王太子殿下は甘い物を召し上がりません!

ゆみ

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待ち伏せ

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 ──やはり、いらっしゃった。
 国王の執務室から自室へ戻る途中、廊下の窓から庭園にジークフリートが腰掛けているのが見えた。いつの間にか雨は止んだようだ。
 セシリアはジークフリートが自分を待っていたような気がして、迷わずそちらへ向かっていった。
「殿下…」
 少し離れた場所から様子を伺うようにそっと呼びかけると、ジークフリートがゆっくりと視線を上げてその目にセシリアを捕らえた。
「『殿下』じゃない、ジークだよ。」
 そう言って立ち上がると、セシリアの方にその長い手を差し出す。
「待っていた…こっちにおいで。」
 吸い寄せられるようにその手を重ねると、セシリアはあっという間にジークフリートの胸に抱かれていた。
「ジーク様…」
 ──あたたかい。
 ジークフリートはギュッとその腕に力を入れると、セシリアの頭に頬を寄せた。
「…待っていた。」
「…はい。」
「…待っていた。」
「…」
 ジークフリートの手は震えていた。もしかして泣いているのではないか──セシリアがそう思った時、あたたかい体が離れ、代わりに冷たい手が頬を撫でた。
「何故 泣いている?」
 泣いているのは自分の方だった。頬を伝う涙をたどったその手でそのまま顎を持ち上げ、心配そうに蒼い目がこちらを見つめる。
 ──暗闇で月に煌めいて綺麗…。
 こらえきれずに、また熱いものが込み上げてくるのがわかった。
「…何故なのでしょう、私にもよく分かりません。」
「なんだ、それは…」
 少し困った様に笑うとジークフリートはゆっくりと優しく口付けた。
「父上の部屋でフェルナンドと話していたんだろう?」
「はい…」
「昼にもここで話していた…」
 少し拗ねたように、しかし低く抑えた声でそう言うとジークフリートはセシリアの髪をするりと撫で、今度は荒々しく唇を重ねてくる。王宮中から見られている気がして、セシリアが胸を叩いて抗議をすると、角度を変え更に唇を割って舌が入ってくる。
 長い長いキスからようやく解放された時、セシリアは肩で息をせずには居られなかった。思わず潤んだ目でジークフリートを睨みつけると、ジークフリートは心底嬉しそうに笑って見せた。
「リア、ダメだ、また蕩けそうだよ。我慢出来なくなる──」
「ジーク様!」
「…元気 でた?」
「はい?」
 ジークフリートの手が名残惜しそうにセシリアの涙の跡をたどり、唇をそっと撫でる。まだ笑ったままの蒼い目が、少し寂しそうに輝いた。
「…何処にも…行くなよ?」
「…」
「リアは私のモノなのだろう?だから、何処にも行くな、いいな?」
「わ、私はモノではありません!」
「──もちろん分かっている。」
 ジークフリートはフェルナンドとのことを国王から何処まで知らされているのだろうか?疑問に思ったものの、結局は聞くことができなかった。
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