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高嶺の花
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「セシリア様、ソフィアと申します。」
「ソフィア様、わざわざステーリアから来て頂きありがとうございます。」
「この度はフェルナンド殿下からヴィルヘルムへの訪問の許可を直々に賜りましたの。それにしても…」
ソフィアの目線が一度少し伏せられ、セシリアの隣に座るジークフリートを意味ありげに見上げるのが分かった。
「お噂は伺っておりましたが、眩しいほどのご寵愛ですこと。」
「どんな噂だったか気になる所だが…。フェルナンドは貴方にそんな事を話すのか?」
ジークフリートはわざとらしくセシリアの髪を一筋掬うと、そこに口付けてみせた。
「いいえ、殿下と私はいとこではありますがその様に親しい間柄ではありません…。」
「貴方程の美しさと身分があればフェルナンドの相手に相応しいと思ったのだが…。違ったのか、それは失礼。」
流石のソフィアもジークフリートに対して怒りを露わにする訳にもいかないと思ったのか、その手にギュッと力が籠められるのが分かった。
「ソフィア様は昨日の朝到着なさったのですよね?ヴィルヘルムは如何ですか?」
サッとその表情を整えるとすぐにソフィアはにこやかな笑顔を作って見せた。
「えぇ、一度王宮に挨拶に伺った際にレジナルド様には大変親切にして頂いて…。」
そう言いながらソフィアはエリックの顔をチラチラと見ている。
──策略に向いているとは言い難いな…。フェルナンドもなんで敢えてこんな娘をわざわざ…。
ソフィアのクルクルと変わる表情と意図して作られた仕草を見ていると、考えている事が手に取るように分かる。きっと、気付いていないのは本人だけなのだろう。
ジークフリートはレジナルドに目で合図をすると、セシリアの手を取って両手で包み込んだ。
「話しているところを済まない、リア、私はまだ仕事が残っていてね。そろそろ行かなければならない。」
「分かっております。」
「また夜にでもゆっくりと話そう。」
ジークフリートはセシリアの手に口付けるとソフィアに向かって優雅に礼をし、エリックを伴い部屋を出て行った。
「私以前にもジークフリート殿下をお見かけしたことがあるの…本当に同じ人なのかと疑ってしまうわ。」
ソフィアが閉じられた扉を呆然と眺めながら独り言のように呟いた。先ほどより言葉遣いがどこか砕けているのは従姉妹同士の気安さの現れだろうか?
「以前はどのように見えましたか?」
「孤高の人っていうのかしら?ほら、手の届かない高嶺の花──花の色は冷たい蒼色って所かしら?手の届かない崖の上で太陽の光を燦燦と浴びて咲いてるのよ。」
「蒼い花ですか。」
「フェルナンド殿下は真っ白な花ね、こっちはきっと日陰に咲いている高嶺の花よ?暗闇でも目を引く豪華な白い花。」
「ステーリアの方らしい言い回しですね、とっても素敵ですわ。」
「…分かってくれる?」
「えぇ。私にはなかなか出てこない言葉ですけれど、なるほどと思いました。」
ソフィアは少しの間黙ってセシリアを見ていたが、後ろに控えているレジナルドをチラッと振り返ると、セシリアに小声で囁いた。
「エリックは信用できる騎士?少しだけ貴方と話をしたいのだけれど。その…できれば二人だけで。」
「このままお話されても問題ありませんわ。私は彼を信頼しておりますから。」
レジナルドが少し照れたように頬をかくのが見えた。
「そうなの。じゃあ、その前に…。」
ソフィアは侍女を呼びつけるとセシリアに手土産を渡した。
「侯爵邸で直々に作らせた菓子よ?」
「侯爵邸で?」
「そう、レジナルド様にも先程届けておいたわ。甘いものが大好きだと仰っていたから。貴方も好きなのでしょう?」
セシリアの目をじっと見つめたままソフィアはゆっくりと目の前で包みを開いて見せた。
──トリュフチョコレート…。
レジナルドが厳しい目になっている。これは絶対に口にしてはいけないものだ。セシリアにもそれはもう嫌という程分かっていた。しかし今ソフィアはエリックにもこれを渡したと言ったのでは無かったか…?
