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一章「秘密基地をダンジョンに」
#19 閑話1 - 健吾
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オレの名前は奥本 健吾。
秘密基地グループのリーダーだ。
仲間には「ケンゴ」と呼ばれている。
オレの特技は剣道。
幼稚園時代、テレビで見た勇者に憧れて、両親にしつこくお願いして道場に通わせてもらうようになった。
うちの両親は勉強に厳しくて、いつもガミガミ叱ってばかりいる。
そんな風に叱られるのが嫌で、ぼくは何でも途中で放り出して逃げ出すのが癖になっていた。
だから「道場に通いたい」と言った時も、どうせ長続きしないとなかなか相手にしてもらえなかった。
オレは意地になって剣道を頑張った。
師範が「才能がある」と褒めてくれたので、ますますオレは頑張った。
きっと大人になったら剣士になって、世界中でモンスターを倒して回るんだと決めていた。
そのうちに試合にも出るようになって、賞状をもらって帰ると両親も喜んで、褒めてくれた。
オレは強くならなきゃいけないんだ。
なぜって幼稚園の頃からの親友、ダイチとコータがすごく弱いからだ。
弱いというか……あの二人は本を読んだり喋ったりするのが好きで、体を鍛えるのが好きじゃないみたいだ。
その分オレよりもずっと頭がいい。
だからオレは難しいことはアイツらにまかせて、そのかわりにオレがアイツらを守ってやることに決めた。
だって「群れ」で一番強いのがリーダーだろ?
一番強いオレがリーダーなんだから、アイツらを守るのは当たり前だ。
でも、三年生くらいになるとだんだん剣道も飽きてきた。
親がうるさいので勉強は落ちこぼれない程度には頑張って、あとは練習よりも遊ぶ方に忙しくなった。
どうせ学校でぼくより強い奴はいない。
だからみんなと遊ぶことを優先したって何も問題はない。
* * *
四年生に上がって、幼稚園の頃から知っている一倉と、その友達の水無月と同じクラスになった。
この二人は危ない。
頭が良くて、気がついたら言うことを聞かされていたりする。
何の恨みがあるのかいつもしつこく絡んでくる水無月も鬱陶しいけれど、一倉の得体の知れない感じがとても恐ろしい……。
ダイチが一倉のことを好きみたいだけど、一体何がいいのかさっぱりわからない。
女子なんて服が汚れるだけで泣くし、ちょっと叩いたら先生に言いつけに行くし、そのくせ偉そうで、オレは大っ嫌いだ。
でも、ダイチとコータだけでなく水無月と一倉も教室でつるむことが増えた。
オレたちが住んでいる街は田舎で、静かで退屈な場所だ。
だから、たいてい裏山か海で遊ぶ。
ダイチのうちで遊ぶ時もあるけど、ダイチの妹がやたらオレのことを気に入って「ケンゴ君」「ケンゴ君」と付き纏ってくるので困る。
まぁ、水無月や一倉と違って、ダイチの妹は可愛い。
でも、海にや裏山に連れていくのはちょっと困る。
七月のある日、オレはアニメ『向こう隣のお化け屋敷』を見た。
近所の空き地にいきなり大きなお化け屋敷が出現する話だ。
好奇心旺盛な主人公たちは、そこにこっそり忍び込んで秘密基地にするんだけど、それをダイチに説明しようとしたらえらく叱られた。
すっごく面白いから、絶対見たほうがいいと思う。
オレはダイチとコータと一緒に秘密基地を作ることにした。
そうしたら、自分でも思ってもみなかった、とんでもない秘密基地を手に入れてしまった!
誰も入ってこれない、ぼくたちだけの巨大な洞窟!
