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夫(あの人)にさよならを
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――翌週からあたしは正樹さんと五ヶ月間暮らしたマンションを出て、大智と同棲を始めた。
妊娠も三ヶ月目に入り、お腹の赤ちゃんも順調に育っている。大智の会社での仕事もバリバリこなし、産休を取得する八ヶ月までは働けるまで働くつもりだ。いざとなったらリモートによる在宅勤務という手もあるし。
ただ、両親を原告とする訴訟も始まるなど周りが何かと忙しすぎて、あの部屋に置いたあたしの荷物はそのまま引き上げられていない。とりあえず、当座の生活に必要なものは持ち出せたけれど――。
「――里桜、明日あたり休みだし、向こうのマンションに荷物引き取りに行くか? オレも付き合うし」
オフィスで仕事をしていると、大智が思いっきりプライベート全開の調子で言った。今日は金曜日で明日からは週末だし、確かにちょうどいい機会ではあるけれど。
まだあの人が離婚届を役所に提出したという話は耳に入ってきていないので、あたしは今のところ人妻のままである。同僚のルナちゃんはあたしと大智の関係を知っていて協力してくれているけれど、他のメンバーもみんな知っているとは限らないのだ。迂闊な言動はやめてほしい。
「ちょっと大智、会社でそういうプライベートな話は――」
「飯島先輩から聞いたけど、もう離婚成立しそうなんだろ? だったら堂々としてればいいんじゃね?」
「えっ、そうなの? あの人、離婚届出す気になったんだ?」
さすがはあたしの離婚問題と両親の訴訟、両方に関わった弁護士先生だ。そんなことまで知っていたなんて。
「らしいな。つうワケで、どうするよ?」
「そりゃまぁ、あたしもそろそろ荷物を引き取りに行かなきゃとは思ってるけど。なんで大智まで一緒に行くの? 運搬要員ってだけじゃないよね」
彼はクルマを持っているし、荷物を運び出すのについてきてくれたら便利というか助かるけれど。この人がそのためだけについてくるとは到底思えない。きっとあたしのことを気遣ってそう言ってくれたんだとは思うけれど……。
「うん。ダンナ……いやもうすぐ〝元〟ダンナか。万が一アイツが居合わせた時のための防波堤? みたいな」
「防波堤……って」
大智の答えを聞いて、あたしにはイヤな予感しかしない。彼は一ヶ月ほど前に、正樹さんに正面切ってケンカを売ったのだ。ああ、またもやバトルの予感……。
「いや、アイツにもう一回釘刺しとこうと思ってさ。『もう他人なんだから、コイツに二度と関わるんじゃねえ』って。んで、お前に恨みの矛先が向かねえようにするんだよ。オレなら何かされても応戦できるし」
「……あー、そういえば大智って子供の頃に空手やってたとか言ってたっけ。確か中学卒業するまで?」
「そ。ちなみに一応段取ってっからな。オレ、口ばっかの男じゃねえのよ」
大智がフフン♪ と楽しそうに鼻を鳴らす。そうだった、この人、口だけじゃなくて腕も立つんだ。
まさか、あの人がこの期に及んであたしに危害を加えようとするとは考えにくいけど、確かに一人で行くよりは大智を用心棒として連れていったほうが安全といえば安全かもしれない。
「うん、そうだよね。あたしも大智が一緒の方が心強い。ありがと。……あたしも早く鍵返さなきゃだし、早い方がいいし。じゃあ明日行こうか」
「オッケー」
また前に進むためにも、荷物という物理的な問題だけでなく精神的な問題もさっさと解決してしまった方がいい。
というわけで、あたしは大智と明日、またあの部屋へ赴くこととなった。
* * * *
――翌日は朝食を済ませてから、あたしと大智は彼のクルマで赤坂のマンションへ行った。
「……う~ん、住んでた時は立派なマンションだと思ってたけど。いざ離れてみたら大したことなかったんだなぁ、ここって」
