悪役転生した奴隷商人が奴隷を幸せにするのは間違っていますか?

桜空大佐

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<第二巻:温厚無慈悲な奴隷商人>

第十八話:奴隷商人はライラの過去を知る

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 俺は、いつの間にか馬車に揺られて眠っていたらしい。もう少し眠りたいのだが……
 うるさい……うるさくて眠れん!
 先ほどからパオリーアとライラの言い争いが聞こえて、眠りを妨げられていた。

「……うるさいぞ……」

 俺は、目をつぶったまま二人に言った。静かにしてくれ、俺はいまとても眠いんだ……

「旦那様……起きてらっしゃいますか?」

 パオリーアの優しい声が聞こえてくる。こんな優しい声で起こされるのなら、俺は眠くても元気に起きられるだろう。
 そう思いながら、微笑みを浮かべて目を開けた。

「うあっ! なんで、お前らおっぱい出してんだよっ!」

 目の前に、上半身裸の美女二人がっ!
 手で隠してはいるが、たわわに実った果実が手に収まらず溢れ出している。

「旦那様、これは……その……」
「な、なんで目をけるのですかっ!」

 とっさに顔を背けてしまったが、これって見てもいいんだろうか? いや、見たい。非常に見たい。見ればいいじゃないか、見ても怒られたりしないだろう。そうだ、堂々と見ればいいのだ……よし、見よう。

 俺は、ゆっくりと目を開けた。おぉー、四つの乳房がボヨヨンと! って、正気に戻れ、俺。

「なんで、お前たちは脱いでるんだ?」
「あの……、旦那様はおっぱいがお好きなのですよね? ライラ先生が、旦那様は大きいのよりも形が良いほうを好まれると言うもので……その……」

 ライラがまた何かいらんことを言ったようだな。

「それで裸になって見比べていたと?」
「はい……旦那様は、どっちの胸がお好みでしょうか……」

 パオリーアとライラは、興味津々に身を乗り出し俺の返答を待っている。

「どっちが好きと選ぶものではない。俺は巨乳も美乳も、貧乳も好きだぞ」

 正直、おっぱいに貧富の差はない。俺は平等主義者だ。

「すごいっ! そんな多彩なおっぱいの表現をされるとは……さすがです、旦那様!」

 ライラはスルーしていいかな?

「あの、私はどれに当てはまるのでしょうか?」
「パオリーアは、巨乳だな。大きくて立派だ。華奢な体なのにその大きさは誇っていい」

 頬をほんのり赤くして恥ずかしがるパオリーア。この奥ゆかしさに俺の心はキュンキュンする。
 それにひきかえ……

「わ、私は? 私にもおっぱいに名前を!」
「名前ではない。あえて言えば……おっぱいの種類かな」

 俺は、そういえばライラの胸をちゃんと見たことがなかった。今も腕で胸を隠している。あけすけに見せていないだけマシか。

「うーん、そうだな。ライラの胸を見た覚えがないんだが……」
「では、では、今ここで……どうぞ!」

 両手をパッと広げて胸を反らすと、ブルンと揺れた乳房が、こんにちはと顔を出した。形のいい胸だ。
 しかも、乳輪の大きさ、色艶、どれも俺の好みだ。胸の大きい女の中には、乳輪が引き伸ばされたように大きいモノもある。だが、ライラのものは大きな乳房にちょこんと薄桜色の先端が可愛く鎮座している。
 ほぉ、と思わず感嘆の声を出してしまった。
 間違いなく、俺が今まで見て来た数多あまたのおっぱいの中でも一番の美乳だ。

「すごい美乳だな。本当に美しい形だ。俺の好みだぞ」
「び、びにゅぅ~! そうか、そうか。私のは美しいのか。良かった、本当に良かった……」

 なぜか涙ぐむライラ。そんなに喜ぶようなものかな? 元いた世界なら、ビンタされてセクハラよ! って罵声を浴びせられると思うのだが、この世界は俺に優しいな。

「良かったですね。ライラ先生_」

 パオリーアまでが、ライラの手を取って喜んでいる。というか、もらい泣きしている。

「旦那様は、パオリーアやマリレーネのような豊かな胸がお好きで、私のようなおっぱいは好みではないのかと思っていました。前は形がいい方が好きだとおっしゃっていたのに……。だから、いつも私を避けておられるのだと思っていました。……良かったです」

 ライラも誰もが目を奪われるほどの美人さんだ。俺の周りには美人ばかりいるから、つい忘れてしまうがこんな美人におっぱいを見せてもらえるなんて、まずないだろう。しかも、無料タダでだ。

「ライラ。悪かったな。避けていたわけじゃないんだ。やはり、お前は奴隷ではなく王都から来ていただいたマナーの先生。そこは、きちんと一線を超えてはならないと思っていた」
「そ、そんな……いくらでも一線でも、二線でも、超えてくださればいいのに……私はそのために来たのですから」

 来た理由は違うと思うのだが……奴隷にマナーを教えてに来たんですよね?

「旦那様に初めてお会いした時のことを覚えておられますか?」
「ああ、お前がマナーの先生として屋敷に来た時のことだろ? よく覚えている」
「ち、違いますわ! お忘れですか、以前に私が父に連れられて旦那様のお屋敷に来た時のことです」

 えっと、それはもしかして俺の魂が入る前のお話かな。
 俺たちが以前に会ったことがあるとは、今まで一言も言わなかったじゃないか。

 あ、もしかして、あれか? 私のことを忘れていたのねって泣くパターンか?