これ以上すごい秘密基地なんて世界中のどこを探してもないと思う。
正直『向こう隣のお化け屋敷』の秘密基地よりも凄いと思う。
ところがせっかく秘密基地を手に入れたその翌日、オレたちは秘密基地の奥……ダンジョンで迷ってしまった。
オレはショックだった。
なぜって、迷った原因は、リーダーであるぼくにあるからだ。
コータに「迷わないように」と渡された紐を、持ってくるのを忘れたからだ。
コータは泣き出すし、真っ暗で何も見えないし、オレも泣きたかった。
でも、オレはリーダーだ。だから、こいつらを守ってやる義務がある。
もしモンスターが現れても、絶対に守ってやるからな。
そう思っていたのに。
ダイチが急に大人みたいなキャラになって、あっという間にオレたちをダンジョンの外まで連れ出してくれた。
ダイチ、すげぇ。
オレは、オレの親友がこんな凄いやつだと思っていなかった。
正直、憧れた。
ものすごく誇らしい気持ちになって――実は、ものすごく悔しかった。
明るいところで見たダイチは、いつもどおりのちょっと間抜けな顔をしていて、自分でも何が起きたかわかっていないようだった。
オレはダイチに嫉妬していることを知られたくなくて、だからその気持を隠して思いっきりダイチを褒め称えた。
ついでにやっぱり悔しかったので、ダイチの真似をしてダイチを困らせていたら、コータもそれに食いついてきて、二人でダイチを困らせてみせた。
ちょっとだけ、気持ちが楽になった。
* * *
その日、家に帰って、ダンジョンのことや、ダイチのことを考えた。
強くなりたい。
そう思った。
次の日から朝早起きして、昔みたいに竹刀の素振りをすることにした。
ちょっとサボり気味だったから、切っ先がブレるしキレがない。
一本一本しっかりと声を出して丁寧に竹刀を振っていくうちに、オレはだんだん気持ちが楽になっていくことに気づいた。
そうだよ、何をくよくよしてるんだ。
師範だって言ってたじゃないか。
『負けて悔しければ強くなって勝てばいい。それでも勝てなければ勝てるまで強くなればいい』
ぼくは朝からしっかり体を動かして明るい気持ちで学校へ向かう。
だってアイツらは最高だ。
それに、オレはアイツらのリーダーなんだから!
* * *
オレは、それからも何度も「大人ダイチ」に救われた。
オレがリーダーなのに、なんてオレは頼りないんだろう。
「大人ダイチ」に憧れるたびに同じだけ悔しくなって、悔しい思いをした分、オレは竹刀を振るようになった。
朝だけでなく、夜、風呂に入る前にも竹刀を振る。
だんだん体の動かし方を思い出してきて、思ったように竹刀を振れるようになってきた。
ヒュッ、ヒュッ、と風切り音が鋭くなっていくのを実感する。
オレは、まだまだ強くなれる。
* * *
リーダーであるオレの、ちょっとしたミスで――女子二人に秘密基地のことがバレてしまった。
ダイチとコータに川に落とされたけれど、ダイチは一倉のことが好きだから実は喜んでいるようだった。
コータは……うん、あいつにはあまり逆らわないほうがいいと思う。
女子二人でダンジョンに潜ることになり、オレはリーダーらしいところをみんなに見せることにした。
先頭に立ち、新しい道を探しながらも、実はしっかり道を覚えていた。
オレ、記憶力はいいんだぜ?
だんだん蛍光石の読み方も分かってきたような気がする。
そうしたら、なんとダンジョンに潜り始めて初めてモンスターと遭遇してしまった!
ばかでっかい蜘蛛で……めちゃくちゃ気持ち悪い!
背中を向けていたオレは実は危なかったらしく、またダイチに助けてもらってしまった。
いつも心に思い描いていた、剣でモンスターを斃して仲間を助け出す――そんな光景を、ぼくではなくダイチが作り出していた。
オレは、リーダー失格だ。
モンスターの恐ろしさよりも、オレは自分の無力さが怖くなった。
なぜ、あそこに立っていたのが、オレじゃなくダイチだったんだろう。
本当なら、オレがモンスターを斃してみんなを助けるはずだったのに。
何のために毎日竹刀を振ってきたんだろう。
落ち込んでいたら、ダイチに「この先にモンスターがいる」と言われた。
ダイチは、他の誰かじゃなく――このオレに「倒してみるか」と、そう言った。
オレは、自分の足がすくむのがわかった。
あんな、大きさが犬くらいもある蜘蛛を、オレなんかが倒せるのだろうか。
いざとなれば、ダイチが助けてくれるだろうけど……。
そこまで考えて、オレは首を勢い良く振って、その考えを追い出す。
「やらせてくれ」
そう言って、モンスターに対峙する。
そうだ。オレはリーダーだ。
こいつらを守ってやらないといけないんだ!
