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王妃の器
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「母上が来ているのか?」
騎士団から戻ってみるとセシリアの部屋の前には王妃の護衛とセシリアの護衛とが厳重に警戒していた。
「はい、少し前からお二人で話がしたいからと…。」
ジークフリートはレジナルドに目配せをすると騎士たちをかき分け、扉を大きく叩いた。
「リア、母上、戻りました。」
「ビューロー侯爵は相変わらず黙りです。」
「ただ一点リア様の母上の件で王妃様を恨んでいたという事は認めています。」
「16年前か…。」
「父上とスコール団長の話では、レジーの母上の件でも…。」
ジークフリートはセシリアの顔色を窺いながら途中で話を切った。
「ジーク様、続けてください。私は構いません。」
「済まない……やはり今は止めておこう。」
セシリアはジークフリートから王妃に視線を動かすと、確認するかのように言った。
「王妃様は父が王妃様を直接狙って来るとお考えになったから王都を離れられたのですか?」
王妃は何かを思い出すかのような目をしながら微かに頷いた。
「バトラー公爵夫人が亡くなる前からビューロー侯爵に不審な点があることは騎士団も掴んでいた。だが、決定的な証拠が出なかったのだ……それで陛下とスコールと相談をした結果王都を離れ、離宮に籠ることにした。」
レジナルドは王妃の言葉に何か引っかかるものを感じた。
「王妃様、じゃあ声が出なくなったからって言うのは…?」
「公爵夫人の訃報を聞いた後……一週間くらいだったか、声が出なかったのは。」
「父上もスコール団長もその事を知っていたのですね?」
王妃は申し訳なさそうにジークフリートを見ると頷いた。
「スコールだけは知っていたが、家族には知らせなかった。あの頃のお前たちはいろいろなことを理解するにはまだ幼過ぎた。陛下にはもしかしたらスコールが伝えたのかもしれないが、そこまでは私にも分からない。」
ジークフリートは膝の上で組んだ手に額を載せると何やら考え込み始めた。
「ジーク?」
「どこからだ?」
苛立つジークフリートの声にレジナルドがポカンとして聞き返した。
「何が?」
「ステーリアは何処からビューロー侯爵に手を貸している?リアの母上が亡くなった時にはフェルナンドはまだ二歳だ。という事はステーリアの王妃が侯爵と繋がっていたとでも?」
王妃はそれを肯定も否定もせずに不思議そうにジークフリートに尋ねた。
「それを知ったからと言って今更何になる?それよりも今どう動くかの方が余程大事だろうに?」
「しかし、フェルナンドが次にどんな手を使ってくるのか……。」
王妃はセシリアをチラッと見ると僅かに微笑みを浮かべた。
「どんな手を使ってこようともセシリアは今こちらの手の内にある。離すつもりは無いのであろう?」
ジークフリートは迷うことなく頷いた。
「ステーリア側が仕掛けてくるのを何もせずにじっと待つつもりか?こちらから仕掛けるくらいの事をしてやればいい。」
「ちょっと、王妃様?」
レジナルドが後ろから慌てたように声を掛け、ジークフリートはぎょっとした様子で王妃の方を見た。
「陛下も同じ様に考えているはずだ。早く夫婦になり、子の一人でも授かればよい。」
「王妃様?いくら何でもそれはちょっと……」
「…」
「正式に婚姻を結ぶまでまだ二年あるがその前に子が出来たとしても何も問題はない。」
王妃以外の三人は耳を疑った。
「母上、しかしそれではリアは学園にも通えません…。」
「いや、ジーク?問題はそこじゃないだろ?」
ジークフリートが恐る恐るセシリアの方を見ると、真っ赤な顔をしてこちらを見上げる紺色の瞳と目が合った。直ぐに目を逸らすが心臓が早鐘を打つのが分かる。
「陛下にセシリアの後見を早く決めるよう言っておかねばな……。」
