【本編完結】幸せになりたくて…… ~籠の中の鳥は自由を求めて羽ばたく~ 【改稿版】

日暮ミミ♪

文字の大きさ
14 / 26

最低な夫と不倫妻 ②   ※

しおりを挟む
「……ん……んっ、あ……っ♡ あっ、あっ♡」

 しばらく布越しに肉芽を刺激してオナニーしていたけれど、時間がもったいない。

「んんっ、こんなことしてる場合じゃ……。早くイっちゃって続き書かなきゃ……。――あぁ…………んっ!」

 最後はショーツの中に手を入れて、蜜に濡れたクリを直接刺激することで達した。

「……はぁ、ちょっとスッキリした。さて、続き続き」

 汚れた指をテーブルの上に置いてあったウェットティッシュで拭い、パンツのファスナーを上げ直してまたキーボードを叩き始める。
 その後は筆が進みに進んで、二日分の六千字を一気に書き上げてアップした時にはもう四時前だった。そろそろ正樹さんが帰ってくる。
 パソコンをコンセントから引っこ抜き、通勤用バッグに突っ込んで寝室に持っていくと、タイミングよくドアチャイムが鳴った。ふー、ギリギリセーーフ!

「――ただいま、里桜」

「おかえりなさい。出張、お疲れさまでした。――バッグ、預かりますね」

 あたしは愛想よく夫を出迎え、ボストンバッグを受け取る。彼はあたしにビニール袋を差し出した。お土産らしいけれど、一体どういう風の吹きまわし?

「……あの、正樹さん。これは……」

「土産を買ってきたから、食後に一緒に食べよう。浜松はままつの銘菓だ」

「え、それって」

 袋から取り出したその箱の包み紙には、『うなぎパイ』の文字が。〝夜のお菓子〟ともいわれている代物シロモノで、これを食べると精力がギンギンになるとかならないとか。
 ……これって確信犯? 明らかに狙ってるよね……。暗に「今夜は抱かせろ」と意思表示をしているわけだ。

「……あの、里桜。今夜こそは……いいだろうか? お前を抱いても」

「いいですよ。今夜、しましょう」

「……えっ、いいのか?」

 あたしがあっさり「いい」と答えたので、勢い込んで言ったらしい正樹さんは面食らっている。

「いいって言ったらいいんです。夫婦でしょう? それにあたし、今排卵の期間中なので、子供を作るにはちょうどいいタイミングなんです」

 ……ただし、あなたのじゃなくて大智のね。この人とした分、明日大智にもしてもらうのだ。

「……ああ、そうか。ずっと拒まれていたから、てっきり俺とはしたくないのかと」

 本当はしたくないけれど、あたしはあくまで本心を隠していた。

「それは生理とか、仕事が変わって疲れてたりとか色々あったからですよ。――お疲れでしょう? 夕飯までリビングでのんびりしてて下さい。あたしは荷物を片付けますから」

「ああ、そうさせてもらおうかな」

 正樹さんがジャケットを脱ぎ、ネクタイを外してソファーに沈むのを尻目に、あたしは寝室でボストンバッグを開ける。洗濯物の入ったジッパー付きのビニール袋を出し、他の物もバッグから取り出していると……。

「……ん? 何これ、女もののヘアクリップ?」

 あたしが使っているものより少し小ぶりな、ピンク色のラメ入りのそれがコロンと出てきた。どうしてあの人のバッグからこんなものが……。

「待って、里桜。一旦落ち着こう。これは浮気の証拠としてまだ決定的じゃない」

 気を取り直してバッグの内ポケットも探ると、未開封の正方形の個包装と、それが入っていた薄くて平たい箱を見つけた。それはまだ記憶に新しい、大智の部屋でも見て実際に使っていたあのブツだ。

 そして洗濯物を出した時、決定的な証拠が出た。彼のワイシャツに、ベッタリと濃いピンク色の口紅が!
 これはつまり、正樹さんがあたしを求めながら、出張先で別の女性とも関係を持ったということに他ならない。しかも、あたしとは避妊なしでしたがるくせに、その女性相手には避妊具を使ってコトに及んでいた、と。

「……正樹さんって最低な夫だ」

 いや、それを言ったらあたしも不倫妻だからドングリの背比べだ。しかも本気な分、あたしの方がタチが悪い。

 それはともかく、洗濯してしまったら決定的な証拠が消えてしまうので、あたしはワイシャツに付いた口紅をスマホで撮影して写真を保存してから、自分の洗濯物と一緒に洗うことにした。
 あの人、けっこう抜けてるんだな。こんなもの洗濯してしまえばバレないとでも思ったのか。一体その洗濯はいつも誰がやっていると思っているんだか。……昨日はズルしたけども。

