王太子殿下は甘い物を召し上がりません!

ゆみ

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騎士達の祝福

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 ジークフリートはセシリアを伴い、国王の執務室を訪れていた。私室ではなく執務室に呼び出されたと言うからには公の話に違いなかった。しかも騎士団の団長副団長の面々が顔を揃えていると言うのだからビューロー侯爵に関する話なのだろう。
 国王はこれから始まる話が何なのかをにおわせる様子もなく、何時もの調子でセシリアに菓子でもどうかと話し出した。

「陛下、お話というのは?」
 少しの時間も待てないと言わんばかりにジークフリートは席に着くなり国王に尋ねた。
「まぁまぁ、そんなに急がなくともよい。」
 セシリアが国王の横を見るとスコール団長も急かすジークフリートに向けて苦笑いをしているようだ。
「ですが、レジナルドをこの場に同席させないとなると……余程重要な話なのでしょう?」
 国王はスコール団長の隣にいる第一騎士団副団長に目で合図をすると何やら書類を準備させ始めた。
「レジナルドには後で話すつもりだ、先ずはセシリア嬢の考えを聞こうと思ってな。」
 そう言うと国王は少し間を置き、副団長から受け取った書類を見ながらジークフリートとセシリアにその内容を告げた。
「ビューロー侯爵の一件を受け、取り調べはまだ続いておるが……このままだと間違いなく第二騎士団副団長の座を侯爵から返上させることになるだろう。」
 ジークフリートは目で頷きながら国王の話の続きを促した。
「それから、ジークが言っておったセシリア嬢の後見の件だが……スコールには断られた。」
「断られた?」
 ジークフリートがどういう事かとスコール団長を見ると黙礼を返される。
「儂もバトラー公爵家にという話は余り乗り気ではなかった。第一騎士団副団長が名乗り出てくれたのだが…伯爵位だ。それに伯爵には年頃の息子もおってな……まだ婚約もしておらん。第二騎士団の団長は騎士爵だから無理だろう。」
 第一騎士団副団長と第二騎士団団長がその場でセシリアに申し訳なさそうに頭を下げた。
「騎士団からは後見になる者を立てられないと言うことですね?」
「お力になれず申し訳ありません。」
 ここに来て初めてスコールが言葉を発した。
「だが、王妃がに根回しをしてくれたようでな……。」
「あちら側──と言いますと?」
 ジークフリートは王宮に帰って間もない王妃が根回しをする所となると何処だろうかと考えてみたが思い当たる節はない。
「宰相だ、シュレーダー公爵。」
「……シュレーダー公爵?」
 セシリアが隣で小さく囁くのが聞こえた。
「王妃様の姪にあたる方がシュレーダー公爵のご子息と婚約されていたかと…。」
「ほう、ジークでも知らぬ事をセシリア嬢は知っておったか…。」
 国王は満足そうに微笑むと、ジークフリートを見やった。
「どうだ?セシリア・シュレーダー公爵令嬢というのは?」

 その時、執務室の扉を慌ただしく叩く音がすると息をきらした宰相が駆け込んできた。
「大変に遅れまして──申し訳ございません。」
「シュレーダー公爵、丁度今二人に話をしていたところだ。」
「そうでしたか…。それで、どこまで話が進みましたか?」
 宰相は懐からハンカチを取り出すと慌ただしく額の汗をおさえた。
「宰相殿には確かご子息がお二人いらっしゃいましたよね?」
 ジークフリートは宰相の顔を見て何かを思い出したようだった。
「えぇ、一人はもう妻を娶っておりますしもう一人はご存知の通り殿下の従妹に当たる方と婚約しております。ですから殿下がご心配なさる事は何もございません。」
 宰相はジークフリートがセシリアの手にそっと手を伸ばしたのを見て微笑んだ。その様子を見ていた国王もセシリアに問いかける。
「セシリア嬢、遠慮なく意見を聞かせて欲しい。」
 セシリアは国王からジークフリートに視線を移すと少し困った様に首を傾げた。
「私……覚悟はできているつもりでしたが。まさか宰相の地位にある方に後見をして頂くことになるなんて…。」
「宰相なら信頼できる。それにただ名を借りるだけだ、一緒に住むわけでもない。」
 手を握りしめて見つめ合う二人に、国王は宰相と顔を見合わせるとわざとらしく咳払いをした。
「では、シュレーダー公爵家に養女として入ってもらうという事でよいな?」
「リア?」
「はい。」
 セシリアは一度国王に向けて大きく頷くと宰相の方へ向き直り、優雅にカーテシーをして見せた。
 一同の視線が一気にセシリアに向かう。中でも一番驚いたのはジークフリートだったのかもしれない。しかし直ぐにその表情を変えるとにやける口元を隠すように手をやった。
「殿下、本日からはシュレーダー公爵家の長女です。どうぞ末永くよろしくお願いいたします。」
 宰相も満面の笑みをたたえるとジークフリートに向かって丁寧に頭を下げる。
「ジーク、何だその締りのない顔は?」
「父上、放っておいて下さい……。」
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