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兄弟
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「アルノー様、もし宜しければ馬車まで案内して頂けませんでしょうか?その話は私も後でじっくりと伺いたいものです。」
「あぁ、そうでした。失礼。」
アルノーはしたり顔で頷くと、敬礼を捧げる騎士に対して手を挙げながら馬車の方へ悠然と歩き出した。
ロベールはジャンとマルセルの方を呆気に取られて見ていたが、二人が同時に歩き出したのを見ると慌てたように横に駆け寄ってきた。
「マルセル、お前いつの間にステーリア語をそんなに話せるようになったんだ?まさか船に乗っていた1ヶ月でマスターしたのか?」
「あぁ、まぁ随分前から本くらいなら読める程度の知識はあったからな。船で暇な時間を利用して会話を実践していたらそこそこいけることに気が付いただけだ。」
「そこそこ……?」
4人を乗せた馬車は滑るように港を出発するとどこかへ向けて走り出したが、窓には薄いカーテンがかけられており、窓の外の景色を窺い知ることはできなかった。
馬車が走り出すと程なく、ロベールが居眠りをはじめたのが分かった。
「お疲れのようですね。流石に長い船旅の後ですから。」
「アルノー様はトロメリンへおいでになったことが?」
「いいえ、私でもさすがにトロメリンまで行ったことはありません。我が公爵家でトロメリンまで行ったのはきっとリュカがはじめてでしょうね。父も行った事がないはずです。」
マルセルは感心したように頷くとアルノーをじっくりと観察した。リュカから気弱さをとったらきっとアルノーのようになるのかもしれない。色が白く髪の色も瞳の色もリュカとアルノーはそっくりだったが、アルノーの方には自信が漲っている感がある。それが経験によるものなのか持って生まれた気質の問題なのかはマルセルにもまだ判断はつかなかった。
「離れていてもリュカとは連絡を取り合っておられるのですね。」
「そうですね、私の所にも父の所にも手紙は良く来ます。学生の頃は年に1度は帰って来ていたのですが、働き始めてからはそれもなくなりましたから。」
「ウォーレン公には兄弟が4人おられるのでしょうか?リュカは4男だと聞きましたが?」
アルノーはジャンの方に目を向けるとリュカによく似た笑みを浮かべながら頷いた。
「えぇ、男は4人です。他に妹が2人、リュカの上にいますよ。リュカが一番年下です。」
「6人…ですか。」
「そうです。長男が公爵家を継ぎ、残りは全員既に家から出ておりますが。」
「そうなんですか?」
マルセルが驚いてアルノーに聞き返すと、アルノーはカーテンをめくって窓の外を確認した後で首を縦に振った。
「妹たちは嫁いで行きましたし、他は皆それぞれ独立しています。私もささやかですが王都に屋敷を構えております。こう見えて私も一応、ステーリアの貴族学園で教師をしているんですよ?だからリュカはわざわざ他の国の学園を探したんです。私に教えを乞うことが嫌だったのでしょう。」
「なるほど。リュカが国の学園には兄がいると言っていたのはそういう事だったんですね。」
「失礼ですがアルノー様は今おいくつですか?」
ジャンが静かに問うと、アルノーはマルセルにいたずらっぽい目を向けると笑いながら答えた。
「私たちステーリアの者は若く見られがちですが、私は今年で30になります。ちょうどステーリアの王太子殿下と同い年ですね。」
馬車が速度を落とすと間もなくアルノーは窓にかかったカーテンを開け放った。
窓の外には綺麗に手入れの行き届いた庭園が広がっているようだ。
「街中では余計な人目に付きたくなかったので閉めておりましたが。敷地に入りましたから間もなく到着しますよ。」
「どこに向かっているのでしょうか?リュカからは何も聞いていないのですが…?」
アルノーは一瞬驚いた顔を見せると、マルセルとジャンを交互に見やった。
「そうでしたか、それは失礼をいたしました。もうすぐ見えてくるのは公爵家の別邸ですよ。港に近いここはもう長い間誰も使用しておりませんがご心配には及びません。」
「公爵家の別邸ですか……。」
王都クロゼに出てきた時の事を思い出し、一瞬顔を曇らせたマルセルを見るとジャンはその膝の上に手を置いた。マルセルが無言で目を向けるとジャンも黙ったままで心配ないというようにただ頷いて見せた。
その様子を見ていたアルノーは何か考え込んでいたようだが、思い出したかのように隣りに座ったロベールの肩を軽く叩くと間もなく到着する事を知らせた。
「ロベール様?」
「ん?……あ、あぁ。申し訳ありません。着きましたか?」
「もうすぐですよ。」
「そうでしたか……。」
ロベールは窓の外の庭園を眺めると大きく欠伸をして時計に目を向けた。
「ここは?」
「公爵家の別邸だそうだ。」
「ウォーレン公の別邸か。それは楽しみだな。」
「リュカからはどのくらいの滞在になるのか分からないと聞いていますが、ここならばどれだけ滞在されても構いません。」
マルセルは困った表情でロベールの方を窺うとアルノーに向かって率直に礼を言った。
「そう言って頂けると有難いです。」
「マルセルの思い付きでここまで来たものの、まだ先の事はこれから決めることになっているんですよ。」