「ふふん♡ 主婦を甘く見るなっつうの」

 本気になったあたしの恐ろしさを思い知るがいい。あとの証拠もちゃんと保管しておいて、離婚の切り札として使わせてもらうんだから。――お互いに不実を働いたんだし、これで条件はお互いさまイーブンじゃないだろうか。


 ――夕食は冷蔵庫の中にあったカレーの残りと作り置きされたおかずで済ませた。出張帰りの正樹さんはそれでも文句を言わずに「美味い美味い」と平らげてくれ、食後のデザートとして二人でうなぎパイを食べた。
 さすがは『夜のお菓子』といわれるだけあって、食べた後ほんのりと体に熱がこもったような気がする。まさか媚薬なんか仕込まれていたりしない……よね?

 その後はしばらく夫の土産話に耳を傾けつつ洗い物を済ませて、リビングで寛ぐ夫に向き合った。

「……あの、正樹さん。あたし、明日出かけてきてもいいでしょうか? 今の職場でできたお友だちから、一緒に遊びに行こうって誘われてて。帰りにスーパー銭湯にも行きたいって言ってたので、帰りは夕方になると思うんですけど」

 行き先にスーパー銭湯を挙げたのは、とっさの思いつきだ。彼の部屋に行った後、ボディソープの香りがした時の言い訳として使えるかなと思ったのだ。

「……別にいいが。友だちができたなんて俺は聞いてないぞ。男か?」

「女の子ですよ。佐伯ルナちゃんっていうんですけど。昨夜も彼女のところに泊めてもらったんです」

「女性か。それなら構わない。行っておいで。夕方には帰ってくるんだな?」

「はい。許して下さってありがとうございます。じゃあ、明日は夕方まで楽しんできますね!」

 そんなにあっさり引っかかってくれるとは思っていなかったので、あたしは本当に嬉しかった。


 その後、正樹さんとは別行動。あたしはダイニングでパソコンを開き、明日の分の執筆を始めながらスマホで大智にメッセージを送った。


〈とりあえず第一関門突破! 明日、大智のところへ行けることになりました!〉


 すぐに既読がついて、「了解しました!」というスタンプが送られてきた。


〈それはそうと、今日更新された分読んだぜ。
 あれ、昨夜から今朝にかけてオレらがヤってたことじゃね?〉


〈……バレたか(笑)〉


 やっぱり大智はすぐ見抜いたか……。そりゃそうだ、当事者だもんね。


   * * * *


「――それじゃあたし、先にお風呂頂きますね」

「ああ、どうぞ」

 バスタブのお湯がいっぱいになったので、あたしはバスタオルと着替え――ルームウェアと、あのセクシーランジェリーだ――を用意して先に入浴させてもらう。
 体を洗っている間にも、体の熱はなかなか抜けない。おかげでちょっとのぼせそうになった。

 体を拭くと、セクシーランジェリーを身に着ける。ブラもショーツもいつものより布地が薄いので、ちょっとスースーして落ち着かないけれど、自分がグンといい女になった気分になれるのは悪くない。
 いや、多分自覚がなかっただけであたしは元々いい女だったのだろう。大智にこれだけ愛されて、正樹さんからも毎晩のように求められるくらいだもの。

「さてと、そろそろ服着て行かなきゃ」

 あたしはあえて、色気そそる真新しい下着の上に普段と同じルームウェアを着た。正樹さん、脱がせたらどんな反応をするだろう? 実はワンピースの布地の下に、薄っすら透けているのだけれど……。

 髪をドライヤーで乾かしてから、あたしは寝室に戻った。

「――正樹さん、お待たせしました。上がりましたよ」

 自分でワンピースの裾をまくり上げてチラリと下着を見せると、彼がゴクリと唾を飲み込むのが見えた。

「……じ、じゃあ俺も入ってくる……」

 彼はバツが悪そうに慌てて視線を逸らし、バスタオルと着替えを持ってバスルームへ行こうとしたけれど、あたしにはチラッと見えた。彼の股間がちょっとモッコリ膨らんでいるのを。
 別にあんな人を誘惑するのに成功したからって嬉しくはないけれど、ちょっとした手応えは感じた。

