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二章「魔法」
#2
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懐中電灯の電源が入らなくなる辺りまで来てからランプに火を付けた。
使い方はよく知ってる。
ポンプをキュコキュコと何度も動かして固くなってきたら、コックをひねって火を付ける。
シュコー、と心地よい音がして、周りが暖かい色で満たされる。
おお、と歓声が上がった。
「明るいとこんな感じなのか」
「懐中電灯とちがって、全体が明るいから、様子がよくわかるね」
ダンジョンは、丸み帯びたレンガのような形の石を隙間なく積み上げたような姿をしている。
入口付近だと石と石の間から草が生えていたりするけれど、少し潜ると植物の姿は全くなくなる。
……そのかわりモンスターが出るけどね。
「よし、じゃあいつも通り進むか」
ダイチが先頭で進む。
と、すぐにモンスターと遭遇した。
いつもの角コウモリだ。
「幸先いいな! よし、やるぞ」
「おおっ!」
すぐに武器を構えるダイチとアリサ、そしてコータ。
武器はダイチが竹刀、アリサはバット、そしてコータは鉄パイプだ。
ランプを持っているぼくは、今日は武器はもっていない。
カナちゃんは包丁をいつでも鞘からぬけるように握っている。
可愛い。
「来るぞ!」
コウモリがこちらに飛びかかってくる――――って、二匹?!
「二匹いる!」
「おお!? びっくりした!」
「オレは後ろのをやる! 二人は前のを!」
「わかった!」
ケンゴが1匹目をサッと避けて後ろのコウモリに飛びかかる!
「ん面んんーーーーーーッ!!!」
木刀が炸裂。同時に。
「ホォーーームラン!!」
アリサがフルスイング。
パキャ、と軽い音がし、二匹のモンスターは瞬殺された。
「はぁ……びっくりしたー」
「ちょっと、慣れて、舐めてたから、危なかった」
「ぼく、また動けなかった……」
バトル組三人がほっと息をつく。
「おつかれさま」
ぼくとカナちゃんが、魔石を拾う。
「二匹同時に来るとは思わなかったね」
「でも、考えてみたら、そういうこともあるのは当たり前だよね」
「っていうか、もし十匹とか同時にでてきたらどうする?」
「「「「…………」」」」
コータの言葉に、みんな言葉を失う。
そりゃそうか、ありえない話ではないんだよな。
「そう考えてみたら『慣れた』なんて言っちゃだめだな……」
「そうね……でも、大人ダイチはそんなこと言わなかったわよ」
「じゃあ、あり得ないってことなのかなぁ……」
考えてもわからないので、先に進む。
しばらく歩くと、またコウモリに遭遇する。
また二匹だ。
「……またコウモリね」
「これまで一匹ずつしか出てこなかったのに、連續して二匹と遭遇するのな」
なんだか――――そう、ぼくたちを成長させようとしているみたいだ。
危なげなくコウモリを倒す。
と、ケンゴが走り出した。
「ん、向こうにもまだコウモリがいるぞ」
「え、ちょ、ケンゴ!」
驚いて追いかけようとするが、魔石を拾うために背中を向けていたので、追いかけるのが間に合わない。
かなり離れたところで「んめぇーーーん!」という声が聞こえて、同時に「パン、パン」と音もする。
だいぶ手慣れてきているなぁ。
「いやー、大漁大漁」
そう言いながら、ケンゴが戻ってくる。
「それにしても、よくそんな遠くのコウモリ見つけたね」
「ここから見てても、ケンゴが倒してるコウモリ見えなかった」
そう言うと
「そうか? 気配がしたから、そっち見たら二匹飛んでいるのがわかったけど?」
事も無げにケンゴが言う。
「……気配って何さ」
コータが口をとがらせていう。
確かに、マンガとかではよく見るセリフだけど、実際に気配なんてものを感じることはないなぁ。
するとアリサも、おそるおそる手を上げて、
「あたしもちょっとわかるんだけど」
「マジで? あれぇ、ぼくがおかしいのかな……」
コータがショックそうに顔を歪ませる。
いやいや、普通は「この先に敵がいる気配がする」なんて感じるほうがおかしいから。
ケンゴとアリサは、敵を倒しまくってるうちにモンスターの気配がわかるようになったらしい。
―――でも、まだまだだな。
この先に、モンスター溜まりになっている部屋がある。
数は―――吸血コウモリだけで10匹以上、ジャイアントタランチュラも5匹ほどいる。
楽勝モードでダンジョンを舐めはじめたオレたちを養分にする気満々だな。
「それは、ケンゴとアリサの位階が上がってきたからだ」
オレは皆に説明する。
「「「位階?」」」
「そうだ。モンスターを倒すと、魔力の結晶である魔石が残るが、体は溶けてなくなるだろう。あの体を構成している魔力は、倒したもののものになる。そして、少しずつ強くなるんだ」
「もしかして、大人ダイチか?」
何を言ってるんだ?こいつらは。
「前から聞きたかったんだが、なんだその大人ダイチっていうのは……?」
聞き返すと、皆がうーんと困ったように笑う。
カナが「ダイチ君」と話しかけてくる。
「何だ?」
「ダイチ君は、なぜそんなことを知ってるの?」
「なぜって―――冒険者なら知っていて当然だ」
「「「「やっぱり大人ダイチ!キターー!!!」」」」
皆が目を輝かせる。
ん? 自覚はないのだが……いつもと違うのか?