「わ、私のことを忘れていたのですねっ!」

 うわーんと、涙を流し始めるライラ。あまりにも予想通りでびっくりだわ。

「ごめんよ、俺は記憶を一部無くしているらしいんだ。なぁ、パオリーア」
「はい、旦那様は半年ほど前からの記憶しかなくて、それ以前の記憶を失っておられるのです」

 ライラは、腕で涙を拭うと、「そうでしたか」とポツリと寂しそうに言った。ごめん……。

「まだ、旦那様が六歳のころ、私は父に連れられてお屋敷に来たことがあります。その時、私は九歳でしたわ。旦那様のお部屋に呼ばれた私は、ドロワーズを無理やり脱がして、私にこう言いました。俺の前ではもっとエッチな格好をせよと……。はずかしめを受けたというのに、その時、私はひどく興奮したのを覚えています。そして初めて裸を見せたニート様のために女を磨こうと。エッチな女性になって、ニート様のお嫁さんなりますと……誓ったのです」

 話が飛躍しすぎてて、もう頭が追いつかない。しかも、おっぱい丸出しでそんな昔話されても頭に入ってこないし。
 俺は、あえて口を挟まずに黙って聞いていた。

「街で旦那様の噂を聞きました。冷酷で残忍な人だと。それはきっと、私がいるから他の女を寄せ付けないために、あえて悪役を演じられているのだと勘づきました。下着屋の女主人からソレ様の屋敷で礼儀作法の先生を探しているという話をお聞きし、話に乗ったのです。だって、ぜんぜん私をお迎えに来てくださらないのですもの……」

 ずいぶんと、都合の良い解釈だな。冷酷で残忍だったのは本当のことなんだが。今はそのニートも女神に召されているから、否定することはないか。

「では、そのボンテージ衣装ってもしかして?」
「はい、旦那様が、こういう格好がお好きだとその時におっしゃって、父に頼んでドワーフに作らせた特注品です」

 どうりで、体にジャストフィットしているはずだ。しかも、デザインがハイレグビキニとは俺の好みまでおさえてある。元の俺って、女の趣味は似ていたのかもしれないな。

「大人になったら迎えに行くからとおっしゃって、私はいつ来るのだろうかと思いながら、この年齢まで……」
「貞操を守っていたのか? あの……、もしかして、俺たちって?」
「はい、結婚をお約束した仲です」

 がーんっ! なんじゃそれ。これは、親父に一度戻って来てもらわないと、真偽の程が分からないぞ。
 ちょっと変わった格好の女だと思っていたが、俺がボンテージが好きだと言ったからとは。
 それが、本当なら律儀にそれを守るライラって、重たい女だったりするのか。

「悪いが、俺は覚えていない。たとえ、子供の頃にお前と結婚すると言っていたとしても、それはもう期限切れの約束だ」

 パオリーアが、睨みつけて「ひどいです、旦那様!」と怒りはじめた。

「覚えていないんだ。酷いも何も、急にそんなことを言われても、俺の心の準備ができていない」
「旦那様がいつ思い出してくださるのかと、ずっと楽しみにしていましたのに……。ですが、記憶を失くされていたのなら仕方ないですわ」

 物分かりが良いふりをしているが、きっと傷ついているんじゃないだろうか。いつもの雰囲気と違い、どこかか弱そうにさえ見えた。
 俺は、申し訳ない気持ちになってしまう。しんみりしすぎて居心地が悪い。話を変えよう。

「ところで、ライラの父親は俺の親父と仲がいいのか?」
「ええ。ふるくからのお付き合いだとかで」

 俺はその後、ライラが王都の侯爵令嬢というのを知り、腰を抜かすほどびっくりした。
 やばい、あやうく奴隷にしてしまうところだった。兄弟姉妹が多いらしいから、自由に暮らしているそうだが奴隷はまずい。

 ライラのことを諜報屋に調べさせたはずだが、そういえばまだ見ていないな。
 おそらく、ライラが先に目を通して俺にわざと見せなかったんだろう。

 俺は、父親のハリリ侯爵に会ってみたくなった。俺がこれからやろうとしている奴隷の権利について後ろ盾が欲しいと思っていたからだ。ハリリ侯爵は元老院の評議に参加しているという。利用しない手はない。

「ライラ。一度、お前のご両親に会ってみたい」

 目をキラキラさせて、ライラは今まで見たことのない笑顔を見せると言った。

「はっ、はいっ! で、では……私はさっそくダバオで降りて実家へ戻ります」


 ◆

 翌日、ダバオの街でライラを下ろすと俺たちは屋敷へと戻った。
 パオリーアは、終始ご機嫌斜めだが女の子の日なのだろうか。逆にライラは上機嫌だったのが気になる。

「マリレーネ。お迎えすまない。何か変わったことはないか?」
「旦那様おかえりなさいませ。特に変わったことはありませんでした。」

 マリレーネが丁寧に礼を取る。近頃は、見違えるほど優雅な動作をするようになった。気を抜くと、足を開いて座ったりタメ口になったりするが、それも愛嬌というものだ。

「あっ、リーア姉さん、おかえりっ! あれ、ライラ先生は?」

 ライラがいないことに気づいたマリレーネが、パオリーアに尋ねた。

「……ライラ先生は、旦那様とのご結婚をご両親に報告に行かれたわ」

 ちょっと待て! 違うぞ、俺は親に会わせてくれと言っただけだ。
 えっ、しまった……もしかして勘違いされた?

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