61 / 97
<第二巻:温厚無慈悲な奴隷商人>
第十八話:奴隷商人はライラの過去を知る
しおりを挟む俺は、いつの間にか馬車に揺られて眠っていたらしい。もう少し眠りたいのだが……
うるさい……うるさくて眠れん!
先ほどからパオリーアとライラの言い争いが聞こえて、眠りを妨げられていた。
「……うるさいぞ……」
俺は、目をつぶったまま二人に言った。静かにしてくれ、俺はいまとても眠いんだ……
「旦那様……起きてらっしゃいますか?」
パオリーアの優しい声が聞こえてくる。こんな優しい声で起こされるのなら、俺は眠くても元気に起きられるだろう。
そう思いながら、微笑みを浮かべて目を開けた。
「うあっ! なんで、お前らおっぱい出してんだよっ!」
目の前に、上半身裸の美女二人がっ!
手で隠してはいるが、たわわに実った果実が手に収まらず溢れ出している。
「旦那様、これは……その……」
「な、なんで目を背けるのですかっ!」
とっさに顔を背けてしまったが、これって見てもいいんだろうか? いや、見たい。非常に見たい。見ればいいじゃないか、見ても怒られたりしないだろう。そうだ、堂々と見ればいいのだ……よし、見よう。
俺は、ゆっくりと目を開けた。おぉー、四つの乳房がボヨヨンと! って、正気に戻れ、俺。
「なんで、お前たちは脱いでるんだ?」
「あの……、旦那様はおっぱいがお好きなのですよね? ライラ先生が、旦那様は大きいのよりも形が良いほうを好まれると言うもので……その……」
ライラがまた何かいらんことを言ったようだな。
「それで裸になって見比べていたと?」
「はい……旦那様は、どっちの胸がお好みでしょうか……」
パオリーアとライラは、興味津々に身を乗り出し俺の返答を待っている。
「どっちが好きと選ぶものではない。俺は巨乳も美乳も、貧乳も好きだぞ」
正直、おっぱいに貧富の差はない。俺は平等主義者だ。
「すごいっ! そんな多彩なおっぱいの表現をされるとは……さすがです、旦那様!」
ライラはスルーしていいかな?
「あの、私はどれに当てはまるのでしょうか?」
「パオリーアは、巨乳だな。大きくて立派だ。華奢な体なのにその大きさは誇っていい」
頬をほんのり赤くして恥ずかしがるパオリーア。この奥ゆかしさに俺の心はキュンキュンする。
それにひきかえ……
「わ、私は? 私にもおっぱいに名前を!」
「名前ではない。あえて言えば……おっぱいの種類かな」
俺は、そういえばライラの胸をちゃんと見たことがなかった。今も腕で胸を隠している。あけすけに見せていないだけマシか。
「うーん、そうだな。ライラの胸を見た覚えがないんだが……」
「では、では、今ここで……どうぞ!」
両手をパッと広げて胸を反らすと、ブルンと揺れた乳房が、こんにちはと顔を出した。形のいい胸だ。
しかも、乳輪の大きさ、色艶、どれも俺の好みだ。胸の大きい女の中には、乳輪が引き伸ばされたように大きいモノもある。だが、ライラのものは大きな乳房にちょこんと薄桜色の先端が可愛く鎮座している。
ほぉ、と思わず感嘆の声を出してしまった。
間違いなく、俺が今まで見て来た数多のおっぱいの中でも一番の美乳だ。
「すごい美乳だな。本当に美しい形だ。俺の好みだぞ」
「び、びにゅぅ~! そうか、そうか。私のは美しいのか。良かった、本当に良かった……」
なぜか涙ぐむライラ。そんなに喜ぶようなものかな? 元いた世界なら、ビンタされてセクハラよ! って罵声を浴びせられると思うのだが、この世界は俺に優しいな。
「良かったですね。ライラ先生_」
パオリーアまでが、ライラの手を取って喜んでいる。というか、もらい泣きしている。
「旦那様は、パオリーアやマリレーネのような豊かな胸がお好きで、私のようなおっぱいは好みではないのかと思っていました。前は形がいい方が好きだとおっしゃっていたのに……。だから、いつも私を避けておられるのだと思っていました。……良かったです」
ライラも誰もが目を奪われるほどの美人さんだ。俺の周りには美人ばかりいるから、つい忘れてしまうがこんな美人におっぱいを見せてもらえるなんて、まずないだろう。しかも、無料でだ。
「ライラ。悪かったな。避けていたわけじゃないんだ。やはり、お前は奴隷ではなく王都から来ていただいたマナーの先生。そこは、きちんと一線を超えてはならないと思っていた」
「そ、そんな……いくらでも一線でも、二線でも、超えてくださればいいのに……私はそのために来たのですから」
来た理由は違うと思うのだが……奴隷にマナーを教えてに来たんですよね?
「旦那様に初めてお会いした時のことを覚えておられますか?」
「ああ、お前がマナーの先生として屋敷に来た時のことだろ? よく覚えている」
「ち、違いますわ! お忘れですか、以前に私が父に連れられて旦那様のお屋敷に来た時のことです」
えっと、それはもしかして俺の魂が入る前のお話かな。
俺たちが以前に会ったことがあるとは、今まで一言も言わなかったじゃないか。
あ、もしかして、あれか? 私のことを忘れていたのねって泣くパターンか?
