王太子殿下は甘い物を召し上がりません!

ゆみ

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甘いものに目がない

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「殿下、レジー殿は?」
「あ、あぁ…レジーならリアの部屋を出て直ぐに別れたが…。どうした?何があった?」
 レジナルドは周りに人が居ないことを確認した後ジークフリートのすぐ側まで寄ると、声を潜めた。
「不味い、ソフィア嬢がエリックにトリュフチョコレートを渡したと言っている。リア様にも渡していたがそっちは大丈夫だ。」
「エリックはお前と同じで甘いものに目がないんだったな?居場所に心当たりは?」
「…訓練所か?」
「…」
「何か理由をつけてリア様をジークの所に連れて来させよう。俺はこのままエリックを探した方がいいだろう?」
「そうだな、エリックの事は任せた。」
 レジナルドがエリックと初めて会話を交わしたのも早朝訓練が終わった後の訓練所だった。見たこともないような菓子を口にしていたから気になってつい声をかけたのだった。レジナルドと違ってエリックには王宮での居場所は騎士団しかないのだからきっとそこにいるはずだ。
 セシリアの事はジークフリートに任せると、レジナルドは真っ直ぐに訓練所まで急いだ。

「いない?」
「はい、特別任務に就いてからはこっちに戻っていませんが。」
 訓練所に着くなり目に付いた騎士に声を掛けてみるが誰もエリックを見た者はいない。ここに居ないというのならばエリックは一体どこに消えたと言うのだろうか?まだ任務中だから王宮から出るということも無いはずだ。
 ──待てよ?任務中に王宮から…?
「違う、昨日は侯爵邸までソフィア嬢を送り届けて行ったはず…。」
 あの時自分はジークフリートに何と言っていただろうか?

『明日の事は俺には何とも言えない』

 レジナルドは頭を抱え込みこの場でうずくまりたい気分だった。間に合うだろうか?仮にエリックが菓子を口にせずソフィアを送り届けていたとしたらまだ希望はあるかもしれない。だがあのエリックがトリュフチョコレートを目の前にして口にしないとは思えない…。
 
 ──ソフィア嬢は俺とリア様に薬を盛ってジークの前から二人同時に消そうとしたのか。それが毒だとしても媚薬だとしても…。
 大切な二人を同時に失ってしまったら、ジークフリートはどうなっていた事だろう。レジナルドはゾッとして全身鳥肌が立つのを感じた。ジークフリート個人の話ではすまない。ヴィルヘルム王国の未来に暗雲が立ち込めること間違いなしだ。

 レジナルドが気を取り直して確認に行ったところ、既にビューロー侯爵邸への馬車は出た後だった。ソフィア嬢と、ほんのり赤い顔をしたエリックを乗せて…。

 執務室には重い沈黙が落ちていた。セシリアに送られたチョコレートから媚薬が検出されたと今報告が入った所だった。ソフィアを送って行ったはずの馬車は未だ帰ってきたという報告はない。

「エリックは婚約者も居なかったのだろう?最悪の事態ではあるがそこは救いだったな…。」
「ジーク様、まだエリックがチョコレートを口にしたかどうかは…」
「リア様、そこは申し訳ないけど確実だと思うよ?それに、エリックはソフィア嬢のことを…気に入ってたのは間違いない。」
「…」
「ソフィア嬢は自分が用意させた菓子だと言っていたようだから自業自得という事か…。」
「エリックのやつ、自分の名前を名乗ったかな?ソフィア嬢もいきなり『私はレジナルドではありません』とか言われたらびっくりするよね。」
「それもそうだが、ソフィア嬢は確か15歳だ。エリックは30を超えているのだろう?16歳と思っていた相手がじつは30歳でしたとなれば…。」
 ジークフリートはそれ以上言わずにレジナルドと顔を見合わせた。セシリアの前では口にすることは出来ないが…。

──エリック、チョコレート何個食べちゃったかな…。リア様が三つであの状態だったんだから身体が大きくて体力のあるエリックなら…。いや、これ以上は考えたら駄目だ。

「レジー、このチョコレートは速やかに処分しよう。何だか見ているだけでおかしくなってしまいそうだ…。」
「了解。俺もそう思ってたとこ。」
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