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友達以上
「それで、話を戻すがお前の知っている話ではアオイは隣国へ渡ってしまったのだな?」
「そう。話の舞台が隣国に移った後の展開はもう知らないの。力になれなくてごめんなさい。それで……あおいさ……アオイがどこに逃げたのか足取りは掴めたの?」
フィリップはふっと笑うと首を横に振った。
「この雨だ。無闇に追いかけ回すのは良くないだろう。ディー以外の誰かが犠牲にならないとも言いきれないしな。」
「そうね。」
雨足が再び強まったのか、叩きつけるような雨音が静かな部屋に響き渡る。
先程から黙り込んでしまった凛花を、フィリップはしばらく見つめていた。
「リンカ、もうひとつ聞きたい事があるんだが。」
凛花にはソファーに座って腕組みをした姿勢のフィリップの目がいつにも増してキラキラと輝いているように見えた。
「何?なんか嫌な予感しかしないんだけど?」
「ダニエルとの婚約を破棄して私と婚約しないか?」
「いや、それは無理!」
「即答か…」
「そんな試すような事言われても引っかかりませんからね!」
「試してなんかいない。至って真面目に求婚している。」
凛花はフィリップを再び睨むと少しだけ声を低くした。
「だったらなおのこと問題ありね。フィルのその言い方では到底真面目に言ってるとは思えないから。」
「ダニエルはどうやってお前にプロポーズした?」
「それは……」
「もっとロマンチックで熱烈だったか?」
──プロポーズ…?…何度か婚約しようとは言われた気もするけど。何時だったっけ?
「出会ったその日……?」
「そうだ。翌朝私が婚約届を父に渡した。」
ついこの前の話なのにすっかり記憶から遠くなってしまった。どうして出会ったばかりの相手と婚約をするという話になったんだったか…。
「そっか、ダニエルは第一騎士団に入りたくないって…。それにカテリーナ殿下との婚約を断るため──。」
「何だ、ダニエルはそんな事を言っていたのか?お前たちもしかして偽装婚約だったのか?」
「違うの、ダニエルはそんな事一切言わなかったけど、私が勝手にそう思い込んでただけで。それで私、約束したの。代わりに私に情報をくれるなら婚約するって。」
「情報?」
「私、この国の事を何も知らないから、最低限のマナーと一般常識を知りたくて。じゃないとこの世界で生きていけないから…。」
「……リンカ、お前はダニエルの事をそんな風にしか考えていなかったのか?」
「……」
「それではアオイと何も変わらないのではないか?」
「それは…」
「自分がこの世界で生きて行くために婚約者という立場でダニエルをうまく利用しようとでも?」
「最初はそうだった。だってダニエル以外頼る所なかったんだもん。」
フィリップは厳しい顔つきになるとソファーから身を乗り出した。
「今は頼る所は他にもある。それならば、婚約者は私でも問題ないな?」
「何でそうなるの?問題あるでしょ?」
「リンカに与える情報ならダニエルより私の方が多く持っている。」
「だとしても……ほら、フィルは?そうよ、フィルにはメリットなんて何もないでしょ?マナーどころか知識もない女が王太子の婚約者だなんて笑われるだけだわ。」
テーブルを挟んで睨み合った形のフィリップと凛花はどちらも目をそらそうとしない。
「私が初めて欲しいと望んだ相手と婚約できるんだ。それがメリットだ。」
「……」
──何だろう…どっかでいつだったか聞いたようなセリフ…。
「それ!アオイに1周目で言ってたセリフだ!何で今私にそんな事を?」
「リンカ……」
フィリップはそういったまま頭を抱えると、茶色い髪を思い切り引っ張りカツラを剥ぎ取った。零れるように金色の髪がその下から現れる。
「あ、カツラだったんだ……。」
「お前って奴は全く…。」
「……」
「とぼけた振りをして…全て分かった上で言っているんだろう?私と対等に口論できる上に頭の回転も早い。物怖じもしないし妃としてお前以上に相応しい相手はいない。」
「……」
「いい加減素直になったらどうだ?」
「?」
フィリップが金色の髪をかきあげて膝についた肘に顎を乗せながらつまらなそうに呟いた。
「リンカはダニエルの事が好きなんだろう?」
「……」
「言えよ、素直に。」
「…多分……好き。」
「だろうな。ったく…」
──ガラ悪!見た目はこんなキラキラ王子様なのに。
「まぁダニエルと私の見分けがつく時点でもう答えは予想できていたが。見た目が変わらない相手に負けるというのは想像以上に傷付くな…。」
拗ねた子供のようなその様子に凛花が笑いを堪えていると、フィリップも困った様な顔で笑いだした。
「ごめんね。でも、この事はダニエルには内緒にしといて。」
「どの事?」
「私、まだダニエルに好きって言ったことないから。」
「……それは…。分かった、言わない。というか、どういう場面でこんな話を私からダニエルにするんだ?」
「分かんないけど。仲良いんでしょ?」
「……いい。と思う。」
「恋愛の話はとかはしないの?」
