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告白
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2人が訓練所に着いた頃、第二騎士団の訓練は既に始まっていた。訓練所の脇にある見学者用の席の最前列に案内されたセシリアは、騎士たちから目が離せないでいた。
大勢の屈強な騎士が一心不乱に剣を振る様など、生まれて初めて目にするのだ。汗をかき髪を振り乱したその様子を遠目から見ると、誰もが頼もしく思えてしまう。
その中に父親の姿を探していると、背後から声をかけられた。
「セシリア――?」
やはり、父はあの中にはいなかった。
「お父様…。お久しぶりです。」
セシリアは椅子から立ち上がり、振り向くと同時に父の顔を見るよりも早く深く礼をした。
「――セシリア、顔を…顔を見せてはくれないのか?」
何かをぐっと堪えるような侯爵の声に、やっとセシリアは少し顔をあげた。
「あぁ、やはり…」
侯爵はセシリアに速足で歩み寄ると、そのままの勢いでその手を取った。
「――セシリア、私が今までお前を避けるような事をしていたせいで邸ではとんでもない事になっていたと。ジークフリート殿下が全て教えてくださった…。」
「――殿下が。」
「あぁ、本当になんと言って詫びたらいいのか…。すまなかった、セシリア…。お前は…本当にカーラとそっくりになって…。」
「お母様と――?」
侯爵はセシリアを席に座らせると、自らもその隣に腰掛け、視線を騎士たちに向けた。
「――分かっていたんだ。小さい頃からお前は母親とよく似ていた。髪の色も仕草も…。そして大きくなるにつれその声までもがカーラの生き写しのようで…。私は、私は耐えられなかったんだ…。」
侯爵の声はいつしか震え、その目は潤んでいるようだった。騎士達の鍛錬の声がどこか遠くに聞こえた。
侯爵がセシリアの母親であるカーラを失い、どれだけの年月が経ったことか――それなのに、未だその傷は癒えていないと言うのだろうか?
「――お父様は私を見る度に思い出しておられたのですね、辛い事を…。」
侯爵は遠くを見つめたまま、陶然と微笑んだ。
「それは…違う。私が思い出していたのは辛い事では無い。」
自らの手で守ることの出来なかったただ一人の愛する女性。
「私は成長する毎にますますカーラに似てくるお前を見る度、カーラと共に過ごしたあの幸せで穏やかな日々を思い出していた。…私の中にあるこの『愛しい』という思いはそのままで…。」
「――愛しいという思い…」
「そうだ。カーラを失っても私の中の思いは消えないし、それを何処にもぶつけることが出来なかった。新しく妻を迎えても…。だから、カーラに似たお前を見るのが怖かった。」
侯爵は両手を膝の上でぐっと組むと、硬い表情で言葉を続けた。
「私は…だから逃げたんだよ、お前の元から…。すまなかった、本当に…。」
侯爵は何が怖かったのだろうか?愛する者をまた失う事?娘を狂おしいほどに愛する事?そのどちらともとれる言い方にセシリアは背筋が寒くなるのを感じた。
「…ジークフリート殿下は気付いておられた。私にもう逃げるなと、そう仰った。全く、あの方は…」
侯爵は呆れたようにそう言いつつも、どこかほっとしたような嬉しそうな顔をしていた。
一体殿下と侯爵の間で何が話し合われたのか…。
「…セシリア」
「はい」
侯爵は今まで話せなかったことをやっと話せたお陰か何処かスッキリとした様子でセシリアに向き直った。
「お前のことは暫く殿下にお任せしてある。お前は家の事など何も考えなくていいからな?」
「――お父様?」
「まぁ、あれだ。まだお前には苦労を掛けるだろうが…頑張れ。」
大勢の屈強な騎士が一心不乱に剣を振る様など、生まれて初めて目にするのだ。汗をかき髪を振り乱したその様子を遠目から見ると、誰もが頼もしく思えてしまう。
その中に父親の姿を探していると、背後から声をかけられた。
「セシリア――?」
やはり、父はあの中にはいなかった。
「お父様…。お久しぶりです。」
セシリアは椅子から立ち上がり、振り向くと同時に父の顔を見るよりも早く深く礼をした。
「――セシリア、顔を…顔を見せてはくれないのか?」
何かをぐっと堪えるような侯爵の声に、やっとセシリアは少し顔をあげた。
「あぁ、やはり…」
侯爵はセシリアに速足で歩み寄ると、そのままの勢いでその手を取った。
「――セシリア、私が今までお前を避けるような事をしていたせいで邸ではとんでもない事になっていたと。ジークフリート殿下が全て教えてくださった…。」
「――殿下が。」
「あぁ、本当になんと言って詫びたらいいのか…。すまなかった、セシリア…。お前は…本当にカーラとそっくりになって…。」
「お母様と――?」
侯爵はセシリアを席に座らせると、自らもその隣に腰掛け、視線を騎士たちに向けた。
「――分かっていたんだ。小さい頃からお前は母親とよく似ていた。髪の色も仕草も…。そして大きくなるにつれその声までもがカーラの生き写しのようで…。私は、私は耐えられなかったんだ…。」
侯爵の声はいつしか震え、その目は潤んでいるようだった。騎士達の鍛錬の声がどこか遠くに聞こえた。
侯爵がセシリアの母親であるカーラを失い、どれだけの年月が経ったことか――それなのに、未だその傷は癒えていないと言うのだろうか?
「――お父様は私を見る度に思い出しておられたのですね、辛い事を…。」
侯爵は遠くを見つめたまま、陶然と微笑んだ。
「それは…違う。私が思い出していたのは辛い事では無い。」
自らの手で守ることの出来なかったただ一人の愛する女性。
「私は成長する毎にますますカーラに似てくるお前を見る度、カーラと共に過ごしたあの幸せで穏やかな日々を思い出していた。…私の中にあるこの『愛しい』という思いはそのままで…。」
「――愛しいという思い…」
「そうだ。カーラを失っても私の中の思いは消えないし、それを何処にもぶつけることが出来なかった。新しく妻を迎えても…。だから、カーラに似たお前を見るのが怖かった。」
侯爵は両手を膝の上でぐっと組むと、硬い表情で言葉を続けた。
「私は…だから逃げたんだよ、お前の元から…。すまなかった、本当に…。」
侯爵は何が怖かったのだろうか?愛する者をまた失う事?娘を狂おしいほどに愛する事?そのどちらともとれる言い方にセシリアは背筋が寒くなるのを感じた。
「…ジークフリート殿下は気付いておられた。私にもう逃げるなと、そう仰った。全く、あの方は…」
侯爵は呆れたようにそう言いつつも、どこかほっとしたような嬉しそうな顔をしていた。
一体殿下と侯爵の間で何が話し合われたのか…。
「…セシリア」
「はい」
侯爵は今まで話せなかったことをやっと話せたお陰か何処かスッキリとした様子でセシリアに向き直った。
「お前のことは暫く殿下にお任せしてある。お前は家の事など何も考えなくていいからな?」
「――お父様?」
「まぁ、あれだ。まだお前には苦労を掛けるだろうが…頑張れ。」
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