当たり能力1個より、ハズレ能力10個の方が良いに決まってる

ネムスター

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俺には丁度いい

46話 瞞し

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なにせ手がかりが少ない。
暴走していた時間がどの程度かは知らないが、おそらく数十分かそこら。
解体されるかもしれない、殺されるかもしれない。
考えるだけ無駄だと自覚した。
不幸な方にしか持っていけない自分が恥ずかしい。
とにかく俺は走った。
足を着く度、骨がずれるような痛みがある。
腕も、振った時の反動で薄い皮膚が剥がれ落ちる。
満身創痍とはこの事だろう。
恐ろしいのは、この傷はおそらく敵に付けられたものではないという所。
自爆、あるいは...自傷?
走る事に全神経を注いでいる今、考えること自体馬鹿馬鹿しい事だ。
この能力は切り札として取っておこうか。
しかし、どうして俺は...。

「痛っ」

突然、俺の勢いが止まった。
何かに妨げられるかのように、強制的に動きが止まる。
目の前には確かに道がある、それなのに壁があるような...。
手のひらを前に出してみて驚いた。
目の前広がっているそれは、巨大な障害物。
先程まで戦っていたコンテナの中のような場所だ。
何キロか走っていた気でいた。
おかしい、何かがおかしい。
そういえばこの見えない傷は...。
何かを察した時だ。
俺はゆっくりと振り返った。
そこに広がる景色に、心底困惑する。
俺が、数十分前戦った場所だった。



その頃ー


周りの子供達がようやく落ち着きを取り戻していた。
というか、騒ぐ事が無意味だと分かったのだ。
妹も同じく、目を薄く開いて待った。
自分の番が回ってくるのを。

しかしそれは、あくまでも頭で作った薄っぺらな膜。

精神の奥底では希望以外を見出していなかった
自分の兄が助けてくれるかもしれない。
それまでは、生きていたい。
もし、自分のために兄が今行動しているなら。
すぐにでも胸に飛び込みたい。
また、一緒に美味しいものを食べよう。
どこかに遊びに行ったりも。
なんでも一緒に...私もついて行くから。

また一人の人間が骨と皮のみになって転がった。
あの子の命が金になるまで...残り30分。
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