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第三章
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「イツトリくんの馬鹿やろぅぅぅぅッッッ!!」
「えぇー。なんでだよ、俺がいなかったら今頃、怒り狂った精霊との戦闘だったんだぞ。あんな超自然的な生き物と殴り合いとか魔力の無駄だろ。向こうは大気だの土だの、水だのから無尽蔵に魔力を引っ張ってこれるんだし。無限の存在に有限の弾で立ち向かってどうすんだって話だよ」
「そう言う問題じゃなくてそもそもイツトリくんが戦闘狂どもの相手をしなかったら起こらなかった出来事なんですぅぅ!」
真っ逆さまに落ちながらの委員長の絶叫に、同じく落下中のイツトリはのんびりした様子で言葉を返していた。
「最初に相手してたの委員長だぜ」
「うわーん!!もうやだ、おじいちゃぁぁぁん!!」
本格的に泣きが入った委員長。色々と限界突破しちゃったらしい。仕方ないなぁとため息を一つ吐いたイツトリは慣れた手つきで空中に魔術陣を描いた。
「【風属性+軟化】」
ふわりと繊細な風の手が二人を落下から掬う。足場を作るように、身体を糸で操るように、見えない風が優しく空を誘導した。
「ひっく、」
「泣くなよ、委員長。泣かれると困るよ。悪かったって。俺が全部悪いから泣くなよ」
半泣きというかほぼ泣いている委員長に声をかけてイツトリは彼女の手を取った。ダンスでも踊るように落下する空の中を優雅に移動する。
優しい風に制御されているので万が一にも危険はない。落下の速度も緩やかにしているし、イツトリは委員長のご機嫌を取るように慰めた。
「イツトリくんは意地悪です」
「そうだな。俺は意地悪だな」
「すぐに人を揶揄うし、強いのにやる気出さないし、それなのに実力出すのに躊躇わないし、馬鹿にするし、人間のくせに人間じゃないし」
「あれ、なんかちょっと外れてない?愚痴っつーかもはや悪口のオンパレードになってるんだが。俺そんなにしたか!?」
実はイツトリに降り回されっぱなしでストレスが溜まっていたのかもしれない。やばい、もう少し自重すべき?と内心反省会を開いていたイツトリにぐすぐす鼻を鳴らしながら委員長は続けた。
「それなのに優しいし。なんだかんだと守ってくれるし……イツトリくんは意地悪です」
「最終的にそこに落ち着くのかっていうか俺としては気恥ずかしい!」
褒められてんだか、貶されてんだか、よくわからない状態である。そして委員長は思ったことを言っているだけなのが余計に憎らしかった。そんなつもりはなかったのにイツトリは自分の頬が熱くなるのがわかる。うー、と一つ唸って少年は少女の手を引いた。
「それはそれとして俺が魔術で降りると悪目立ちするからタスケテクダサイ」
そう、今落下を軽減しているのはイツトリの魔術だった。魔術師によって得意とする魔術や扱う魔術陣などは千差万別であるので、同じ魔術を使っても同じ効果にはならない。人によって微妙な癖があるのだ。だからこのまま学園に戻ってしまうと面倒なことになる。
今はまだ、イツトリ・ヘルムートは落ちこぼれのクラスに相応しい実力でなければならない。勝てたのは委員長が居たおかげ、という構図を作っておかなければ。
「な、委員長。頼むよ」
「……そんなんだからズルいんです。イツトリくんのすっとこどっこい」
「えぇー?」
イツトリとしてはもう何が何やら。
乙女心は人の心がわからない彼には難しすぎる。
「えぇー。なんでだよ、俺がいなかったら今頃、怒り狂った精霊との戦闘だったんだぞ。あんな超自然的な生き物と殴り合いとか魔力の無駄だろ。向こうは大気だの土だの、水だのから無尽蔵に魔力を引っ張ってこれるんだし。無限の存在に有限の弾で立ち向かってどうすんだって話だよ」
「そう言う問題じゃなくてそもそもイツトリくんが戦闘狂どもの相手をしなかったら起こらなかった出来事なんですぅぅ!」
真っ逆さまに落ちながらの委員長の絶叫に、同じく落下中のイツトリはのんびりした様子で言葉を返していた。
「最初に相手してたの委員長だぜ」
「うわーん!!もうやだ、おじいちゃぁぁぁん!!」
本格的に泣きが入った委員長。色々と限界突破しちゃったらしい。仕方ないなぁとため息を一つ吐いたイツトリは慣れた手つきで空中に魔術陣を描いた。
「【風属性+軟化】」
ふわりと繊細な風の手が二人を落下から掬う。足場を作るように、身体を糸で操るように、見えない風が優しく空を誘導した。
「ひっく、」
「泣くなよ、委員長。泣かれると困るよ。悪かったって。俺が全部悪いから泣くなよ」
半泣きというかほぼ泣いている委員長に声をかけてイツトリは彼女の手を取った。ダンスでも踊るように落下する空の中を優雅に移動する。
優しい風に制御されているので万が一にも危険はない。落下の速度も緩やかにしているし、イツトリは委員長のご機嫌を取るように慰めた。
「イツトリくんは意地悪です」
「そうだな。俺は意地悪だな」
「すぐに人を揶揄うし、強いのにやる気出さないし、それなのに実力出すのに躊躇わないし、馬鹿にするし、人間のくせに人間じゃないし」
「あれ、なんかちょっと外れてない?愚痴っつーかもはや悪口のオンパレードになってるんだが。俺そんなにしたか!?」
実はイツトリに降り回されっぱなしでストレスが溜まっていたのかもしれない。やばい、もう少し自重すべき?と内心反省会を開いていたイツトリにぐすぐす鼻を鳴らしながら委員長は続けた。
「それなのに優しいし。なんだかんだと守ってくれるし……イツトリくんは意地悪です」
「最終的にそこに落ち着くのかっていうか俺としては気恥ずかしい!」
褒められてんだか、貶されてんだか、よくわからない状態である。そして委員長は思ったことを言っているだけなのが余計に憎らしかった。そんなつもりはなかったのにイツトリは自分の頬が熱くなるのがわかる。うー、と一つ唸って少年は少女の手を引いた。
「それはそれとして俺が魔術で降りると悪目立ちするからタスケテクダサイ」
そう、今落下を軽減しているのはイツトリの魔術だった。魔術師によって得意とする魔術や扱う魔術陣などは千差万別であるので、同じ魔術を使っても同じ効果にはならない。人によって微妙な癖があるのだ。だからこのまま学園に戻ってしまうと面倒なことになる。
今はまだ、イツトリ・ヘルムートは落ちこぼれのクラスに相応しい実力でなければならない。勝てたのは委員長が居たおかげ、という構図を作っておかなければ。
「な、委員長。頼むよ」
「……そんなんだからズルいんです。イツトリくんのすっとこどっこい」
「えぇー?」
イツトリとしてはもう何が何やら。
乙女心は人の心がわからない彼には難しすぎる。
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