住人でなくなった今、訪問者の目で見た感想はそんなものだ。少し大きいだけでごくありふれたオートロック付きのマンション。それを立派だと思っていたのは、少なからず藤木家の権威を感じていたからかもしれない。
「確かに、ウチのマンションとそんなに変わんねえよな。住み心地はどうよ、里桜?」
「もちろん、今大智と一緒に暮らしてるあのマンションの方が断然いいよ。やっぱり、好きな人と一緒っていうのが強みかな。もちろん、間取り的にもそうなんだけどね」
「だろうだろう。今オレの仕事部屋にしてるあの部屋もな、いずれは片付けてちゃんと使えるようにするつもりだから。将来的に子供部屋とか」
大智はあたしのお腹に目を遣りながら言う。〝子供部屋〟とかサラリと言えてしまうところに、あたしや生まれてくるこの子との将来を真剣に考えてくれているんだなぁと嬉しくなる。
――持っていたカギでオートロックを抜け、最上階までエレベーターで上がり、ペントハウスにあたる元住まいのドアノブを回してみると。
「……開いてる。あの人、いるみたい」
「インターフォン、鳴らしてみるか?」
「いいよもう。開いてるなら入っちゃおう?」
ただ置いてある荷物を引き取りに来ただけだし、別にコソコソする必要もない。堂々と上がり込めばいいのだ。
「……お前って時々、オレより男前だな」
「そう? ――おジャマしまーす」
玄関には正樹さんの靴が見当たらないけれど――多分靴箱の中に収まっているのだろう――、リビングには私服姿の彼がいた。
彼はあたしの姿を認めて一瞬嬉しそうな顔をしたけれど、大智も一緒なのが分かるとガッカリしたように言った。
「……里桜、戻ってきたわけじゃなさそうだな」
「ええ。荷物を引き取りに来ただけです。すぐに引き揚げますから。だってもう、あたしは他人でしょう?」
「離婚届、出してきたらしいって飯島弁護士から聞いてますけど」
あたしのセリフの後を引き取り、大智が畳みかける。
「……ああ、もう受理されたから離婚は成立してるよ。でも正直、俺はまだ里桜に未練がある。本当に君のことを愛していたから。信じてはもらえないだろうが」
「ええ、信じてませんよ。本当にあたしのことを愛してたって言うなら、どうしてあんなことができたんですか? あれだけ裏切っておいてまだ言うの? そういうところが信用できないっていうのよ、このクズ野郎!」
夫婦だった時には言えなかったことを、これが最後の機会だから思いっきりぶちまけた。
この人は結局、誰の気持ちも分かろうとしていない。あたしの気持ちも、ナルミさんの気持ちも。こんな人を愛した彼女がかわいそうで仕方がない。
「あの時、あたし言いましたよね? あなたのこと愛してなんかいない、愛したこともないって。あなたの気持ちなんか知ったこっちゃないわ。あたしや両親にあれだけひどいことをしておいて、『愛してた』だぁ!? ふざけんじゃないっつうの!」
言っているうちに怒りが爆発して、だんだん言葉づかいが荒っぽくなってきた。でもいいか、これでさよならだし。
大智は向こうから手を出さない限り加勢しないというスタンスのようで、あたしの言うに任せていて止めもしない。
ただ、両手の拳だけはグッと握りしめていて、「コイツに手を出したらタダじゃ済まねえぞ、この野郎」と無言の牽制というか威嚇をしているのが見ていて分かる。
「これ以上、あたしの心を引っ掻き回さないで。それから、この人やあたしの大事な人たちに何かしたら、あなたやご両親は生きて地獄を見ることになるから。飯島先生の怖さはあなたがいちばんよく分かってるでしょ?」
どのみち、法の裁きを受けたらこの人たちはあたしたちに何もできなくなる。藤木家の権威はもう地に落ちたも同然だから。
「さよなら、正樹さん。せいぜい親子三人で法の裁きを受けなさい。――じゃあ大智、さっさと始めよう」
あたしは大智を促し、リビングから寝室へ移動しようとした。大智は最後に、正樹さんに捨てゼリフを吐く。
「あんたのいちばんの失敗は、里桜を甘く見てたことだな。アイツを敵に回したこと、せいぜい後悔すればいい」