まぁ、そんなことはどうでもいい。
「それより、このまま行くと死ぬぞ」
オレがそう言うと、皆はぎょっとした顔で固まった。
使い方はよく知ってる。
ポンプをキュコキュコと何度も動かして固くなってきたら、コックをひねって火を付ける。
シュコー、と心地よい音がして、周りが暖かい色で満たされる。
おお、と歓声が上がった。
「明るいとこんな感じなのか」
「懐中電灯とちがって、全体が明るいから、様子がよくわかるね」
ダンジョンは、丸み帯びたレンガのような形の石を隙間なく積み上げたような姿をしている。
入口付近だと石と石の間から草が生えていたりするけれど、少し潜ると植物の姿は全くなくなる。
……そのかわりモンスターが出るけどね。
「よし、じゃあいつも通り進むか」
ダイチが先頭で進む。
と、すぐにモンスターと遭遇した。
いつもの角コウモリだ。
「幸先いいな! よし、やるぞ」
「おおっ!」
すぐに武器を構えるダイチとアリサ、そしてコータ。
武器はダイチが竹刀、アリサはバット、そしてコータは鉄パイプだ。
ランプを持っているぼくは、今日は武器はもっていない。
カナちゃんは包丁をいつでも鞘からぬけるように握っている。
可愛い。
「来るぞ!」
コウモリがこちらに飛びかかってくる――――って、二匹?!
「二匹いる!」
「おお!? びっくりした!」
「オレは後ろのをやる! 二人は前のを!」
「わかった!」
ケンゴが1匹目をサッと避けて後ろのコウモリに飛びかかる!
「ん面んんーーーーーーッ!!!」
木刀が炸裂。同時に。
「ホォーーームラン!!」
アリサがフルスイング。
パキャ、と軽い音がし、二匹のモンスターは瞬殺された。
「はぁ……びっくりしたー」
「ちょっと、慣れて、舐めてたから、危なかった」
「ぼく、また動けなかった……」
バトル組三人がほっと息をつく。
「おつかれさま」
ぼくとカナちゃんが、魔石を拾う。
「二匹同時に来るとは思わなかったね」
「でも、考えてみたら、そういうこともあるのは当たり前だよね」
「っていうか、もし十匹とか同時にでてきたらどうする?」
「「「「…………」」」」
コータの言葉に、みんな言葉を失う。
そりゃそうか、ありえない話ではないんだよな。
「そう考えてみたら『慣れた』なんて言っちゃだめだな……」
「そうね……でも、大人ダイチはそんなこと言わなかったわよ」
「じゃあ、あり得ないってことなのかなぁ……」
考えてもわからないので、先に進む。
しばらく歩くと、またコウモリに遭遇する。
また二匹だ。
「……またコウモリね」
「これまで一匹ずつしか出てこなかったのに、連續して二匹と遭遇するのな」
なんだか――――そう、ぼくたちを成長させようとしているみたいだ。
危なげなくコウモリを倒す。
と、ケンゴが走り出した。
「ん、向こうにもまだコウモリがいるぞ」
「え、ちょ、ケンゴ!」
驚いて追いかけようとするが、魔石を拾うために背中を向けていたので、追いかけるのが間に合わない。
かなり離れたところで「んめぇーーーん!」という声が聞こえて、同時に「パン、パン」と音もする。
だいぶ手慣れてきているなぁ。
「いやー、大漁大漁」
そう言いながら、ケンゴが戻ってくる。
「それにしても、よくそんな遠くのコウモリ見つけたね」
「ここから見てても、ケンゴが倒してるコウモリ見えなかった」
そう言うと
「そうか? 気配がしたから、そっち見たら二匹飛んでいるのがわかったけど?」
事も無げにケンゴが言う。
「……気配って何さ」
コータが口をとがらせていう。
確かに、マンガとかではよく見るセリフだけど、実際に気配なんてものを感じることはないなぁ。
するとアリサも、おそるおそる手を上げて、
「あたしもちょっとわかるんだけど」
「マジで? あれぇ、ぼくがおかしいのかな……」
コータがショックそうに顔を歪ませる。
いやいや、普通は「この先に敵がいる気配がする」なんて感じるほうがおかしいから。
ケンゴとアリサは、敵を倒しまくってるうちにモンスターの気配がわかるようになったらしい。
―――でも、まだまだだな。
この先に、モンスター溜まりになっている部屋がある。
数は―――吸血コウモリだけで10匹以上、ジャイアントタランチュラも5匹ほどいる。
楽勝モードでダンジョンを舐めはじめたオレたちを養分にする気満々だな。
「それは、ケンゴとアリサの位階が上がってきたからだ」
オレは皆に説明する。
「「「位階?」」」
「そうだ。モンスターを倒すと、魔力の結晶である魔石が残るが、体は溶けてなくなるだろう。あの体を構成している魔力は、倒したもののものになる。そして、少しずつ強くなるんだ」
「もしかして、大人ダイチか?」
何を言ってるんだ?こいつらは。
「前から聞きたかったんだが、なんだその大人ダイチっていうのは……?」
聞き返すと、皆がうーんと困ったように笑う。
カナが「ダイチ君」と話しかけてくる。
「何だ?」
「ダイチ君は、なぜそんなことを知ってるの?」
「なぜって―――冒険者なら知っていて当然だ」
「「「「やっぱり大人ダイチ!キターー!!!」」」」
皆が目を輝かせる。
ん? 自覚はないのだが……いつもと違うのか?
まぁ、そんなことはどうでもいい。
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オレがそう言うと、皆はぎょっとした顔で固まった。
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