手に持っているのは剣どころか竹刀ですらない、ただの木の枝だ。
中段に構えて、まだ見ぬ敵を見据えると、スッと頭が覚めていくのがわかった。
――やれる。
そう思った。
そして、モンスターが姿を現す。
やっぱり、めちゃくちゃ気持ち悪い。
それに、大きさの割にすばしっこそうだ。
ダイチが「雑魚だから大丈夫だ」とか言っているけれど、ほとんど耳に入っていなかった。
オレは、敵に集中していた。
そのうち、モンスターの目が赤くなり、ダイチが「今だ!」と叫んだ。
一瞬、突進しそうになる――だが、まだだ!今踏み込んでも、敵の位置が低すぎて、一番力が乗った状態で倒せない!
そして、モンスターがグッと体を低くし……飛び上がろうとしているのがわかった!
今ッ!
後ろで「ケンゴ! 行けぇ!」と誰かの声がした気がしたが、それも耳に入らなかった。
ただ、敵を倒す! そのことで、目が、耳が、呼吸が、頭が、体中の全ての筋肉が一つになって、
「ッ面ーーーーーーーーーッツ!」
オレはとても冷静に、モンスターをあっさり一撃で倒すことに成功した。
グシャリという手応えが手に伝わり、オレは基本どおりに足さばきして、すぐにモンスターに向き直る。
* * *
――ずっと見たかった光景が、そこにはあった。
そこには、モンスターの脅威が去って、飛び上がって喜んでいる仲間たちがいた。
オレは、その光景を目に焼き付けようと、残心を解くことなく見つめ続けた。
心の中の認めたくなかった暗い感情は綺麗さっぱり消えてなくなっていた。
とても心が軽くて、幸せな気持ちで静かに仲間たちを見つめていた。
ダイチが消えていくモンスターへと手を伸ばし、何かを拾ってオレに放り投げた。
慌ててそれを受け取る。
左手の剣は絶対に手放せないので、みっともない受け取り方になってしまったが。
「やったな」
ダイチがオレに笑いかける。
「と、当然だ!」
当たり前だ!オレはリーダーだぜ!
オレはガッツポーズを取って、思いっきり不敵に笑い返した。
秘密基地グループのリーダーだ。
仲間には「ケンゴ」と呼ばれている。
オレの特技は剣道。
幼稚園時代、テレビで見た勇者に憧れて、両親にしつこくお願いして道場に通わせてもらうようになった。
うちの両親は勉強に厳しくて、いつもガミガミ叱ってばかりいる。
そんな風に叱られるのが嫌で、ぼくは何でも途中で放り出して逃げ出すのが癖になっていた。
だから「道場に通いたい」と言った時も、どうせ長続きしないとなかなか相手にしてもらえなかった。
オレは意地になって剣道を頑張った。
師範が「才能がある」と褒めてくれたので、ますますオレは頑張った。
きっと大人になったら剣士になって、世界中でモンスターを倒して回るんだと決めていた。
そのうちに試合にも出るようになって、賞状をもらって帰ると両親も喜んで、褒めてくれた。
オレは強くならなきゃいけないんだ。
なぜって幼稚園の頃からの親友、ダイチとコータがすごく弱いからだ。
弱いというか……あの二人は本を読んだり喋ったりするのが好きで、体を鍛えるのが好きじゃないみたいだ。
その分オレよりもずっと頭がいい。
だからオレは難しいことはアイツらにまかせて、そのかわりにオレがアイツらを守ってやることに決めた。
だって「群れ」で一番強いのがリーダーだろ?
