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胸に秘めたそれぞれの……
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「これで一先ず安心だな…。」
「ありがとうございました。流石にレジナルドの事を思うとセシリア様をバトラー家に迎えると言う訳にもいきませんでしたから。」
国王は胸を撫で下ろす幼馴染を黙って見つめた。
「そんな事は儂が許さん。ジークの奴はレジナルドの手が届かぬ所にセシリア嬢を置いておきたかったのかもしれんがな。」
「そうですね、あの二人はお互いを認め合っていますから。心配になる気持ちも分かりますが…。」
国王は少し遠い目をすると声を潜めた。
「王妃がジークにセシリア嬢と早く子を成せと言ったらしい…。」
「?!」
「ビューロー侯爵が拘束されたと分かったら急に元気になりおって……。」
スコールはプッと笑いを零すと続き部屋の扉の方を向いた。
「ひょっとして、殿下に弟や妹が生まれる日の方が近いかもしれませんね?」
「なっ!そ、それはない!」
「シュレーダー公か。確かにリア様は騎士の家よりも、宰相の家の方が似合っているのかもしれないな。」
「…私としてはバトラー家の方が安心できたのだが。シュレーダー公爵家に関しては母上の勧めもあった様だ。」
レジナルドは姿勢を正すと、ジークフリートに真剣な眼差しを向けた。
「ジーク、一度だけきちんと話しておきたい事がある。」
「……」
「俺、リア様の事真剣に好きだった。だけどこれだけは誓う、ジークの手から奪うような真似は二度としない。だから俺の事信じて欲しい。」
ジークフリートはレジナルドをじっと見つめた。
「レジー、私も一つだけ聞きたい事がある。」
「……」
「お前は私達の傍でずっと一緒にいて、それで本当にいいんだな?」
レジナルドは右手で拳を作ると大袈裟な身振りでジークフリートの胸を殴る振りをしてその胸元にトンと突き付けた。
「そうさせてもらえるのなら、いつまでも……。」
ジークフリートはレジナルドの拳を掴むと胸元からそっと引き剥がした。
「分かった……お前を信じる。」
「セシリア、あの場ではジークフリートをけしかける様な事を言ったがあれは慎重な性格をしておるからな…心配には及ばん。」
「何もあんな風に仰らなくても…。」
「皆が思っている事を私が口にした迄だ。其方達を見ていると焦れったくてしょうがない。だが後見の話も進んだようだし、あれはあれで良かったではないか。」
セシリアは目を逸らすと王妃の手に光る銀の指輪を見つめた。
「はい……侯爵家の籍を外れました。これで良かったのです。」
ビューロー侯爵の騎士団での拘留期限は間もなく切れるが侯爵は黙秘を続けている為、王妃暗殺未遂という事で処分を受けることになる。刑期は三年から十五年の間になるはずだ。侯爵家を継ぐのは遠縁の者か養子か…。いずれにせよセシリアには知る余地もなかった。
「血のつながりがあるとはいえ、侯爵ともステーリアの従妹とも疎遠だったと聞いている。もう気にする必要はない。」
セシリアはその言葉でようやくソフィアの存在を思い出し、その後音沙汰がなかったことを不審に思った。
「王妃様は従妹がその後どうしているかご存じなのですか?」
王妃は眉を顰めると困ったように扇で顔を扇いだ。
「ビューロー侯爵家で処分が決まるまで謹慎させていたのだが…。侯爵があのような騒ぎを起こした隙をついてどうやら逃げ出したようだ…。」
セシリアですらその存在を忘れかけていたほどなのだから無理もないことだった。しかし護衛の隙をついて逃げ出すとなると協力者がいなければできることでもない。
「ひょっとしてエリックと言う騎士が一緒に逃げたのでしょうか?」
「騎士?……いや、そのような話は聞いていないが。手引きをしたのは侯爵の娘と聞いている。夫人と三人で金目の物を持って逃げたようだ。まぁこちらも間もなく捕まる事だろう。」
セシリアは血の繋がりはないはずなのにどこか似通った義妹と従妹の二人が手に手を取り合って馬車に乗り込む姿が目の前に見えるような気がした。それにしても侯爵家を捨てて縁も所縁もないステーリアに逃亡を図るとは……。
「母上?また何か余計なことをリアに吹き込んでおられたのですか?」
血の気が引く思いで考え込んでいたセシリアは、肩を温かく抱き寄せられることでようやくジークフリートが傍にいることに気が付いた。
「ジーク様?」
「部屋を覗いたらいなかったから、探した。」
離れて控えているレジナルドがニヤついているのが目に入った。相変わらず距離が近いとでも言いたいのだろう。
「セシリアが従妹の事を知りたがったから教えていただけだ。」
ジークフリートはセシリアを椅子から立たせると、王妃に目礼をしようとして呆れたように付け加えた。
「姉上のお喋りは母親譲りだったのですね。私のリアに10年分の話し相手をさせるのは止めていただきたいものです。」
「ジーク様……」
「こわっ!そこまで言うか?」