 夫は三十分もしないうちにお風呂から上がってきて、熱を帯びた目で見つめながらベッドの上に座って待っていたあたしをせかせかと押し倒した。

「……服、脱がせていいかな」

「ええ、どうぞ」

 性急な手つきであたしのワンピースを脱がせた正樹さんは、初めて見るあたしの色っぽいランジェリー姿にもう一度喉を鳴らした。

「……里桜、その下着は」

「今日、新しく買ったんです。この時のために。……どうですか? あたし、変じゃないですか……?」

 あたしは正樹さんを誘惑しながら、こんなことを言う自分に少し酔っていた。明日、大智にも同じようにしてみよう……。

「いや、変じゃないよ。むしろ、たまらなくそそられる……」

 彼の目に宿る熱が、少し強くなった気がする。それだけ、あたしに欲情しているということだ。

「む……ぅっ! んん……っ!」

 彼はあたしの唇を強引に奪い、口をこじ開けさせて舌を絡ませてきた。昨夜、大智とも同じようにしたけれど、この人のキスは荒々しくて大智のような優しさはない。でも、同じくらいあたしの欲情がかき立てられる。
 初夜にはこんなことしてくれなかった。それなのにどうしちゃったの?

「んん……んっ、はぁ……。あぁっ! あ……ぁん」

 彼はキスをやめた後、ブラをずらして胸を愛撫し始める。あたしは思わず感じてしまい、甘い声を漏らしてしまった。
 胸だけじゃなく、下着まで取り去られた後に割れ目の中まで愛撫され、あたしは体で快感を得ながらも頭の中は混乱していた。……この人、初夜の時よりエッチが上手くなってる……?
 もちろんまだ大智ほどではないし、下手であることに違いはないのだけれど。こんな前戯なんか、あの夜はしようともしなかった。あたしが多少は気持ちよさを感じて喘ぐくらいには、彼の行為は進歩している。でも、一体どうやって……?
 ――まさか浮気相手の女性と、昨夜練習していたの? ううん、昨夜だけじゃなく、あたしの知らないところで何度も。
「あっ、あっ」と喘ぎ声を上げながらそんなことを考えていると、いつの間にか快感の波が襲ってきた。

「…………あ……イくぅ……っ! あぁぁ……っ!」

 初めて彼の目の前で絶頂を迎え、体がビクンビクンと軽く痙攣している。まさか、こんなことになるなんて……。

「……初めてイってくれたな。じゃあ里桜、今度は俺を気持ちよくしてくれ」

 彼は嬉しそうにそう言い、あたしの顔に自分の雄を近づけた。
 大智にあたしから手コキや口淫をしてあげたことはあるけれど、回数は少ない。彼がこの行為をあまりあたしにさせたがらなかったからだ。だから、あたしのテクニックでこの人が満足してくれるかどうか……。

「……はい」

 でも、今夜はこの人をその気にさせるのが目的なので、あたしは少々ためらいながらも受け入れた。上半身を起こし、彼自身を両手で揉みしごき始める。お風呂上りなのでキレイなのだろうけれど、あたしは汚れ物でも触らされているような気持ちだ。

「……ああ、う……っ! なかなかいい手つきだ……。気持ちいいよ、里桜……」

 あたしの方から「どうですか?」と訊くまでもなく、彼はとろけたような表情で感想を漏らしている。どうやらあたしの手コキテクに満足してくれているみたいだけれど、さすがに口でまでしてあげたいとは思わない。なので、手の動きのみ激しくしたら、彼の雄が密度や質量を増して硬くなり、ピンと上向きに勃ってきた。

「……ああ、いますぐお前のナカに挿れたい……っ。いくよ……」

「……ええ、どうぞ。……んっ!」

 大智の雄よりも大きなソレは、ズプンと音を立ててあたしの蜜壺に挿入された。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)

久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。 しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。 「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」 ――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。 なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……? 溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。 王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ! *全28話完結 *辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。 *他誌にも掲載中です。

課長と私のほのぼの婚

藤谷 郁
恋愛
冬美が結婚したのは十も離れた年上男性。 舘林陽一35歳。 仕事はできるが、ちょっと変わった人と噂される彼は他部署の課長さん。 ひょんなことから交際が始まり、5か月後の秋、気がつけば夫婦になっていた。 ※他サイトにも投稿。 ※一部写真は写真ACさまよりお借りしています。

自信家CEOは花嫁を略奪する

朝陽ゆりね
恋愛
「あなたとは、一夜限りの関係です」 そのはずだったのに、 そう言ったはずなのに―― 私には婚約者がいて、あなたと交際することはできない。 それにあなたは特定の女とはつきあわないのでしょ? だったら、なぜ? お願いだからもうかまわないで―― 松坂和眞は特定の相手とは交際しないと宣言し、言い寄る女と一時を愉しむ男だ。 だが、経営者としての手腕は世間に広く知られている。 璃桜はそんな和眞に憧れて入社したが、親からもらった自由な時間は3年だった。 そしてその期間が来てしまった。 半年後、親が決めた相手と結婚する。 退職する前日、和眞を誘惑する決意をし、成功するが――

処理中です...