王太子殿下は甘い物を召し上がりません!

ゆみ

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楽しみもそれぞれ

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「随分と楽しそうだな?」
「父上…。団長もお揃いで。」
 ジークフリートの執務室に国王とスコール団長が入ってくるとセシリアはその顔からすっと笑みを消した。
「あぁ、リアはスコール公爵と会ったことはなかったか?」
「陛下とご一緒のところは何度かお見かけしたことがありますが…。もしやレジー様の?」
「スコール・バトラーと申します。第一騎士団の団長とそこにいるレジナルドの父親を務めております。」
「なんで同列なんだか…。」
「どちらも制御するのが難しいのだろう?」
 レジナルドがジークフリートを静かに睨みつけていると国王はセシリアに用事があったようで構わずそちらで話をはじめた。
 団長はその傍に控えているが、目はどこかほっとした様子で息子の方を向いている。
「遠慮はいらんぞ?レジナルドだけで不安なようならスコールをつけてもいいのだ。」
「いえ、本当に。私は王宮から見るだけで充分ですので。」
 どうやら二人はセシリアが本当に花祭りに行かないのか確認をしに来たようだ。
「そうであったか。では、ジークの言っておったように塔の鍵と氷室の使用許可は与えよう。それでよかったか?」
「はい、父上。ありがとうございます。」
「…ところで、氷は何に使う?お前たちはまだ酒は飲めんだろう?」
 国王は花祭りで自身がスコール公爵と酒を飲む際に氷を使用しているせいかそれ以外の用途がなかなか思いつかないようだ。
「レジーがアイスクリームを用意させるようです。」
「あぁなるほど。そういえば昨年もそのように申しておったか?アイスクリームか。なるほどなるほど。」
 深く頷く国王の横でスコール団長は渋い顔をしている。その顔には『また甘いものか』と書いてあるようだ。
「リア様はアイスクリームを食べたことがないそうですから、是非この機会にと思いまして。」
「それもよかろう。まぁ花祭りは若者の祭りだ、存分に楽しむがよい。」

 夏の午後の陽はなかなか沈まない。大通りで行われていた花車のパレードが終わると広場には人々が集まり始め、国旗を模した花を囲んで早くも踊りが始まろうとしていた。
 王宮の南、広場を見下ろす塔にあるバルコニーでテーブルを囲む三人の元には祭りの喧騒と軽やかな音楽が時折風に運ばれて届いた。
 こうして王宮の高い場所から王都を一望するのはセシリアにとって今回が初めてのことだった。一目見てセシリアはこの景色に圧倒された。建物の多さもさることながら祭りとはいえこれだけ多くの人々を目にすることができるとは。侯爵邸にこもっていた頃には知ることのできなかった世界が目の前に広がっている…。

「ところで、リーナ様はどうされているのですか?今朝からお姿を見かけないようなのですが。」
 ジークフリートとレジナルドはついに来たかというような顔でセシリアを見た。
「姉上は昔から…祭りに降りて行く人だからな。」
「そう、わざわざ変装して行くんだから。護衛も結構大変らしいよ?」
「変装してお祭りに行かれているのですか?それは…ついて行かなくても大丈夫なのですか?」
「…将来の伴侶を探しに行く者を止められないだろう?」
「俺たちが一緒だとかえって伴侶が逃げていくさ。」
 セシリアはもの言いたげにレジナルドを見ていたが、すぐに目を伏せた。
「姉上は信じているんだろうな…。」
「俺はそんな言い伝え信じてないし。ジークだって去年まではそう言ってたろ?」
「周りで花祭りをきっかけに婚約したなんて話は聞いたことがないからな。」
「例え出会ったとしても身分や立場があるからね、現実問題として…。」
「お二人ともとっても現実的な考え方なのですね。」
「男はみんなこんなもんだよ、女の子はいろいろ夢見て憧れるのかもしれないけどさ。」
「リーナ様はお忍びでお祭りの雰囲気だけを味わわれているのですよ、きっと。」
「まぁそれなら分らんでもないかな?」
「だがあの人の多さ、ここから見ているだけで充分だ…。」
「これからキャンドルに火が灯るともっと暑そうだよね。しかも踊り続けてるんだよ?すごい体力…。」
 手元に用意されているよく冷えたハーブティーを一口飲む。テーブルには軽めの食事が並び始めていた。祭りの夜はまだまだこれからだ。
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