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ゼリー全部
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「こっちでもいいと思うけどさぁ。なんか、あれじゃない?翡翠色って自分の目の色を連想するというか…」
「夏らしい涼しげな色でいいと思いますがね?」
「最近俺ちょっと考え方がおかしいのかな?気にしすぎ?」
料理長は苦笑して答えようとしない…。その手には濃い紫と涼し気な緑…二色の葡萄の房がある。
この二色の葡萄を使ってゼリーを作ってもらう予定なのだが、食べるのはいつもの三人だ。一度気にし始めるとこの手の事はキリがない。いっそのことジークの瞳のような蒼い葡萄でも見つからないだろうか?青がだめなら金色の葡萄?あぁ駄目だ、黄色ですら見たことがないもんな…。それに今目の前にないと意味が無いのだ、今日のおやつなんだから!
「絞って濃いジュースにしてから固めますか?」
う~ん、それも贅沢で捨て難いな。
「じゃあ、まぁ全部試してもらえる?」
「…分かりました。」
料理長は少しだけ呆れた様な顔をしたが了承してくれた。
「ごめんね、我儘言って。期待してるよ!」
父親くらいの歳であろう料理長の背中を親しげにポンポンと叩くと、レジナルドは去って行く。料理長はその背中をどこか嬉しそうに見送った。
「それでレジー、どうしてこうなったんだ?説明してもらおうか?」
「いや、えっと…」
どうやらジークフリートはお冠である…。今朝料理長に頼んでおいた本日のおやつがお気に召さないらしい。
「…俺、頑張って食べるからさ。」
「当然だ…。」
全部試して欲しいなんて頼んだのが間違いだったか…。机の上には二色の葡萄が様々に組み合わされたゼリーが所狭しと並んでいる。一つ一つの大きさは小さいとはいえ、これがなかなかのボリュームなのだ。
気合を入れて一番近くにあったゼリーに手を伸ばす。濃い紫をしたゼリーに緑の葡萄の果肉が入っている。
「しかし、リア様がいないならそうと早めに教えて欲しかったな…。」
「言っていなかったか?今日は姉上について教会の慈善事業へ行っている…少しずつ仕事を覚えていくことにしたらしい。」
「あぁ、お妃教育ってやつ?」
葡萄独特の甘い香りと喉越しでゼリーならいくらでも食べられそうな気がする。次は透明なゼリーに緑の果肉の入ったゼリーを食べてみよう…。無心でゼリーを味わっているとジークフリートがこちらを見ているのが分かった。
「…何?」
「説明をまだ聞いていない。」
「あ…これ?」
机の上のゼリーを指さすとジークフリートが頷いた。その手にはレジナルドと同じく透明なゼリーを持っている。
「美味しい葡萄を今日のデザートにするって決めてから料理長と話し合ってたら、もういろいろと考えすぎちゃってさ。結局全部試そうってことになったんだよ。後はまぁ…料理長が張り切ってくれたんだろう?」
「張り切りすぎだろう?これは何人分なんだ?」
「…三人分…です。」
「いい加減私を数に入れなくてもいいんだぞ?」
「そういう訳にもいかないだろ?俺の茶菓子じゃないからこそ王宮の料理長に頼めるんだからさ!」
「…まぁそうだが。」
3個目のゼリーをどれにしようかと目をウロウロさせる。あれにしよう…。
「ところで、この葡萄のゼリーは何が違うんだ?」
「葡萄が2種類あるだろ?だからその組み合わせが違うんだよ。あとは果肉が入ってるかジュースかとか?」
「…」
「言いたいことは分かる。見た目だけで味はそんなに違わないって言いたいんだろ?」
「それもあるが…」
「?」
「お前のことだから瞳の色が…とかくだらないことで悩んで一種類に決められなかったんだろう?」
「…なんで分かるんだよ?」
「馬鹿だなぁ…お前は。」
ジークフリートが優しく微笑むものだから、妙にドキドキしてしまうではないか!
「いいか、レジー…。」
ジークフリートがじっとこちらを見つめて勿体ぶるように間をとる。…なんだ、なんなんだ?
「贈り物の中でも食べ物は無くなるものだ。色など気にする者はそうそういない。色より味や好みの問題だろ?」
ジークフリートはやっと1つ目のゼリーを食べ終えようとしている。彼なりに頑張って協力してくれているようだ。
「…そう…なの?」
手元のゼリーを見つめる。紫と緑の葡萄が透明なゼリーの真ん中で仲良く並んでいる。その間を割るようにスプーンを差し入れる…と──。
「ん?何だこれ?」
「葡萄にしては黄色いな…」
先程は葡萄に隠れて見えなかったのだろうか?スプーンにすくったそれは葡萄と同じ大きさと形をした黄色い物。
「分かった!これジークだ!青い葡萄はないから金にしたんだよ、料理長!」
ぱくっと口に入れると葡萄よりもしっかりとした果肉を感じる──黄桃の形を丸く整えたものだろうか?
