デブの俺、異世界行ったらイケメン最強!

ゆぃ♫

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餃子

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帰宅後、カバンに向かって例の言葉を唱えてみた。
口に出さなくてもいいらしいけど……やっぱり少し恥ずかしい。
それでも、胸の奥がくすぐったくて、思わずにやけてしまう。
――「時間停止マジックバック」
……何も起きない。
見た目は、いつも使っているカバンのままだ。
拍子抜けしたような、でも「そう簡単には分からないよね」と納得したような、微妙な気持ち。
一応、中をのぞいてみる……?
うん、変わったところは見当たらない。
でも、せっかくだし何か入れてみよう。
目の前にあったパンを、半信半疑で放り込む。
その瞬間、頭の中に「パン1」と自然に浮かんだ。
……え?
思わずカバンを見つめ直す。
これは……ちゃんと機能してる、ってことだよね。
胸の奥が、じんわり温かくなる。
派手じゃないけど、確かな手応え。
これ、使いこなせたら相当便利かも。
今日はニラと生姜を手に入れた。
だから夕飯は餃子にしようと決めている。
問題は野菜だ。
ケールを取りに行くことにした。
キャベツか白菜があれば最高だったけど……まあ、ないものは仕方ない。
この世界では「あるもので工夫する」のが基本だ。
「ちょっと出かけてくるねー。すぐ戻るー」
「もう夜になるから危ないよ~!」
母さんの声に、「はーい」と返事をしながらも、内心では少し焦っていた。
腰のナイフを確認して、駆け出す。
何も起きなければいいけど……用心に越したことはない。
ケールは、前にピーマンを見つけた場所から左奥。
記憶を頼りに進む。
日が沈む前に終わらせたい。
そう思いながら、ざっくり掴み取ってクリーンをかける。
「これくらいでいいかな」
カバンに入れようとした、その時――
視界の端に、赤いものがちらっと見えた。
……え?
少し奥に進んでみると、そこにあったのは、りんごの木だった。
思わず息をのむ。
小さい木だけど、ちゃんと赤い実がなっている。
「……やった」
声に出さないように、でも心の中でガッツポーズ。
迷う理由なんてない。
適当に、でも落とさないようにカバンに放り込む。
時間停止マジックバック、ありがとう。
今なら、心からそう思える。
帰宅後。
りんごを洗いながら、ちょっとだけ未来を想像する。
三日後、どんな味になるだろう。
瓶にりんごを詰め、水を注ぎ、冷蔵庫へ。
「父さん、この瓶触らないでね」
大事なものを守るみたいな気持ちで言うと、
父さんは軽く手を上げただけで、忙しそうにしていた。
……ちゃんと伝わった、かな。
さて、今日のメイン――餃子作りだ。
手に入れた小麦粉を鑑定しておく。
この国では、麦の種類が違うだけで強力粉・薄力粉・中力粉の区別はされていない。
みんな気にしていないし、売る段階で混ざっていることも多い。
今日は中力粉を使う。
熱湯を沸かし、中力粉に塩を二つまみ入れて軽く混ぜる。
そこへ熱湯を加え、まとめるように混ぜ、濡れタオルをかけて寝かせる。
その間にタネ作り。
ケール、ニラ、魔獣肉、生姜をみじん切りにし、
醤油、塩胡椒、鶏ガラで味付け。
粘りが出るまでしっかり混ぜる。
生地を適当な大きさに分けて丸く伸ばす。
薄皮より、少し厚めの餃子が好きなので、あえて分厚めに。
ティースプーン一杯ほどのタネを乗せて折りたたみ、フォークで縁を押しつぶして留める。
周りに片栗粉をまぶしておけば、くっつかなくていい感じだ。
半分は焼き餃子に。
残り半分は鶏ガラスープへ。塩、醤油、生姜、ニンニクを追加して味見。
……うん、美味しい。
デザートは、りんごをみじん切りにして甘味で炊き、ねっとりさせておく。
それを餃子の皮の残りで包み、油を多めに入れたフライパンで揚げ焼きに。
餃子、スープ、デザート完成。
あとは硬いパンと一緒にいただく。
「うま~」
「また変わったもの作ったな」
父さんが近づいてきて、りんごの包みに手を伸ばす。
「だめ!それは後!」
反射的に叫ぶと、父さんは驚いてすぐ手を引っ込め、降参のポーズ。
取り分けておいた餃子と、鍋のスープを差し出す。
フン、と鼻を鳴らしながら食べ続けている。
硬いパンも、スープに浸すと美味しい。
満足して天井を見上げ、「ふー」と一息。
「……そろそろいいか? これ、どうやって作るんだ?」
小麦粉の話から、タネの説明まで一通り話し、
収穫してきたケールの残りを渡した。
鶏ガラもなくなりそうだし、また作らないと。
トマトケチャップも欲しい。
塩が高くて、あまり使えないのも悩みだ。
空間魔法で、海や街まで簡単に行けたらいいのになぁ。
街まで五時間、海まで八時間くらいか……。
また山に、いろいろ取りに行かないとな。
そう考えながら、ウトウト――。
真っ白な世界。
「よく来たな。楽しくやっとるか?」
「あ、こんにちは。毎日いろいろ考えるのが楽しいです」
作ったものの話や、これから作りたいものの話をしながら、みかんを食べる。
チョコレート食べたいな、なんて話もしつつ。
「海の水が水道から出たり、街や海まで一瞬で行けないかなって考えてまして」
「空間魔法と付与じゃな。
空間魔法は、行ったことのある場所だけじゃが、場所をイメージして魔力を込めれば、一瞬で行ける。
付与は、鮮明にイメージしながら手のひらで触れ、魔力を込めると魔法陣を作れるようにしておこう。
他人が作った魔法陣に触れたら、内容が分かるようにもな」
「ゆっくり休みなさい」
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