一番強いオレがリーダーなんだから、アイツらを守るのは当たり前だ。
でも、三年生くらいになるとだんだん剣道も飽きてきた。
親がうるさいので勉強は落ちこぼれない程度には頑張って、あとは練習よりも遊ぶ方に忙しくなった。
どうせ学校でぼくより強い奴はいない。
だからみんなと遊ぶことを優先したって何も問題はない。
* * *
四年生に上がって、幼稚園の頃から知っている一倉と、その友達の水無月と同じクラスになった。
この二人は危ない。
頭が良くて、気がついたら言うことを聞かされていたりする。
何の恨みがあるのかいつもしつこく絡んでくる水無月も鬱陶しいけれど、一倉の得体の知れない感じがとても恐ろしい……。
ダイチが一倉のことを好きみたいだけど、一体何がいいのかさっぱりわからない。
女子なんて服が汚れるだけで泣くし、ちょっと叩いたら先生に言いつけに行くし、そのくせ偉そうで、オレは大っ嫌いだ。
でも、ダイチとコータだけでなく水無月と一倉も教室でつるむことが増えた。
オレたちが住んでいる街は田舎で、静かで退屈な場所だ。
だから、たいてい裏山か海で遊ぶ。
ダイチのうちで遊ぶ時もあるけど、ダイチの妹がやたらオレのことを気に入って「ケンゴ君」「ケンゴ君」と付き纏ってくるので困る。
まぁ、水無月や一倉と違って、ダイチの妹は可愛い。
でも、海にや裏山に連れていくのはちょっと困る。
七月のある日、オレはアニメ『向こう隣のお化け屋敷』を見た。
近所の空き地にいきなり大きなお化け屋敷が出現する話だ。
好奇心旺盛な主人公たちは、そこにこっそり忍び込んで秘密基地にするんだけど、それをダイチに説明しようとしたらえらく叱られた。
すっごく面白いから、絶対見たほうがいいと思う。
オレはダイチとコータと一緒に秘密基地を作ることにした。
そうしたら、自分でも思ってもみなかった、とんでもない秘密基地を手に入れてしまった!
誰も入ってこれない、ぼくたちだけの巨大な洞窟!
これ以上すごい秘密基地なんて世界中のどこを探してもないと思う。
正直『向こう隣のお化け屋敷』の秘密基地よりも凄いと思う。
ところがせっかく秘密基地を手に入れたその翌日、オレたちは秘密基地の奥……ダンジョンで迷ってしまった。
オレはショックだった。
なぜって、迷った原因は、リーダーであるぼくにあるからだ。
コータに「迷わないように」と渡された紐を、持ってくるのを忘れたからだ。
コータは泣き出すし、真っ暗で何も見えないし、オレも泣きたかった。
でも、オレはリーダーだ。だから、こいつらを守ってやる義務がある。
もしモンスターが現れても、絶対に守ってやるからな。
そう思っていたのに。
ダイチが急に大人みたいなキャラになって、あっという間にオレたちをダンジョンの外まで連れ出してくれた。
ダイチ、すげぇ。
オレは、オレの親友がこんな凄いやつだと思っていなかった。
正直、憧れた。
ものすごく誇らしい気持ちになって――実は、ものすごく悔しかった。
明るいところで見たダイチは、いつもどおりのちょっと間抜けな顔をしていて、自分でも何が起きたかわかっていないようだった。
オレはダイチに嫉妬していることを知られたくなくて、だからその気持を隠して思いっきりダイチを褒め称えた。
ついでにやっぱり悔しかったので、ダイチの真似をしてダイチを困らせていたら、コータもそれに食いついてきて、二人でダイチを困らせてみせた。
ちょっとだけ、気持ちが楽になった。
* * *
その日、家に帰って、ダンジョンのことや、ダイチのことを考えた。
強くなりたい。
そう思った。
次の日から朝早起きして、昔みたいに竹刀の素振りをすることにした。
ちょっとサボり気味だったから、切っ先がブレるしキレがない。
一本一本しっかりと声を出して丁寧に竹刀を振っていくうちに、オレはだんだん気持ちが楽になっていくことに気づいた。
そうだよ、何をくよくよしてるんだ。
師範だって言ってたじゃないか。
『負けて悔しければ強くなって勝てばいい。それでも勝てなければ勝てるまで強くなればいい』
ぼくは朝からしっかり体を動かして明るい気持ちで学校へ向かう。
だってアイツらは最高だ。
それに、オレはアイツらのリーダーなんだから!