「わ、私のことを忘れていたのですねっ!」
うわーんと、涙を流し始めるライラ。あまりにも予想通りでびっくりだわ。
「ごめんよ、俺は記憶を一部無くしているらしいんだ。なぁ、パオリーア」
「はい、旦那様は半年ほど前からの記憶しかなくて、それ以前の記憶を失っておられるのです」
ライラは、腕で涙を拭うと、「そうでしたか」とポツリと寂しそうに言った。ごめん……。
「まだ、旦那様が六歳のころ、私は父に連れられてお屋敷に来たことがあります。その時、私は九歳でしたわ。旦那様のお部屋に呼ばれた私は、ドロワーズを無理やり脱がして、私にこう言いました。俺の前ではもっとエッチな格好をせよと……。辱めを受けたというのに、その時、私はひどく興奮したのを覚えています。そして初めて裸を見せたニート様のために女を磨こうと。エッチな女性になって、ニート様のお嫁さんなりますと……誓ったのです」
話が飛躍しすぎてて、もう頭が追いつかない。しかも、おっぱい丸出しでそんな昔話されても頭に入ってこないし。
俺は、あえて口を挟まずに黙って聞いていた。
「街で旦那様の噂を聞きました。冷酷で残忍な人だと。それはきっと、私がいるから他の女を寄せ付けないために、あえて悪役を演じられているのだと勘づきました。下着屋の女主人からソレ様の屋敷で礼儀作法の先生を探しているという話をお聞きし、話に乗ったのです。だって、ぜんぜん私をお迎えに来てくださらないのですもの……」
ずいぶんと、都合の良い解釈だな。冷酷で残忍だったのは本当のことなんだが。今はそのニートも女神に召されているから、否定することはないか。
「では、そのボンテージ衣装ってもしかして?」
「はい、旦那様が、こういう格好がお好きだとその時におっしゃって、父に頼んでドワーフに作らせた特注品です」
どうりで、体にジャストフィットしているはずだ。しかも、デザインがハイレグビキニとは俺の好みまで抑えてある。元の俺って、女の趣味は似ていたのかもしれないな。
「大人になったら迎えに行くからとおっしゃって、私はいつ来るのだろうかと思いながら、この年齢まで……」
「貞操を守っていたのか? あの……、もしかして、俺たちって?」
「はい、結婚をお約束した仲です」
がーんっ! なんじゃそれ。これは、親父に一度戻って来てもらわないと、真偽の程が分からないぞ。
ちょっと変わった格好の女だと思っていたが、俺がボンテージが好きだと言ったからとは。
それが、本当なら律儀にそれを守るライラって、重たい女だったりするのか。
「悪いが、俺は覚えていない。たとえ、子供の頃にお前と結婚すると言っていたとしても、それはもう期限切れの約束だ」
パオリーアが、睨みつけて「ひどいです、旦那様!」と怒りはじめた。
「覚えていないんだ。酷いも何も、急にそんなことを言われても、俺の心の準備ができていない」
「旦那様がいつ思い出してくださるのかと、ずっと楽しみにしていましたのに……。ですが、記憶を失くされていたのなら仕方ないですわ」
物分かりが良いふりをしているが、きっと傷ついているんじゃないだろうか。いつもの雰囲気と違い、どこかか弱そうにさえ見えた。
俺は、申し訳ない気持ちになってしまう。しんみりしすぎて居心地が悪い。話を変えよう。
「ところで、ライラの父親は俺の親父と仲がいいのか?」
「ええ。旧くからのお付き合いだとかで」
俺はその後、ライラが王都の侯爵令嬢というのを知り、腰を抜かすほどびっくりした。
やばい、あやうく奴隷にしてしまうところだった。兄弟姉妹が多いらしいから、自由に暮らしているそうだが奴隷はまずい。
ライラのことを諜報屋に調べさせたはずだが、そういえばまだ見ていないな。
おそらく、ライラが先に目を通して俺にわざと見せなかったんだろう。
俺は、父親のハリリ侯爵に会ってみたくなった。俺がこれからやろうとしている奴隷の権利について後ろ盾が欲しいと思っていたからだ。ハリリ侯爵は元老院の評議に参加しているという。利用しない手はない。
「ライラ。一度、お前のご両親に会ってみたい」
目をキラキラさせて、ライラは今まで見たことのない笑顔を見せると言った。
「はっ、はいっ! で、では……私はさっそくダバオで降りて実家へ戻ります」
◆
翌日、ダバオの街でライラを下ろすと俺たちは屋敷へと戻った。
パオリーアは、終始ご機嫌斜めだが女の子の日なのだろうか。逆にライラは上機嫌だったのが気になる。
「マリレーネ。お迎えすまない。何か変わったことはないか?」
「旦那様おかえりなさいませ。特に変わったことはありませんでした。」
マリレーネが丁寧に礼を取る。近頃は、見違えるほど優雅な動作をするようになった。気を抜くと、足を開いて座ったりタメ口になったりするが、それも愛嬌というものだ。
「あっ、リーア姉さん、おかえりっ! あれ、ライラ先生は?」
ライラがいないことに気づいたマリレーネが、パオリーアに尋ねた。
「……ライラ先生は、旦那様とのご結婚をご両親に報告に行かれたわ」
ちょっと待て! 違うぞ、俺は親に会わせてくれと言っただけだ。
えっ、しまった……もしかして勘違いされた?
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる