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親の心子知らず
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「それは……俺の口からは何とも。ただ、陛下はミレーヌがトロメリンから独立してザールに付くことはないとお考えなのかもしれないな。」
妙に納得した様子のロベールをマルセルとジャンは不思議そうに見つめたが、ポールもまたそれに同意した。
「それよりも、お前たちが双子だったとはな……。ジャン、お前この先どうするんだ?」
「何も。俺はもう片足を騎士の道に突っ込んでいるし、このまま今まで通り。」
マルセルとロベールが確認するようにポールを見るとポールは神妙な顔で頷いた。
「分かった。とりあえず学園にジャンを連れて行く許可はおりそうだし、これまで通りで話を進めていいんだな?」
「あぁ。」
「そうしよう。」
ポールが下がった後の部屋で軽く食事をとりながら三人で過ごしているうちに、話題を変えたのはロベールだった。
「なぁマルセル、お前どう思う?」
「……ポールの事か?」
「実の父親だと思ってたんだろ?確かにマリエ様とはそういう風に見えたもんな。」
「そうだな。でもその時にはもう他の女性と結婚していた。ジャンを引き取るためだったんだろうがな。」
「ジャン、お前の育ての母は一体どんな女性なんだ?」
「母は……公爵家の侍女として働いていた。ロベールは知らないのか?」
「うちの侍女?知らないな。きっとあれだろ?俺たちが産まれる前の話なんだろ?」
「そうだ。公爵家の侍女を辞めてただの騎士に嫁いだせいで、俺は母の実家から疎まれているんだ。」
マルセルはどこまでも涼しい表情で語るジャンの顔をチラチラと眺めた。今頃になって父とも母とも血が繋がっていなかった上に双子の王子の片割れだと知らされたジャンは、一体何を思うのだろうか?その表情からはなにも読み取ることは出来ない。
「あ~。結婚して辞めなければ公爵の愛人になれていたかも知れないからか。まぁ俺に言わせればポールと結婚する方が何倍もマシだな。」
「ロベール、言っておくが別荘とは言えここも公爵家なんだからな?わきまえろよ?」
ロベールは侍女が片付けて行ったテーブルに両足を上げると大きく伸びをした。
「大丈夫だ。父上の女癖が悪いのは昔からずっとだしここにいる皆が知ってることさ。」
「……否定はしないが。」
ジャンが聞いてどう思うかとマルセルが顔をあげると、ジャンは苦笑しながら頷いていた。
「結婚した時に母は公爵の子を既に身篭っていたんだ。だから父が引き受けることにした。それなのにその子も、二人目の子もこの世に産まれて来ることは無かった。」
「おいおいおい、まさかその二人目の子というのも……。」
「多分公爵との子だと思う。父と母はそういう関係では無かったからな。」
「最悪だな。ポールは何故そんな厄介な妻を娶ったんだ?とりあえずお互いに隠れ蓑が必要だったからか?」
「そういう事だろうな。」
マルセルは吐き気のするような会話を平気で続ける二人を呆れ顔で眺めながら小さく首を傾げた。
「……子供が二人続けて?妙だな。」
「なんだ?マルセルどうかしたのか?」
ロベールはジャンからマルセルに視線を移した。マルセルは両腕を組んで考え込んでいる。
「私にはよく分からないのだが。二度子供が出来てそのどちらも産むことが出来なかったと言うのは、よくある事なのか?」
「どうなんだろうな?その手の話は公にされることはなかなかないからな。まだ腹がでかくなる前ならありそうな気もするが…。」
助けを求めるようにロベールはジャンを見たが、ジャンは何も分からないというように首を横に振っただけだった。
「ロベール、さっきポールは義弟は父上の子供ではないと言っていなかったか?」
「ん?あぁ、王太子か。言ってたな。王妃の愛人は騎士団幹部……って!おい、まさか?」