――傷心の元夫を尻目に、大智と一緒に決して少なくなかった荷物をまとめて運び出し、あたしは今日、〈藤木家〉と完全に決別したのだった。
妊娠も三ヶ月目に入り、お腹の赤ちゃんも順調に育っている。大智の会社での仕事もバリバリこなし、産休を取得する八ヶ月までは働けるまで働くつもりだ。いざとなったらリモートによる在宅勤務という手もあるし。
ただ、両親を原告とする訴訟も始まるなど周りが何かと忙しすぎて、あの部屋に置いたあたしの荷物はそのまま引き上げられていない。とりあえず、当座の生活に必要なものは持ち出せたけれど――。
「――里桜、明日あたり休みだし、向こうのマンションに荷物引き取りに行くか? オレも付き合うし」
オフィスで仕事をしていると、大智が思いっきりプライベート全開の調子で言った。今日は金曜日で明日からは週末だし、確かにちょうどいい機会ではあるけれど。
まだあの人が離婚届を役所に提出したという話は耳に入ってきていないので、あたしは今のところ人妻のままである。同僚のルナちゃんはあたしと大智の関係を知っていて協力してくれているけれど、他のメンバーもみんな知っているとは限らないのだ。迂闊な言動はやめてほしい。
「ちょっと大智、会社でそういうプライベートな話は――」
「飯島先輩から聞いたけど、もう離婚成立しそうなんだろ? だったら堂々としてればいいんじゃね?」
「えっ、そうなの? あの人、離婚届出す気になったんだ?」
さすがはあたしの離婚問題と両親の訴訟、両方に関わった弁護士先生だ。そんなことまで知っていたなんて。
「らしいな。つうワケで、どうするよ?」
「そりゃまぁ、あたしもそろそろ荷物を引き取りに行かなきゃとは思ってるけど。なんで大智まで一緒に行くの? 運搬要員ってだけじゃないよね」
彼はクルマを持っているし、荷物を運び出すのについてきてくれたら便利というか助かるけれど。この人がそのためだけについてくるとは到底思えない。きっとあたしのことを気遣ってそう言ってくれたんだとは思うけれど……。
「うん。ダンナ……いやもうすぐ〝元〟ダンナか。万が一アイツが居合わせた時のための防波堤? みたいな」
「防波堤……って」
大智の答えを聞いて、あたしにはイヤな予感しかしない。彼は一ヶ月ほど前に、正樹さんに正面切ってケンカを売ったのだ。ああ、またもやバトルの予感……。
「いや、アイツにもう一回釘刺しとこうと思ってさ。『もう他人なんだから、コイツに二度と関わるんじゃねえ』って。んで、お前に恨みの矛先が向かねえようにするんだよ。オレなら何かされても応戦できるし」
「……あー、そういえば大智って子供の頃に空手やってたとか言ってたっけ。確か中学卒業するまで?」
「そ。ちなみに一応段取ってっからな。オレ、口ばっかの男じゃねえのよ」
大智がフフン♪ と楽しそうに鼻を鳴らす。そうだった、この人、口だけじゃなくて腕も立つんだ。
まさか、あの人がこの期に及んであたしに危害を加えようとするとは考えにくいけど、確かに一人で行くよりは大智を用心棒として連れていったほうが安全といえば安全かもしれない。
「うん、そうだよね。あたしも大智が一緒の方が心強い。ありがと。……あたしも早く鍵返さなきゃだし、早い方がいいし。じゃあ明日行こうか」
「オッケー」
また前に進むためにも、荷物という物理的な問題だけでなく精神的な問題もさっさと解決してしまった方がいい。
というわけで、あたしは大智と明日、またあの部屋へ赴くこととなった。
* * * *
――翌日は朝食を済ませてから、あたしと大智は彼のクルマで赤坂のマンションへ行った。
「……う~ん、住んでた時は立派なマンションだと思ってたけど。いざ離れてみたら大したことなかったんだなぁ、ここって」
住人でなくなった今、訪問者の目で見た感想はそんなものだ。少し大きいだけでごくありふれたオートロック付きのマンション。それを立派だと思っていたのは、少なからず藤木家の権威を感じていたからかもしれない。
