から黒髪・黒目の異世界人が突然転移してくるといわれている。その転移者はパラビナ国民にはない異能を持っていることから、聖女もしくは聖人と呼ばれ、国に大切に保護されてきた。
ノエルの母、楠木カレンは20歳の時にニホンで事故に遭い死んだと思ったら、パラビナ国に転移していた。
最初は戸惑っていたものの、パラビナ国民が病魔ストレスに悩まされている現状を知り、自ら討伐部隊に参加するなどして、聖女として国民から非常に尊敬されていた。
その上、カレンは精霊と交流できるという異能を持っていた為、パラビナ国内の精霊達からも慕われていたのだった。
楠木カレンが転移してきた1年後、突然また異世界人がパラビナ王国に転移してきた。名前を『蔓木せいら』と言い、17歳の時に、カレンと同じくニホンからやってきた。
歴史上、短い期間をおいて別の異世界人が転移した前例が無かった為、聖女が2人も現れ縁起が良いとパラビナの国民は歓喜に沸いた。
しかし、さらにその1年後、魔物討伐中の不幸な事故により聖女カレンは命を落とした。
残されたもう一人の聖女せいらは希少な存在としてより厳重に保護され、王都エンペラルにある王城で国王を支える聖女として、国の為に祈りを捧げる務めを果たしている…というのが、パラビナの国民の間で語り継がれてきた話であった。
「母は、討伐中の事故で死んだと見せかけて僕を産みました。そして、僕の髪の色まで変えて、育ての両親に託し…僕の存在を隠したんです。その時に既に呪いを受けていたと聞いてます。どうして呪いなんか…」
ノエルは小さい時に精霊に会ってから、なぜ母は呪いを受けたのだろう、そして『魔女』とは誰なのかと、密かに心中で考えるようになっていた。
なんとなく、ノエルの育ての両親、アーサー・リンデジャックとハンナ・リンデジャックに聞くのは憚れた。
カレンが亡くなった時の、あの重苦しい雰囲気が再現してしまうのが、怖かったのかもしれない。それに、カレンはアーサーとハンナに核心に触れた部分については、話していないのではないかと直感でそう感じていた。
「魔女は、君らのように魔術は使えないのさ。精霊から力を受け取って、好き勝手をしてる。呪いもその悪さの1つだね」
「私達精霊の力を悪用しているの。だから『魔女』って呼んで、私達みんな近付かないのよ。もし、近付いちゃったらね…」
ノエルはごくっと唾を飲み込み、精霊の言葉を待った。しかし、白く丸く光る精霊は、急にお喋りをやめた。
「――あっ、起きちゃった!うるさくなりそうだから、私達は移動しようかしら。あなたも早く逃げた方がいいかも」
そう言って、1つの光がぱっとノエルの目の前から消えた。
「あっ、アレは君の仕業でしょ?魔力が同じだもの!あの、白い大きな光の鳥!面白いから遊んじゃったよ~僕、ああいうの好きだよ。また作ったら見にきてあげてもいいよ。じゃあね」
「えっ!?待ってっ!…白い鳥ってまさか…」
ノエルの問いかけも虚しく、お喋りな2人の精霊は何かに気付いた様子で慌てて消えてしまったのだった…。
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ノエルの母カレンのスピンオフの物語を投稿しました↓↓
『聖女と呼ばれた医大生は転移した異世界で精霊たちに慕われる』
ゆっくり更新予定ですが、よければそちらもチェックしてみてください^^♪
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