* * *
オレは、それからも何度も「大人ダイチ」に救われた。
オレがリーダーなのに、なんてオレは頼りないんだろう。
「大人ダイチ」に憧れるたびに同じだけ悔しくなって、悔しい思いをした分、オレは竹刀を振るようになった。
朝だけでなく、夜、風呂に入る前にも竹刀を振る。
だんだん体の動かし方を思い出してきて、思ったように竹刀を振れるようになってきた。
ヒュッ、ヒュッ、と風切り音が鋭くなっていくのを実感する。
オレは、まだまだ強くなれる。
* * *
リーダーであるオレの、ちょっとしたミスで――女子二人に秘密基地のことがバレてしまった。
ダイチとコータに川に落とされたけれど、ダイチは一倉のことが好きだから実は喜んでいるようだった。
コータは……うん、あいつにはあまり逆らわないほうがいいと思う。
女子二人でダンジョンに潜ることになり、オレはリーダーらしいところをみんなに見せることにした。
先頭に立ち、新しい道を探しながらも、実はしっかり道を覚えていた。
オレ、記憶力はいいんだぜ?
だんだん蛍光石の読み方も分かってきたような気がする。
そうしたら、なんとダンジョンに潜り始めて初めてモンスターと遭遇してしまった!
ばかでっかい蜘蛛で……めちゃくちゃ気持ち悪い!
背中を向けていたオレは実は危なかったらしく、またダイチに助けてもらってしまった。
いつも心に思い描いていた、剣でモンスターを斃して仲間を助け出す――そんな光景を、ぼくではなくダイチが作り出していた。
オレは、リーダー失格だ。
モンスターの恐ろしさよりも、オレは自分の無力さが怖くなった。
なぜ、あそこに立っていたのが、オレじゃなくダイチだったんだろう。
本当なら、オレがモンスターを斃してみんなを助けるはずだったのに。
何のために毎日竹刀を振ってきたんだろう。
落ち込んでいたら、ダイチに「この先にモンスターがいる」と言われた。
ダイチは、他の誰かじゃなく――このオレに「倒してみるか」と、そう言った。
オレは、自分の足がすくむのがわかった。
あんな、大きさが犬くらいもある蜘蛛を、オレなんかが倒せるのだろうか。
いざとなれば、ダイチが助けてくれるだろうけど……。
そこまで考えて、オレは首を勢い良く振って、その考えを追い出す。
「やらせてくれ」
そう言って、モンスターに対峙する。
そうだ。オレはリーダーだ。
こいつらを守ってやらないといけないんだ!
手に持っているのは剣どころか竹刀ですらない、ただの木の枝だ。
中段に構えて、まだ見ぬ敵を見据えると、スッと頭が覚めていくのがわかった。
――やれる。
そう思った。
そして、モンスターが姿を現す。
やっぱり、めちゃくちゃ気持ち悪い。
それに、大きさの割にすばしっこそうだ。
ダイチが「雑魚だから大丈夫だ」とか言っているけれど、ほとんど耳に入っていなかった。
オレは、敵に集中していた。
そのうち、モンスターの目が赤くなり、ダイチが「今だ!」と叫んだ。
一瞬、突進しそうになる――だが、まだだ!今踏み込んでも、敵の位置が低すぎて、一番力が乗った状態で倒せない!
そして、モンスターがグッと体を低くし……飛び上がろうとしているのがわかった!
今ッ!
後ろで「ケンゴ! 行けぇ!」と誰かの声がした気がしたが、それも耳に入らなかった。
ただ、敵を倒す! そのことで、目が、耳が、呼吸が、頭が、体中の全ての筋肉が一つになって、
「ッ面ーーーーーーーーーッツ!」
オレはとても冷静に、モンスターをあっさり一撃で倒すことに成功した。
グシャリという手応えが手に伝わり、オレは基本どおりに足さばきして、すぐにモンスターに向き直る。
* * *
――ずっと見たかった光景が、そこにはあった。
そこには、モンスターの脅威が去って、飛び上がって喜んでいる仲間たちがいた。
オレは、その光景を目に焼き付けようと、残心を解くことなく見つめ続けた。
心の中の認めたくなかった暗い感情は綺麗さっぱり消えてなくなっていた。
とても心が軽くて、幸せな気持ちで静かに仲間たちを見つめていた。
ダイチが消えていくモンスターへと手を伸ばし、何かを拾ってオレに放り投げた。
慌ててそれを受け取る。
左手の剣は絶対に手放せないので、みっともない受け取り方になってしまったが。
「やったな」
ダイチがオレに笑いかける。
「と、当然だ!」
当たり前だ!オレはリーダーだぜ!
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