「…」
「ほら、料理長だってやっぱり気にしてるじゃん?俺、未来の王宮料理長になれるかもしれない!」
「夏らしい涼しげな色でいいと思いますがね?」
「最近俺ちょっと考え方がおかしいのかな?気にしすぎ?」
料理長は苦笑して答えようとしない…。その手には濃い紫と涼し気な緑…二色の葡萄の房がある。
この二色の葡萄を使ってゼリーを作ってもらう予定なのだが、食べるのはいつもの三人だ。一度気にし始めるとこの手の事はキリがない。いっそのことジークの瞳のような蒼い葡萄でも見つからないだろうか?青がだめなら金色の葡萄?あぁ駄目だ、黄色ですら見たことがないもんな…。それに今目の前にないと意味が無いのだ、今日のおやつなんだから!
「絞って濃いジュースにしてから固めますか?」
う~ん、それも贅沢で捨て難いな。
「じゃあ、まぁ全部試してもらえる?」
「…分かりました。」
料理長は少しだけ呆れた様な顔をしたが了承してくれた。
「ごめんね、我儘言って。期待してるよ!」
父親くらいの歳であろう料理長の背中を親しげにポンポンと叩くと、レジナルドは去って行く。料理長はその背中をどこか嬉しそうに見送った。
「それでレジー、どうしてこうなったんだ?説明してもらおうか?」
「いや、えっと…」
どうやらジークフリートはお冠である…。今朝料理長に頼んでおいた本日のおやつがお気に召さないらしい。
「…俺、頑張って食べるからさ。」
「当然だ…。」
全部試して欲しいなんて頼んだのが間違いだったか…。机の上には二色の葡萄が様々に組み合わされたゼリーが所狭しと並んでいる。一つ一つの大きさは小さいとはいえ、これがなかなかのボリュームなのだ。
気合を入れて一番近くにあったゼリーに手を伸ばす。濃い紫をしたゼリーに緑の葡萄の果肉が入っている。
「しかし、リア様がいないならそうと早めに教えて欲しかったな…。」
「言っていなかったか?今日は姉上について教会の慈善事業へ行っている…少しずつ仕事を覚えていくことにしたらしい。」
「あぁ、お妃教育ってやつ?」
葡萄独特の甘い香りと喉越しでゼリーならいくらでも食べられそうな気がする。次は透明なゼリーに緑の果肉の入ったゼリーを食べてみよう…。無心でゼリーを味わっているとジークフリートがこちらを見ているのが分かった。
「…何?」
「説明をまだ聞いていない。」
「あ…これ?」
机の上のゼリーを指さすとジークフリートが頷いた。その手にはレジナルドと同じく透明なゼリーを持っている。
「美味しい葡萄を今日のデザートにするって決めてから料理長と話し合ってたら、もういろいろと考えすぎちゃってさ。結局全部試そうってことになったんだよ。後はまぁ…料理長が張り切ってくれたんだろう?」
「張り切りすぎだろう?これは何人分なんだ?」
「…三人分…です。」
「いい加減私を数に入れなくてもいいんだぞ?」
「そういう訳にもいかないだろ?俺の茶菓子じゃないからこそ王宮の料理長に頼めるんだからさ!」
「…まぁそうだが。」
3個目のゼリーをどれにしようかと目をウロウロさせる。あれにしよう…。
「ところで、この葡萄のゼリーは何が違うんだ?」
「葡萄が2種類あるだろ?だからその組み合わせが違うんだよ。あとは果肉が入ってるかジュースかとか?」
「…」
「言いたいことは分かる。見た目だけで味はそんなに違わないって言いたいんだろ?」
「それもあるが…」
「?」
「お前のことだから瞳の色が…とかくだらないことで悩んで一種類に決められなかったんだろう?」
「…なんで分かるんだよ?」
「馬鹿だなぁ…お前は。」
ジークフリートが優しく微笑むものだから、妙にドキドキしてしまうではないか!
「いいか、レジー…。」
ジークフリートがじっとこちらを見つめて勿体ぶるように間をとる。…なんだ、なんなんだ?
「贈り物の中でも食べ物は無くなるものだ。色など気にする者はそうそういない。色より味や好みの問題だろ?」
ジークフリートはやっと1つ目のゼリーを食べ終えようとしている。彼なりに頑張って協力してくれているようだ。
「…そう…なの?」
手元のゼリーを見つめる。紫と緑の葡萄が透明なゼリーの真ん中で仲良く並んでいる。その間を割るようにスプーンを差し入れる…と──。
「ん?何だこれ?」
「葡萄にしては黄色いな…」
先程は葡萄に隠れて見えなかったのだろうか?スプーンにすくったそれは葡萄と同じ大きさと形をした黄色い物。
「分かった!これジークだ!青い葡萄はないから金にしたんだよ、料理長!」
ぱくっと口に入れると葡萄よりもしっかりとした果肉を感じる──黄桃の形を丸く整えたものだろうか?
「…」
「ほら、料理長だってやっぱり気にしてるじゃん?俺、未来の王宮料理長になれるかもしれない!」
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