「確かに、ウチのマンションとそんなに変わんねえよな。住み心地はどうよ、里桜?」
「もちろん、今大智と一緒に暮らしてるあのマンションの方が断然いいよ。やっぱり、好きな人と一緒っていうのが強みかな。もちろん、間取り的にもそうなんだけどね」
「だろうだろう。今オレの仕事部屋にしてるあの部屋もな、いずれは片付けてちゃんと使えるようにするつもりだから。将来的に子供部屋とか」
大智はあたしのお腹に目を遣りながら言う。〝子供部屋〟とかサラリと言えてしまうところに、あたしや生まれてくるこの子との将来を真剣に考えてくれているんだなぁと嬉しくなる。
――持っていたカギでオートロックを抜け、最上階までエレベーターで上がり、ペントハウスにあたる元住まいのドアノブを回してみると。
「……開いてる。あの人、いるみたい」
「インターフォン、鳴らしてみるか?」
「いいよもう。開いてるなら入っちゃおう?」
ただ置いてある荷物を引き取りに来ただけだし、別にコソコソする必要もない。堂々と上がり込めばいいのだ。
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「そう? ――おジャマしまーす」
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彼はあたしの姿を認めて一瞬嬉しそうな顔をしたけれど、大智も一緒なのが分かるとガッカリしたように言った。
「……里桜、戻ってきたわけじゃなさそうだな」
「ええ。荷物を引き取りに来ただけです。すぐに引き揚げますから。だってもう、あたしは他人でしょう?」
「離婚届、出してきたらしいって飯島弁護士から聞いてますけど」
あたしのセリフの後を引き取り、大智が畳みかける。
「……ああ、もう受理されたから離婚は成立してるよ。でも正直、俺はまだ里桜に未練がある。本当に君のことを愛していたから。信じてはもらえないだろうが」
「ええ、信じてませんよ。本当にあたしのことを愛してたって言うなら、どうしてあんなことができたんですか? あれだけ裏切っておいてまだ言うの? そういうところが信用できないっていうのよ、このクズ野郎!」
夫婦だった時には言えなかったことを、これが最後の機会だから思いっきりぶちまけた。
この人は結局、誰の気持ちも分かろうとしていない。あたしの気持ちも、ナルミさんの気持ちも。こんな人を愛した彼女がかわいそうで仕方がない。
「あの時、あたし言いましたよね? あなたのこと愛してなんかいない、愛したこともないって。あなたの気持ちなんか知ったこっちゃないわ。あたしや両親にあれだけひどいことをしておいて、『愛してた』だぁ!? ふざけんじゃないっつうの!」
言っているうちに怒りが爆発して、だんだん言葉づかいが荒っぽくなってきた。でもいいか、これでさよならだし。
大智は向こうから手を出さない限り加勢しないというスタンスのようで、あたしの言うに任せていて止めもしない。
ただ、両手の拳だけはグッと握りしめていて、「コイツに手を出したらタダじゃ済まねえぞ、この野郎」と無言の牽制というか威嚇をしているのが見ていて分かる。
「これ以上、あたしの心を引っ掻き回さないで。それから、この人やあたしの大事な人たちに何かしたら、あなたやご両親は生きて地獄を見ることになるから。飯島先生の怖さはあなたがいちばんよく分かってるでしょ?」
どのみち、法の裁きを受けたらこの人たちはあたしたちに何もできなくなる。藤木家の権威はもう地に落ちたも同然だから。
「さよなら、正樹さん。せいぜい親子三人で法の裁きを受けなさい。――じゃあ大智、さっさと始めよう」
あたしは大智を促し、リビングから寝室へ移動しようとした。大智は最後に、正樹さんに捨てゼリフを吐く。
「あんたのいちばんの失敗は、里桜を甘く見てたことだな。アイツを敵に回したこと、せいぜい後悔すればいい」
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