セシリアはレジナルドに目をやると、祈るような思いで声を出した。どうか、声が震えませんように…。
「エリック、レジー様はまだジーク様とご一緒かしら?もし良かったら後で一緒に食べましょうと伝えて来て欲しいの。私なら大丈夫。ソフィア様ともう少しここで話をしているから…。」
「分かりました、では直ぐに戻って参ります。」
レジナルドは軽く頭を下げると風のように去って行った。
きっとレジナルドの事だ、気が付いてくれたに違いない。
「エリックは本当にただの騎士なの?貴方の周りは…恵まれているのね。」
ソフィアはつまらなそうにそう呟くと、チョコレートの包みを机の上に置いた。
「ソフィア様、わざわざステーリアから来て頂きありがとうございます。」
「この度はフェルナンド殿下からヴィルヘルムへの訪問の許可を直々に賜りましたの。それにしても…」
ソフィアの目線が一度少し伏せられ、セシリアの隣に座るジークフリートを意味ありげに見上げるのが分かった。
「お噂は伺っておりましたが、眩しいほどのご寵愛ですこと。」
「どんな噂だったか気になる所だが…。フェルナンドは貴方にそんな事を話すのか?」
ジークフリートはわざとらしくセシリアの髪を一筋掬うと、そこに口付けてみせた。
「いいえ、殿下と私はいとこではありますがその様に親しい間柄ではありません…。」
「貴方程の美しさと身分があればフェルナンドの相手に相応しいと思ったのだが…。違ったのか、それは失礼。」
流石のソフィアもジークフリートに対して怒りを露わにする訳にもいかないと思ったのか、その手にギュッと力が籠められるのが分かった。
「ソフィア様は昨日の朝到着なさったのですよね?ヴィルヘルムは如何ですか?」
サッとその表情を整えるとすぐにソフィアはにこやかな笑顔を作って見せた。
「えぇ、一度王宮に挨拶に伺った際にレジナルド様には大変親切にして頂いて…。」
そう言いながらソフィアはエリックの顔をチラチラと見ている。
──策略に向いているとは言い難いな…。フェルナンドもなんで敢えてこんな娘をわざわざ…。
ソフィアのクルクルと変わる表情と意図して作られた仕草を見ていると、考えている事が手に取るように分かる。きっと、気付いていないのは本人だけなのだろう。
ジークフリートはレジナルドに目で合図をすると、セシリアの手を取って両手で包み込んだ。
「話しているところを済まない、リア、私はまだ仕事が残っていてね。そろそろ行かなければならない。」
「分かっております。」
「また夜にでもゆっくりと話そう。」
ジークフリートはセシリアの手に口付けるとソフィアに向かって優雅に礼をし、エリックを伴い部屋を出て行った。
「私以前にもジークフリート殿下をお見かけしたことがあるの…本当に同じ人なのかと疑ってしまうわ。」
ソフィアが閉じられた扉を呆然と眺めながら独り言のように呟いた。先ほどより言葉遣いがどこか砕けているのは従姉妹同士の気安さの現れだろうか?
「以前はどのように見えましたか?」
「孤高の人っていうのかしら?ほら、手の届かない高嶺の花──花の色は冷たい蒼色って所かしら?手の届かない崖の上で太陽の光を燦燦と浴びて咲いてるのよ。」
「蒼い花ですか。」
「フェルナンド殿下は真っ白な花ね、こっちはきっと日陰に咲いている高嶺の花よ?暗闇でも目を引く豪華な白い花。」
「ステーリアの方らしい言い回しですね、とっても素敵ですわ。」
「…分かってくれる?」
「えぇ。私にはなかなか出てこない言葉ですけれど、なるほどと思いました。」
ソフィアは少しの間黙ってセシリアを見ていたが、後ろに控えているレジナルドをチラッと振り返ると、セシリアに小声で囁いた。
「エリックは信用できる騎士?少しだけ貴方と話をしたいのだけれど。その…できれば二人だけで。」
「このままお話されても問題ありませんわ。私は彼を信頼しておりますから。」
レジナルドが少し照れたように頬をかくのが見えた。
「そうなの。じゃあ、その前に…。」
ソフィアは侍女を呼びつけるとセシリアに手土産を渡した。
「侯爵邸で直々に作らせた菓子よ?」
「侯爵邸で?」
「そう、レジナルド様にも先程届けておいたわ。甘いものが大好きだと仰っていたから。貴方も好きなのでしょう?」
セシリアの目をじっと見つめたままソフィアはゆっくりと目の前で包みを開いて見せた。
──トリュフチョコレート…。
レジナルドが厳しい目になっている。これは絶対に口にしてはいけないものだ。セシリアにもそれはもう嫌という程分かっていた。しかし今ソフィアはエリックにもこれを渡したと言ったのでは無かったか…?
セシリアはレジナルドに目をやると、祈るような思いで声を出した。どうか、声が震えませんように…。
「エリック、レジー様はまだジーク様とご一緒かしら?もし良かったら後で一緒に食べましょうと伝えて来て欲しいの。私なら大丈夫。ソフィア様ともう少しここで話をしているから…。」
「分かりました、では直ぐに戻って参ります。」
レジナルドは軽く頭を下げると風のように去って行った。
きっとレジナルドの事だ、気が付いてくれたに違いない。
「エリックは本当にただの騎士なの?貴方の周りは…恵まれているのね。」
ソフィアはつまらなそうにそう呟くと、チョコレートの包みを机の上に置いた。
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