王太子殿下は甘い物を召し上がりません!

ゆみ

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絶句

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「エリックが…。」
「なんと…。」

 国王の部屋を訪れた三人はソフィアの企てを全て報告したところだった。それを聞いた国王とスコールは絶句するしかなかった。
「ビューロー侯爵もこの場に呼んだ方がよろしいでしょうか?」
「スコール、それはまだ早かろう。エリックとソフィア嬢が見つからんことにはどうにも…。」
「もう少し捜索する人数を増やしますか?表沙汰になるのもどうかと人数を絞っていましたが…。」
「いや、レジナルドのその判断は正しい。今は王妃の傍にも人手が必要だ、万が一ということもあるからな…。それにソフィア嬢の方も…余り目立つのはよろしくないだろう。」
「全くエリックの奴、何処に消えたんだか…。」
 国王はジークフリートの言葉に頷くと眉間に手をあてて大きく溜息をついた。騎士団からの報告が来ていないか確認しに行ったスコールも再び話に加わる。
「王都から侯爵家の馬車が郊外に出たという報告はありません。」
「…またビューロー侯爵家か…いや、セシリア嬢を前にして言うべき事ではなかったな、申し訳ない。」
「いいえ、本当の事ですから。」
 セシリアは国王の気遣いに感謝しながらも話の輪には加わらずただひっそりとその場で佇んでいた。
「ビューロー侯爵家では確かに料理人がソフィア嬢に指示されたままチョコレートを用意したかもしれませんが…。今回の件は無関係かと。」
 セシリアをかばうジークフリートの言葉に、国王は分かっていると言うように手を挙げた。
「しかしまたトリュフチョコレートか…。俺あの時ソフィア嬢が出したのがトリュフチョコレートだったから警戒したけど、チョコレートクッキーだったら迷わず食べてた…。」
 一同は納得の表情を浮かべた。
「侯爵家のチョコレートクッキーに薬が混ぜられていたら、リアとレジーは迷わず二人で口にしていたという事か…。」
「それは…まさに悪夢だな。」
 国王とスコールのうなり声が響いた。
 ジークフリートがチラリと横を見るとセシリアが赤くなり俯いている。
「レジーはスコール団長を通じて何度かビューロー侯爵家のチョコレートクッキーが食べたいと伝えていたはずです。ひょっとして料理人はその事を知っていたから敢えてトリュフチョコレートにしたのでしょうか?」
「…俺たちが口にしないように?」
 国王は首を捻りながら何事かを考えていた。
「スコール、ビューロー侯爵家の料理人は…?」
「はい、以前王宮に勤めていた者です。妻のチョコレートの一件では私が直接事情聴取をしましたので覚えております。」
 ジークフリートはどういう事なのかと国王を無言で見つめた。
「王宮の料理人は五年ほどで入れ替わる事になっているが、その後はだいたいが貴族の屋敷に下がっていくものだ。」
「ビューロー侯爵家に今勤めている者はあの事件の時、確か王宮に勤め始めて間もなかった…おそらく一年たっていなかったかと。となるとその後少なくとも四年間は殿下やレジナルドの口にするものをここで作っていたと言うことになるでしょう。」
 ジークフリートとレジナルドは目を見合わせた。
「四年間…。」
「食事も菓子も…全てか。」
 国王が何かを思い出したかのように優しい笑顔になった。
「お前たちが一番やんちゃだった頃を知る貴重な人物という訳か。」
「まだまだ可愛いものでした、あの頃の二人は…。」
 スコールもまた何かを思い出したのか苦笑している。
「…それと今回の件とは関係ないでしょう?」
「そうとも言いきれんだろう?ひょっとしたらその料理人のお陰でジークはセシリア嬢と運命的な出会いをし、レジーは薬を口にすること無く、結果としてジークの元から離れずに済んだのかもしれん。」
「父上、それはいくら何でも考えすぎでしょう。」
「殿下、ですがその料理人は王宮では殿下とレジナルドを知り、ビューロー侯爵邸ではセシリア様がどんな扱いを受けていたのかを全て知っていた可能性があるのです。」
「侯爵邸での夫人とレイラ嬢の仕打ちもか…。それならジークの妃候補にレイラ嬢を立てるための手助けなんかしたくないと思っても不思議はないな。」
 レジナルドもその部分だけは料理人の気持ちが理解できたような気がした。
「仮にそういう考えの持ち主だったとしたら、初対面のステーリアのご令嬢に同じような指示をされたなら黙って従う気にもならんだろう。」
「侯爵邸の料理人か…。一体どのような人物なのだろうな。」
 そう言うとジークフリートはセシリアの手をそっと握り、そのまま自分の膝の上に置いた。
 セシリアは必死で侯爵家で会ったであろうその人物を思い出そうとしていたが、思い出せるのはその後ろ姿だけだった。ビューロー侯爵邸にあった自分の部屋の窓は邸の裏側に面しており、裏口から帰って行く侍女や使用人たちの後ろ姿しか見ることはなかったからだ。
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