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二章「魔法」
#1
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ぼくたちはこの日もダンジョンに潜り、モンスターを倒して回った。
といっても、モンスターを余裕で倒して回っているのはケンゴとアリサだけで、コータとカナちゃんはからっきしだ。
ぼくはといえば、思い切りのない性格のせいで、成績は今ひとつ。
大人ダイチとしてはぶっちぎりの戦績なんだけど、それはカウントに入れてない。
だって、なんかズルい気がするよね。
今日も体感時間で三~四時間くらいはダンジョンに潜った。
少し疲れてきたので、秘密基地へ戻って皆で休憩だ。
まだモンスター狩りは5回目だけど、随分慣れたもんだね。
「じゃ、戦利品を確認しようぜ」
リュックサックから魔石を取り出す。
どれも、大きめのキャンディくらいの小さな石だ。
色はほとんどが赤で、青い石が二つだけ混じっている。
「これ、色とか関係あるのかな」
「なんとなく、ファンタジー的には、赤は火、青は水みたいな力がありそうだよね」
コータとカナちゃんが魔石を光に透かしたりしながら話し合う。
こらコータ、カナちゃんから離れなさい。
「大人ダイチに訊けばわかるんだけどな」
「危ない時しか出てこないからね」
「それと比べて普段のダイチは……」
「な、なんだよ」
ケンゴ、アリサ、コータが「はぁ」とため息をつく。
ポンと肩に手をおいて慰めてくれるカナちゃん。天使か。
「ぼくだって意識してああなれるわけじゃないんで、仕方ないでしょ」
口をとがらせて文句を言う。
「でもさぁ、魔石だけ集まっても魔法を使えないんじゃしょうがないじゃん」
そうなのだ。
今のところ、赤い石を握って「るーめん」と呪文を唱えて、光の玉を作る魔法しかぼくたちは知らない。
それに、あのときのカナちゃんの1回だけが成功で、他のみんなには使えなかった。
何かルールがあるらしい。
ちなみに、色々試してはみた。
青い石を握って「ウォーター」と唱えてみたり、赤い石を握って「ファイヤー」と唱えてみたり。
でも、何も起きなかった。
「ひょっとしたら、あの1回がたまたまなのでは」という心の声は、みんな胸の奥にしまっている。
「まぁわかんねぇけどさ、とりあえず石は『宝箱』(という名の衣装ケース)にしまっとく」
ケンゴがそう言って石をしまう。
魔法が使えないと石を集める意味がない……と思うかもしれない。
しかし実際はそうはならなかった。
何よりも、モンスターを倒すという行為そのもののスリルをぼくたちは楽しんでいた。
カナちゃんも積極的に戦いに参加はしないけれど、ついてくるのを嫌がるということはなかった。
(大人ダイチも「遊び場」って言ってたしね)
そんなことを考えながら、今日のダンジョン探索を終わりにした。
▽
その日ぼくはちょっと思いついたことがあって、一度家に帰って倉庫からあるものを掘り出してからダンジョンに向かうことにした。
探し当てたのは、キャンプで使うオイルランプだ。
火をつけるタイプのランプで、キャンプ好きの父親の影響で、ちゃんと使い方もわかっている。
ただ、勝手に使うのは禁止されているので、バレたら叱られるだろう。
だから、母親が見てないうちに、こっそり持ち出した、つもりだったんだけど。
「ねー、どこいくの?ケンゴくんは?」
妹の彩花〈あやか〉に捕まってしまった。
「ケンゴくんとこ行くの?」
こいつ、ケンゴのことが好きなんだよな……。
「ケンゴは、今日は来ないよ」
「じゃあ、それ、どこ持っていくの?」
ランプを指差す彩花……言いつけられるとヤバイな。
「ああ、どこにも持ってかないよ。倉庫から出してみただけ」
「なんで出すの?」
「うるさいなぁ……」
邪険にすると泣くので、とりあえず相手をする。
「ランプは、ほら、見た目が格好いいだろ?えーっと……だから……絵を書いてみようかなって」
「!!彩花も書く!」
「あ、いやー、絵を描くのは、明日とかかな。今日は出すだけで……」
うん、ぼくは嘘が下手すぎる。
自分でもあきれるほかない。
「どっか持っていくの?」
「……あー、パパに言うなよ?ちょっと絵を描くだけだから、危なくはないし」
「彩花も行く!」
「あー、だから、連れていけねんだってば……」
「彩花も行く!彩花も行く!」
面倒くせぇ。
「じゃあ彩花、今日留守番してランプのことをパパとママに言わないでいられるなら、今度ケンゴとアリサ連れてくるから」
「ホント!?」
「マジマジ。黙っていられるか?」
「……わかった」
アリサの名前もだしたのは、先日アリサがうちに呼びに来た時に遭遇して、彩花がえらく懐いてしまったからだ。
アリサ、ぼくらと一緒にいるときはいつも怒ってるかからかっているかのどちらかなのに、彩花相手だとえらく優しいんだよな。
ようやくごまかして、ぼくは家を飛び出す。
後ろから彩花の大声が聞こえてくる。
「ランプのこと、言わないからー!」
「でっけぇ声で言ってんじゃねぇよ!?」
無駄な時間を使ってしまった……。
バレないよな?
