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291話 説得 17
しおりを挟むあ...ネックレス...。
ベッドから出ると、やんわりと光を放つ星が首もとで揺れていることに気づいた。
握ったまま寝ちゃったんだ...。
駄目だな、もっと気を付けないと。
このネックレス。普段は身に付けてはいるものの、家や南原さんと二人きりの時以外は服の下にしまっている。
それに特に深い意味はなく、なんとなく人目を気にしていただけなのだが、今は違う。
このネックレスがあることは桂本さんに知られたくない。
もし知られたら、取り上げられてしまうかもしれないから。
南原さんが、暗闇が怖い俺にとくれたプレゼント。決して高級なブランドだとか、大きな宝石がついているとかではないけれど、俺にとっては何より大切な宝物だ。
だってこれには、南原さんの俺を思ってくれる気持ちがこもっているのだ。それはどんなに値の張るアクセサリーより、ずっと価値のあるものだから。
これを奪われてしまったら...。
そう考えただけで、酷く胸が苦しくなる。
いつも通り、星をシャツの中に仕舞おうとして、俺はふと、先程の桂本さんの言葉を思い出した。
『痕が残る程の傷はつけないよう言われておりますので、念のため服の上から行いますね。』
念のため、服の上から...。
あの時、もし今までお仕置きで使っていた鞭と同じもので打たれていたら、シャツは脱がされていただろう。そしたら、絶対バレてた。
まぁ、バレても取り上げられるとは限らないけれど、念には念を。
今回はセーフだったけど、このまま首にかけていたら、服を脱がされるようなことがあれば、ネックレスの存在が知られてしまう。
少し考え、俺は首からネックレスを外し、ズボンのポケットへそっと入れた。
* * * * * * * * * *
朝。
昨日はあれから、夕飯を食べてお風呂に入って寝ただけだったので、俺は体力をかなり回復できていた。背中の傷は痛むし、体の所々には痣もあるけど、沢山寝たので頭はすっきりしている。
...もう桂本さんは昨日のこと、父さんに話をしただろうか。
そんなことを考えながら、目が覚める前に持ち込まれていたらしい朝食を食べ終え、少しぼーっとしていると、部屋に桂本さんがやってきた。
「おはようございます、透さん。」
「...お、おはようございます...。」
普段と何も変わらず、感情のない事務的な挨拶をする桂本さん。対して父さんへの交渉結果が気になって仕方のない俺は、ぎこちない挨拶を返した。
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