「しないな。今までお互いにそういう相手がいたことが無かったから…。」
「えっ…と……それって……」
「心配するな。八つ当たりで適当な罪を作ってダニエルに不当な処分を受けさせたりはしない。」
「いや、私まだ何も言ってないから…」
「そう。話の舞台が隣国に移った後の展開はもう知らないの。力になれなくてごめんなさい。それで……あおいさ……アオイがどこに逃げたのか足取りは掴めたの?」
フィリップはふっと笑うと首を横に振った。
「この雨だ。無闇に追いかけ回すのは良くないだろう。ディー以外の誰かが犠牲にならないとも言いきれないしな。」
「そうね。」
雨足が再び強まったのか、叩きつけるような雨音が静かな部屋に響き渡る。
先程から黙り込んでしまった凛花を、フィリップはしばらく見つめていた。
「リンカ、もうひとつ聞きたい事があるんだが。」
凛花にはソファーに座って腕組みをした姿勢のフィリップの目がいつにも増してキラキラと輝いているように見えた。
「何?なんか嫌な予感しかしないんだけど?」
「ダニエルとの婚約を破棄して私と婚約しないか?」
「いや、それは無理!」
「即答か…」
「そんな試すような事言われても引っかかりませんからね!」
「試してなんかいない。至って真面目に求婚している。」
凛花はフィリップを再び睨むと少しだけ声を低くした。
「だったらなおのこと問題ありね。フィルのその言い方では到底真面目に言ってるとは思えないから。」
「ダニエルはどうやってお前にプロポーズした?」
「それは……」
「もっとロマンチックで熱烈だったか?」
──プロポーズ…?…何度か婚約しようとは言われた気もするけど。何時だったっけ?
「出会ったその日……?」
「そうだ。翌朝私が婚約届を父に渡した。」
ついこの前の話なのにすっかり記憶から遠くなってしまった。どうして出会ったばかりの相手と婚約をするという話になったんだったか…。
「そっか、ダニエルは第一騎士団に入りたくないって…。それにカテリーナ殿下との婚約を断るため──。」
「何だ、ダニエルはそんな事を言っていたのか?お前たちもしかして偽装婚約だったのか?」
「違うの、ダニエルはそんな事一切言わなかったけど、私が勝手にそう思い込んでただけで。それで私、約束したの。代わりに私に情報をくれるなら婚約するって。」
「情報?」
「私、この国の事を何も知らないから、最低限のマナーと一般常識を知りたくて。じゃないとこの世界で生きていけないから…。」
「……リンカ、お前はダニエルの事をそんな風にしか考えていなかったのか?」
「……」
「それではアオイと何も変わらないのではないか?」
「それは…」
「自分がこの世界で生きて行くために婚約者という立場でダニエルをうまく利用しようとでも?」
「最初はそうだった。だってダニエル以外頼る所なかったんだもん。」
フィリップは厳しい顔つきになるとソファーから身を乗り出した。
「今は頼る所は他にもある。それならば、婚約者は私でも問題ないな?」
「何でそうなるの?問題あるでしょ?」
「リンカに与える情報ならダニエルより私の方が多く持っている。」
「だとしても……ほら、フィルは?そうよ、フィルにはメリットなんて何もないでしょ?マナーどころか知識もない女が王太子の婚約者だなんて笑われるだけだわ。」
テーブルを挟んで睨み合った形のフィリップと凛花はどちらも目をそらそうとしない。
「私が初めて欲しいと望んだ相手と婚約できるんだ。それがメリットだ。」
「……」
──何だろう…どっかでいつだったか聞いたようなセリフ…。
「それ!アオイに1周目で言ってたセリフだ!何で今私にそんな事を?」
「リンカ……」
フィリップはそういったまま頭を抱えると、茶色い髪を思い切り引っ張りカツラを剥ぎ取った。零れるように金色の髪がその下から現れる。
「あ、カツラだったんだ……。」
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「……」
「いい加減素直になったらどうだ?」
「?」
フィリップが金色の髪をかきあげて膝についた肘に顎を乗せながらつまらなそうに呟いた。
「リンカはダニエルの事が好きなんだろう?」
「……」
「言えよ、素直に。」
「…多分……好き。」
「だろうな。ったく…」
──ガラ悪!見た目はこんなキラキラ王子様なのに。
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拗ねた子供のようなその様子に凛花が笑いを堪えていると、フィリップも困った様な顔で笑いだした。
「ごめんね。でも、この事はダニエルには内緒にしといて。」
「どの事?」
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「……それは…。分かった、言わない。というか、どういう場面でこんな話を私からダニエルにするんだ?」
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