* * *
「そんなわけで、ランプ持ってきた」
「なるほど、電気がダメなら、火を使ってみようってことね」
「ダイチくん、頭いいー」
女子二人に褒められて、ちょっといい気分だ。
「で、どうする? 今日はダンジョンの日じゃねぇけど、せっかくランプがあるなら一度戻ってみるか?」
「賛成。ぼくも明るいダンジョンを歩いてみたい! みんなは?」
「賛成」
「あたしも」
全員一致で、ダンジョンに潜ることになった。
といっても、モンスターを余裕で倒して回っているのはケンゴとアリサだけで、コータとカナちゃんはからっきしだ。
ぼくはといえば、思い切りのない性格のせいで、成績は今ひとつ。
大人ダイチとしてはぶっちぎりの戦績なんだけど、それはカウントに入れてない。
だって、なんかズルい気がするよね。
今日も体感時間で三~四時間くらいはダンジョンに潜った。
少し疲れてきたので、秘密基地へ戻って皆で休憩だ。
まだモンスター狩りは5回目だけど、随分慣れたもんだね。
「じゃ、戦利品を確認しようぜ」
リュックサックから魔石を取り出す。
どれも、大きめのキャンディくらいの小さな石だ。
色はほとんどが赤で、青い石が二つだけ混じっている。
「これ、色とか関係あるのかな」
「なんとなく、ファンタジー的には、赤は火、青は水みたいな力がありそうだよね」
コータとカナちゃんが魔石を光に透かしたりしながら話し合う。
こらコータ、カナちゃんから離れなさい。
「大人ダイチに訊けばわかるんだけどな」
「危ない時しか出てこないからね」
「それと比べて普段のダイチは……」
「な、なんだよ」
ケンゴ、アリサ、コータが「はぁ」とため息をつく。
ポンと肩に手をおいて慰めてくれるカナちゃん。天使か。
「ぼくだって意識してああなれるわけじゃないんで、仕方ないでしょ」
口をとがらせて文句を言う。
「でもさぁ、魔石だけ集まっても魔法を使えないんじゃしょうがないじゃん」
そうなのだ。
今のところ、赤い石を握って「るーめん」と呪文を唱えて、光の玉を作る魔法しかぼくたちは知らない。
それに、あのときのカナちゃんの1回だけが成功で、他のみんなには使えなかった。
何かルールがあるらしい。
ちなみに、色々試してはみた。
青い石を握って「ウォーター」と唱えてみたり、赤い石を握って「ファイヤー」と唱えてみたり。
でも、何も起きなかった。
「ひょっとしたら、あの1回がたまたまなのでは」という心の声は、みんな胸の奥にしまっている。
「まぁわかんねぇけどさ、とりあえず石は『宝箱』(という名の衣装ケース)にしまっとく」
ケンゴがそう言って石をしまう。
魔法が使えないと石を集める意味がない……と思うかもしれない。
しかし実際はそうはならなかった。
何よりも、モンスターを倒すという行為そのもののスリルをぼくたちは楽しんでいた。
カナちゃんも積極的に戦いに参加はしないけれど、ついてくるのを嫌がるということはなかった。
(大人ダイチも「遊び場」って言ってたしね)
そんなことを考えながら、今日のダンジョン探索を終わりにした。
▽
その日ぼくはちょっと思いついたことがあって、一度家に帰って倉庫からあるものを掘り出してからダンジョンに向かうことにした。
探し当てたのは、キャンプで使うオイルランプだ。
火をつけるタイプのランプで、キャンプ好きの父親の影響で、ちゃんと使い方もわかっている。
ただ、勝手に使うのは禁止されているので、バレたら叱られるだろう。
だから、母親が見てないうちに、こっそり持ち出した、つもりだったんだけど。
「ねー、どこいくの?ケンゴくんは?」
妹の彩花〈あやか〉に捕まってしまった。
「ケンゴくんとこ行くの?」
こいつ、ケンゴのことが好きなんだよな……。
「ケンゴは、今日は来ないよ」
「じゃあ、それ、どこ持っていくの?」
ランプを指差す彩花……言いつけられるとヤバイな。
「ああ、どこにも持ってかないよ。倉庫から出してみただけ」
「なんで出すの?」
「うるさいなぁ……」
邪険にすると泣くので、とりあえず相手をする。
「ランプは、ほら、見た目が格好いいだろ?えーっと……だから……絵を書いてみようかなって」
「!!彩花も書く!」
「あ、いやー、絵を描くのは、明日とかかな。今日は出すだけで……」
うん、ぼくは嘘が下手すぎる。
自分でもあきれるほかない。
「どっか持っていくの?」
「……あー、パパに言うなよ?ちょっと絵を描くだけだから、危なくはないし」
「彩花も行く!」
「あー、だから、連れていけねんだってば……」
「彩花も行く!彩花も行く!」
面倒くせぇ。
「じゃあ彩花、今日留守番してランプのことをパパとママに言わないでいられるなら、今度ケンゴとアリサ連れてくるから」
「ホント!?」
「マジマジ。黙っていられるか?」
「……わかった」
アリサの名前もだしたのは、先日アリサがうちに呼びに来た時に遭遇して、彩花がえらく懐いてしまったからだ。
アリサ、ぼくらと一緒にいるときはいつも怒ってるかからかっているかのどちらかなのに、彩花相手だとえらく優しいんだよな。
ようやくごまかして、ぼくは家を飛び出す。
後ろから彩花の大声が聞こえてくる。
「ランプのこと、言わないからー!」
「でっけぇ声で言ってんじゃねぇよ!?」
無駄な時間を使ってしまった……。
バレないよな?
* * *
「そんなわけで、ランプ持ってきた」
「なるほど、電気がダメなら、火を使ってみようってことね」
「ダイチくん、頭いいー」
女子二人に褒められて、ちょっといい気分だ。
「で、どうする? 今日はダンジョンの日じゃねぇけど、せっかくランプがあるなら一度戻ってみるか?」
「賛成。ぼくも明るいダンジョンを歩いてみたい! みんなは?」
「賛成」
「あたしも」
全員一致で、ダンジョンに潜ることになった。
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