「そうでしたか?まぁここでは退屈なさるような暇はないと思いますよ?」
アルノーはリュカとよく似た顔で再びにっこりと笑った。
「あぁ、そうでした。失礼。」
アルノーはしたり顔で頷くと、敬礼を捧げる騎士に対して手を挙げながら馬車の方へ悠然と歩き出した。
ロベールはジャンとマルセルの方を呆気に取られて見ていたが、二人が同時に歩き出したのを見ると慌てたように横に駆け寄ってきた。
「マルセル、お前いつの間にステーリア語をそんなに話せるようになったんだ?まさか船に乗っていた1ヶ月でマスターしたのか?」
「あぁ、まぁ随分前から本くらいなら読める程度の知識はあったからな。船で暇な時間を利用して会話を実践していたらそこそこいけることに気が付いただけだ。」
「そこそこ……?」
4人を乗せた馬車は滑るように港を出発するとどこかへ向けて走り出したが、窓には薄いカーテンがかけられており、窓の外の景色を窺い知ることはできなかった。
馬車が走り出すと程なく、ロベールが居眠りをはじめたのが分かった。
「お疲れのようですね。流石に長い船旅の後ですから。」
「アルノー様はトロメリンへおいでになったことが?」
「いいえ、私でもさすがにトロメリンまで行ったことはありません。我が公爵家でトロメリンまで行ったのはきっとリュカがはじめてでしょうね。父も行った事がないはずです。」
マルセルは感心したように頷くとアルノーをじっくりと観察した。リュカから気弱さをとったらきっとアルノーのようになるのかもしれない。色が白く髪の色も瞳の色もリュカとアルノーはそっくりだったが、アルノーの方には自信が漲っている感がある。それが経験によるものなのか持って生まれた気質の問題なのかはマルセルにもまだ判断はつかなかった。
「離れていてもリュカとは連絡を取り合っておられるのですね。」
「そうですね、私の所にも父の所にも手紙は良く来ます。学生の頃は年に1度は帰って来ていたのですが、働き始めてからはそれもなくなりましたから。」
「ウォーレン公には兄弟が4人おられるのでしょうか?リュカは4男だと聞きましたが?」
アルノーはジャンの方に目を向けるとリュカによく似た笑みを浮かべながら頷いた。
「えぇ、男は4人です。他に妹が2人、リュカの上にいますよ。リュカが一番年下です。」
「6人…ですか。」
「そうです。長男が公爵家を継ぎ、残りは全員既に家から出ておりますが。」
「そうなんですか?」
マルセルが驚いてアルノーに聞き返すと、アルノーはカーテンをめくって窓の外を確認した後で首を縦に振った。
「妹たちは嫁いで行きましたし、他は皆それぞれ独立しています。私もささやかですが王都に屋敷を構えております。こう見えて私も一応、ステーリアの貴族学園で教師をしているんですよ?だからリュカはわざわざ他の国の学園を探したんです。私に教えを乞うことが嫌だったのでしょう。」
「なるほど。リュカが国の学園には兄がいると言っていたのはそういう事だったんですね。」
「失礼ですがアルノー様は今おいくつですか?」
ジャンが静かに問うと、アルノーはマルセルにいたずらっぽい目を向けると笑いながら答えた。
「私たちステーリアの者は若く見られがちですが、私は今年で30になります。ちょうどステーリアの王太子殿下と同い年ですね。」
馬車が速度を落とすと間もなくアルノーは窓にかかったカーテンを開け放った。
窓の外には綺麗に手入れの行き届いた庭園が広がっているようだ。
「街中では余計な人目に付きたくなかったので閉めておりましたが。敷地に入りましたから間もなく到着しますよ。」
「どこに向かっているのでしょうか?リュカからは何も聞いていないのですが…?」
アルノーは一瞬驚いた顔を見せると、マルセルとジャンを交互に見やった。
「そうでしたか、それは失礼をいたしました。もうすぐ見えてくるのは公爵家の別邸ですよ。港に近いここはもう長い間誰も使用しておりませんがご心配には及びません。」
「公爵家の別邸ですか……。」
王都クロゼに出てきた時の事を思い出し、一瞬顔を曇らせたマルセルを見るとジャンはその膝の上に手を置いた。マルセルが無言で目を向けるとジャンも黙ったままで心配ないというようにただ頷いて見せた。
その様子を見ていたアルノーは何か考え込んでいたようだが、思い出したかのように隣りに座ったロベールの肩を軽く叩くと間もなく到着する事を知らせた。
「ロベール様?」
「ん?……あ、あぁ。申し訳ありません。着きましたか?」
「もうすぐですよ。」
「そうでしたか……。」
ロベールは窓の外の庭園を眺めると大きく欠伸をして時計に目を向けた。
「ここは?」
「公爵家の別邸だそうだ。」
「ウォーレン公の別邸か。それは楽しみだな。」
「リュカからはどのくらいの滞在になるのか分からないと聞いていますが、ここならばどれだけ滞在されても構いません。」
マルセルは困った表情でロベールの方を窺うとアルノーに向かって率直に礼を言った。
「そう言って頂けると有難いです。」
「マルセルの思い付きでここまで来たものの、まだ先の事はこれから決めることになっているんですよ。」
「そうでしたか?まぁここでは退屈なさるような暇はないと思いますよ?」
アルノーはリュカとよく似た顔で再びにっこりと笑った。
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