慌てて顔を青くするロベールを見ると、マルセルは冷たい笑みを浮かべた。
「どうした?私はまだ何も言っていないぞ?」
「勘弁してくれよ!あの王太子が俺の義弟だって言いたいのか?そんな事って……。」
「父上は王妃の相手──つまりは王太子の父親が誰かを知っていた。その上で公爵は国を裏切らないと判断したんだろうな。」
「クソ親父が……!」
ロベールは忌々しげに拳でテーブルを叩くと小さく呻いた。
「真相かどうかはまだ分からん。あくまで私の推測だ。しかし仮にそうだとしたらトロメリンの未来はほぼ公爵の手に落ちたようなものだな。」
「トロメリンの王太子は公爵の血を引き、そして独立を目指すザールには息子であるロベールがいるという訳か。」
それまで黙っていたジャンがようやく口を開いた。
「ザールの独立はいわば賭けだ。負けたとしても公爵が失うものはロベールだけ。五年後には正当な血をひいた王子である私を厄介払いできて清々するといったところか。考えたな。」
「そうなると分からないのはなぜマリエ様だけが直接命を狙われたか…だな。」
「父上のことだ、マリエ様に言い寄ってなびかなかったせいじゃないか?」
「マリエ様は毒で命を落とされたんだったな?」
ジャンがロベールの言葉を無視するかのようにマルセルに問いかけた。
「紅茶に仕込まれていた毒草のせいだと聞いた。それが何か?」
「紅茶…。そういえばうちにも王宮から頂いた祝いの菓子と茶があったような……。ちょうどあの前に何か王太子の祝い事があったんじゃなかったか?」
「3年前の冬…って事はまだ王太子の儀は終わってなかったな。9歳の誕生祝いか?それってひょっとして正妃様からの贈り物だったのか?」
ジャンはしばらく何かを思い出すようにじっと一点を見つめていたが、ゆっくりと瞬きをするとロベールの方に向き直った。
「確か、王宮であった茶会に参加できなかった母に贈られてきた物だったと思う。なぜうちにそういう物があったのかは知らないが。その後母は体調を崩して流産した。もしかしたら命を狙われていたのはマリエ様だけじゃなかったのかもしれないな。」
「相手は陛下ではなく正妃様か……。」
妙に納得した様子のロベールをマルセルとジャンは不思議そうに見つめたが、ポールもまたそれに同意した。
「それよりも、お前たちが双子だったとはな……。ジャン、お前この先どうするんだ?」
「何も。俺はもう片足を騎士の道に突っ込んでいるし、このまま今まで通り。」
マルセルとロベールが確認するようにポールを見るとポールは神妙な顔で頷いた。
「分かった。とりあえず学園にジャンを連れて行く許可はおりそうだし、これまで通りで話を進めていいんだな?」
「あぁ。」
「そうしよう。」
ポールが下がった後の部屋で軽く食事をとりながら三人で過ごしているうちに、話題を変えたのはロベールだった。
「なぁマルセル、お前どう思う?」
「……ポールの事か?」
「実の父親だと思ってたんだろ?確かにマリエ様とはそういう風に見えたもんな。」
「そうだな。でもその時にはもう他の女性と結婚していた。ジャンを引き取るためだったんだろうがな。」
「ジャン、お前の育ての母は一体どんな女性なんだ?」
「母は……公爵家の侍女として働いていた。ロベールは知らないのか?」
「うちの侍女?知らないな。きっとあれだろ?俺たちが産まれる前の話なんだろ?」
「そうだ。公爵家の侍女を辞めてただの騎士に嫁いだせいで、俺は母の実家から疎まれているんだ。」
マルセルはどこまでも涼しい表情で語るジャンの顔をチラチラと眺めた。今頃になって父とも母とも血が繋がっていなかった上に双子の王子の片割れだと知らされたジャンは、一体何を思うのだろうか?その表情からはなにも読み取ることは出来ない。
「あ~。結婚して辞めなければ公爵の愛人になれていたかも知れないからか。まぁ俺に言わせればポールと結婚する方が何倍もマシだな。」
「ロベール、言っておくが別荘とは言えここも公爵家なんだからな?わきまえろよ?」