王妃は嬉しそうにそう言うと、レジナルドを近くに呼び寄せ耳元で何事か囁いた。
騎士団から戻ってみるとセシリアの部屋の前には王妃の護衛とセシリアの護衛とが厳重に警戒していた。
「はい、少し前からお二人で話がしたいからと…。」
ジークフリートはレジナルドに目配せをすると騎士たちをかき分け、扉を大きく叩いた。
「リア、母上、戻りました。」
「ビューロー侯爵は相変わらず黙りです。」
「ただ一点リア様の母上の件で王妃様を恨んでいたという事は認めています。」
「16年前か…。」
「父上とスコール団長の話では、レジーの母上の件でも…。」
ジークフリートはセシリアの顔色を窺いながら途中で話を切った。
「ジーク様、続けてください。私は構いません。」
「済まない……やはり今は止めておこう。」
セシリアはジークフリートから王妃に視線を動かすと、確認するかのように言った。
「王妃様は父が王妃様を直接狙って来るとお考えになったから王都を離れられたのですか?」
王妃は何かを思い出すかのような目をしながら微かに頷いた。
「バトラー公爵夫人が亡くなる前からビューロー侯爵に不審な点があることは騎士団も掴んでいた。だが、決定的な証拠が出なかったのだ……それで陛下とスコールと相談をした結果王都を離れ、離宮に籠ることにした。」
レジナルドは王妃の言葉に何か引っかかるものを感じた。
「王妃様、じゃあ声が出なくなったからって言うのは…?」
「公爵夫人の訃報を聞いた後……一週間くらいだったか、声が出なかったのは。」
「父上もスコール団長もその事を知っていたのですね?」
王妃は申し訳なさそうにジークフリートを見ると頷いた。
「スコールだけは知っていたが、家族には知らせなかった。あの頃のお前たちはいろいろなことを理解するにはまだ幼過ぎた。陛下にはもしかしたらスコールが伝えたのかもしれないが、そこまでは私にも分からない。」
ジークフリートは膝の上で組んだ手に額を載せると何やら考え込み始めた。
「ジーク?」
「どこからだ?」
苛立つジークフリートの声にレジナルドがポカンとして聞き返した。
「何が?」
「ステーリアは何処からビューロー侯爵に手を貸している?リアの母上が亡くなった時にはフェルナンドはまだ二歳だ。という事はステーリアの王妃が侯爵と繋がっていたとでも?」
王妃はそれを肯定も否定もせずに不思議そうにジークフリートに尋ねた。
「それを知ったからと言って今更何になる?それよりも今どう動くかの方が余程大事だろうに?」
「しかし、フェルナンドが次にどんな手を使ってくるのか……。」
王妃はセシリアをチラッと見ると僅かに微笑みを浮かべた。
「どんな手を使ってこようともセシリアは今こちらの手の内にある。離すつもりは無いのであろう?」
ジークフリートは迷うことなく頷いた。
「ステーリア側が仕掛けてくるのを何もせずにじっと待つつもりか?こちらから仕掛けるくらいの事をしてやればいい。」
「ちょっと、王妃様?」
レジナルドが後ろから慌てたように声を掛け、ジークフリートはぎょっとした様子で王妃の方を見た。
「陛下も同じ様に考えているはずだ。早く夫婦になり、子の一人でも授かればよい。」
「王妃様?いくら何でもそれはちょっと……」
「…」
「正式に婚姻を結ぶまでまだ二年あるがその前に子が出来たとしても何も問題はない。」
王妃以外の三人は耳を疑った。
「母上、しかしそれではリアは学園にも通えません…。」
「いや、ジーク?問題はそこじゃないだろ?」
ジークフリートが恐る恐るセシリアの方を見ると、真っ赤な顔をしてこちらを見上げる紺色の瞳と目が合った。直ぐに目を逸らすが心臓が早鐘を打つのが分かる。
「陛下にセシリアの後見を早く決めるよう言っておかねばな……。」
王妃は嬉しそうにそう言うと、レジナルドを近くに呼び寄せ耳元で何事か囁いた。
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