秘密基地は大迷宮〈ダンジョン〉に

カイエ

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一章「秘密基地をダンジョンに」

#16

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「じゃ、出発!」

 ケンゴが先頭に立って、奥へと向かう。
 せっかく張り切ってるみたいだし、今日はダイチに着いていこう。

「今日は今まで行ったことがない方向へ行くぜ」

 みんなでケンゴの後ろを付いて行く。
 あっという間に暗くなるので、懐中電灯を付ける。
 ん? いつもより明るいな……と思ったら、アリサのヘルメットにも懐中電灯が付いていて、それが奥を照らしていた。
 本物の冒険家みたいだな……。

 ずんずん奥に向かっていくダイチに、アリサが不安そうに

「ケンゴあんた、そんなどんどん奥に行って大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫、任せとけって」

 ケンゴは笑って、更に奥へ向かう。
 あ、ここ多分初めて通る道だ。

「この辺になると、もうスマホの電源入らないんだよな」

 ケンゴがスマホを取り出して、こちらに向ける。

「バッテリー切れなんじゃないの?」
「いや、まだけっこう残ってるはず。ダンジョンから出たら復活するから」

 それを聞いたアリサは、サッと背中から先ほどの機械を取り出してチェックする。

「……放射能の問題はナシ……と」

 だから怖いって。
 あと、多分その機械も動いてないからね。

 しばらく行くと、いつか見たような八つの道が合流する、広い場所に出た。

「おお、こんな場所に出たぞ」
「本当に、何のために作られた場所なのかな」
「どっち行く?」
「そうだなぁ……じゃあお前ら、好きな道選べ」
「「えっ」」

 女子二人が驚いて声を上げる。

「初めてのダンジョンだし、道決めさせてやるよ」

 ケンゴがそう言うと、アリサが「うーん、あたしくじ運悪いんだよね」と言って、

「カナ、任せる」

 とカナちゃんに押し付けた。
 カナちゃんはう~んと一瞬悩んで、「一番左!」と一つの通路を指さした。

「レッツゴー」

 ぼくたちはぞろぞろをそちらに向かう。

 しばらく進むと、いつものようにフッと懐中電灯が消えた。

「きゃっ?!」

 女子の甲高い小さな悲鳴が聞こえる。

「大丈夫」
 ケンゴの気楽そうな声が響いて、安心したのか、女子二人がパニックを起こすことはなかった。

「ほ、本当に懐中電灯が切れちゃうのね……電池切れ、ってわけじゃないのよね?」
「うん、この懐中電灯、めちゃくちゃ電池持つんだよ。災害時用つって、家にあったやつ持ってきた」
「あんたとんでもないことするわね……」
「まぁ、それはいいとして、ほら、見てみろよ」

 しばらくして、目が慣れてくると、先ほど通ってきた道に、薄っすらと光が見えてくる。
 懐中電灯と比べると、本当にほのかな灯りだけど、道標には十分だ。

「ん、今日はいつもより明るいな」
「人数が多いからじゃない?」

 確かにいつもよりも蛍光石の光り方が強い気がする。
 おかげで薄ぼんやりとみんなの位置がわかる。

「戻ろうぜ」

 そういってケンゴが先に進む。
 ふっと右腕が重くなったのでそちらを見てみると、カナちゃんがぼくの袖をつまんでいた。
 いやっふぅ! 約得だぜっ!!

 先ほどの広場に出ると、戻るべき道に薄っすらと光りが見える。

「あっちだ」

 ケンゴがそちらに歩いていって、得意げに振り返る。

「この石さ、触れると光りが強くなるんだよ」

 ケイゴがそう言って、蛍光石に手を触れようとする。
 その時、アリサが悲鳴を上げた。

「ケイゴ!! 後ろッ!!」
「え?!」

 こちらを向いているケイゴには見えなかったようだが、そこには「何か」が蠢いていた。

「な、何だ?!」

 ケイゴが驚いて後ずさる。
 このままだとヤバイ!

「ケイゴ! 下がれ!」

 オレは飛び出して、ケイゴの襟首を掴んで後ろに引き倒した。
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