ロベールは侍女が片付けて行ったテーブルに両足を上げると大きく伸びをした。
「大丈夫だ。父上の女癖が悪いのは昔からずっとだしここにいる皆が知ってることさ。」
「……否定はしないが。」
ジャンが聞いてどう思うかとマルセルが顔をあげると、ジャンは苦笑しながら頷いていた。
「結婚した時に母は公爵の子を既に身篭っていたんだ。だから父が引き受けることにした。それなのにその子も、二人目の子もこの世に産まれて来ることは無かった。」
「おいおいおい、まさかその二人目の子というのも……。」
「多分公爵との子だと思う。父と母はそういう関係では無かったからな。」
「最悪だな。ポールは何故そんな厄介な妻を娶ったんだ?とりあえずお互いに隠れ蓑が必要だったからか?」
「そういう事だろうな。」
マルセルは吐き気のするような会話を平気で続ける二人を呆れ顔で眺めながら小さく首を傾げた。
「……子供が二人続けて?妙だな。」
「なんだ?マルセルどうかしたのか?」
ロベールはジャンからマルセルに視線を移した。マルセルは両腕を組んで考え込んでいる。
「私にはよく分からないのだが。二度子供が出来てそのどちらも産むことが出来なかったと言うのは、よくある事なのか?」
「どうなんだろうな?その手の話は公にされることはなかなかないからな。まだ腹がでかくなる前ならありそうな気もするが…。」
助けを求めるようにロベールはジャンを見たが、ジャンは何も分からないというように首を横に振っただけだった。
「ロベール、さっきポールは義弟は父上の子供ではないと言っていなかったか?」
「ん?あぁ、王太子か。言ってたな。王妃の愛人は騎士団幹部……って!おい、まさか?」
慌てて顔を青くするロベールを見ると、マルセルは冷たい笑みを浮かべた。
「どうした?私はまだ何も言っていないぞ?」
「勘弁してくれよ!あの王太子が俺の義弟だって言いたいのか?そんな事って……。」
「父上は王妃の相手──つまりは王太子の父親が誰かを知っていた。その上で公爵は国を裏切らないと判断したんだろうな。」
「クソ親父が……!」
ロベールは忌々しげに拳でテーブルを叩くと小さく呻いた。
「真相かどうかはまだ分からん。あくまで私の推測だ。しかし仮にそうだとしたらトロメリンの未来はほぼ公爵の手に落ちたようなものだな。」
「トロメリンの王太子は公爵の血を引き、そして独立を目指すザールには息子であるロベールがいるという訳か。」
それまで黙っていたジャンがようやく口を開いた。
「ザールの独立はいわば賭けだ。負けたとしても公爵が失うものはロベールだけ。五年後には正当な血をひいた王子である私を厄介払いできて清々するといったところか。考えたな。」
「そうなると分からないのはなぜマリエ様だけが直接命を狙われたか…だな。」
「父上のことだ、マリエ様に言い寄ってなびかなかったせいじゃないか?」
「マリエ様は毒で命を落とされたんだったな?」
ジャンがロベールの言葉を無視するかのようにマルセルに問いかけた。
「紅茶に仕込まれていた毒草のせいだと聞いた。それが何か?」
「紅茶…。そういえばうちにも王宮から頂いた祝いの菓子と茶があったような……。ちょうどあの前に何か王太子の祝い事があったんじゃなかったか?」
「3年前の冬…って事はまだ王太子の儀は終わってなかったな。9歳の誕生祝いか?それってひょっとして正妃様からの贈り物だったのか?」
ジャンはしばらく何かを思い出すようにじっと一点を見つめていたが、ゆっくりと瞬きをするとロベールの方に向き直った。
「確か、王宮であった茶会に参加できなかった母に贈られてきた物だったと思う。なぜうちにそういう物があったのかは知らないが。その後母は体調を崩して流産した。もしかしたら命を狙われていたのはマリエ様だけじゃなかったのかもしれないな。」
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