王妃は何も言わずにニヤリと笑うと早く出て行けと言わんばかりに扇で扉の方を指し示した。
「ありがとうございました。流石にレジナルドの事を思うとセシリア様をバトラー家に迎えると言う訳にもいきませんでしたから。」
国王は胸を撫で下ろす幼馴染を黙って見つめた。
「そんな事は儂が許さん。ジークの奴はレジナルドの手が届かぬ所にセシリア嬢を置いておきたかったのかもしれんがな。」
「そうですね、あの二人はお互いを認め合っていますから。心配になる気持ちも分かりますが…。」
国王は少し遠い目をすると声を潜めた。
「王妃がジークにセシリア嬢と早く子を成せと言ったらしい…。」
「?!」
「ビューロー侯爵が拘束されたと分かったら急に元気になりおって……。」
スコールはプッと笑いを零すと続き部屋の扉の方を向いた。
「ひょっとして、殿下に弟や妹が生まれる日の方が近いかもしれませんね?」
「なっ!そ、それはない!」
「シュレーダー公か。確かにリア様は騎士の家よりも、宰相の家の方が似合っているのかもしれないな。」
「…私としてはバトラー家の方が安心できたのだが。シュレーダー公爵家に関しては母上の勧めもあった様だ。」
レジナルドは姿勢を正すと、ジークフリートに真剣な眼差しを向けた。
「ジーク、一度だけきちんと話しておきたい事がある。」
「……」
「俺、リア様の事真剣に好きだった。だけどこれだけは誓う、ジークの手から奪うような真似は二度としない。だから俺の事信じて欲しい。」
ジークフリートはレジナルドをじっと見つめた。
「レジー、私も一つだけ聞きたい事がある。」
「……」
「お前は私達の傍でずっと一緒にいて、それで本当にいいんだな?」
レジナルドは右手で拳を作ると大袈裟な身振りでジークフリートの胸を殴る振りをしてその胸元にトンと突き付けた。
「そうさせてもらえるのなら、いつまでも……。」
ジークフリートはレジナルドの拳を掴むと胸元からそっと引き剥がした。
「分かった……お前を信じる。」
「セシリア、あの場ではジークフリートをけしかける様な事を言ったがあれは慎重な性格をしておるからな…心配には及ばん。」
「何もあんな風に仰らなくても…。」
「皆が思っている事を私が口にした迄だ。其方達を見ていると焦れったくてしょうがない。だが後見の話も進んだようだし、あれはあれで良かったではないか。」
セシリアは目を逸らすと王妃の手に光る銀の指輪を見つめた。
「はい……侯爵家の籍を外れました。これで良かったのです。」
ビューロー侯爵の騎士団での拘留期限は間もなく切れるが侯爵は黙秘を続けている為、王妃暗殺未遂という事で処分を受けることになる。刑期は三年から十五年の間になるはずだ。侯爵家を継ぐのは遠縁の者か養子か…。いずれにせよセシリアには知る余地もなかった。
「血のつながりがあるとはいえ、侯爵ともステーリアの従妹とも疎遠だったと聞いている。もう気にする必要はない。」
セシリアはその言葉でようやくソフィアの存在を思い出し、その後音沙汰がなかったことを不審に思った。
「王妃様は従妹がその後どうしているかご存じなのですか?」
王妃は眉を顰めると困ったように扇で顔を扇いだ。
「ビューロー侯爵家で処分が決まるまで謹慎させていたのだが…。侯爵があのような騒ぎを起こした隙をついてどうやら逃げ出したようだ…。」
セシリアですらその存在を忘れかけていたほどなのだから無理もないことだった。しかし護衛の隙をついて逃げ出すとなると協力者がいなければできることでもない。
「ひょっとしてエリックと言う騎士が一緒に逃げたのでしょうか?」
「騎士?……いや、そのような話は聞いていないが。手引きをしたのは侯爵の娘と聞いている。夫人と三人で金目の物を持って逃げたようだ。まぁこちらも間もなく捕まる事だろう。」
セシリアは血の繋がりはないはずなのにどこか似通った義妹と従妹の二人が手に手を取り合って馬車に乗り込む姿が目の前に見えるような気がした。それにしても侯爵家を捨てて縁も所縁もないステーリアに逃亡を図るとは……。
「母上?また何か余計なことをリアに吹き込んでおられたのですか?」
血の気が引く思いで考え込んでいたセシリアは、肩を温かく抱き寄せられることでようやくジークフリートが傍にいることに気が付いた。
「ジーク様?」
「部屋を覗いたらいなかったから、探した。」
離れて控えているレジナルドがニヤついているのが目に入った。相変わらず距離が近いとでも言いたいのだろう。
「セシリアが従妹の事を知りたがったから教えていただけだ。」
ジークフリートはセシリアを椅子から立たせると、王妃に目礼をしようとして呆れたように付け加えた。
「姉上のお喋りは母親譲りだったのですね。私のリアに10年分の話し相手をさせるのは止めていただきたいものです。」
「ジーク様……」
「こわっ!そこまで言うか?」
王妃は何も言わずにニヤリと笑うと早く出て行けと言わんばかりに扇で扉の方を指し示した。
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