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第二章~国持ち大名~

焦りと発展9

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刹那は嘉隆に水軍についての指示を事細かく伝えると霧山御所に戻っていた。
その道中に家康からの早馬がやって来た。

その書状によると【後程伊勢に行く。】
とのことが書かれていた。

それを呼んだ刹那には霧山御所に戻るとすぐに家康を出迎える準備をした。

翌日、昼頃に家康が今回は護衛をきちんとつけて霧山御所にやって来た。

「殿、此度は伊勢までご足労いただきましてありがとうございます。」

「刹那、堅苦しい挨拶は抜きでいい。此度は伊勢の繁栄ぶりを見に来ただけだ。書状を出したのも忠次がうるさいからだ。本当は供など付けずに来たかったのだがな。」

「殿、それは忠次殿が正しいです。殿は今は5ヶ国を有する大大名でございます。道中で何かあっては困ります。」

「そうは言うが刹那が領内の治安を良くしてから領民は被害に合うこともなく、商人も襲われる者がないと言うではないか。」

「しかし、万が一のことがあっては困るのです。ですのできちんと護衛は連れていて下さいませ。」

「忠次も刹那も厳しいのぉ。あいわかった。そしてな刹那困ったことなどはないか?」

「困ったことですか。領民たちもよく働いてくれていますし、殿から資金もいただいておりましたのでそこまで多きな問題はございませんね。1つ気がかりなことと申しませば人材不足でしょうか。」

「その言葉を待っていたぞ。刹那に喜ばしい贈り物を持ってきたぞ。」

家康がそう言うと部屋に入ってくる人物がいた。

「刹那殿、やっと来れましたぞ。」

「あっ、直盛殿、直親殿。」

そう、家康が連れてきた者とは刹那の義父の井伊直盛と義弟にあたる井伊直親だった。

「直盛からなどうしても刹那の元に行きたいと頼まれてな。刹那の人手不足の役にもたつだろうと許可をした。これよりは刹那の一門衆として傘下に加えるが良い。」

「しかし、それでは井伊谷の領地はどうなるのですか。井伊家代々の土地ではありませぬか。」

「安心せよ。井伊谷は井伊家の領地のままだ。」

「そうですか。」

刹那としても直盛達の力を借りたいと思ってはいたが井伊谷がほかの者の領地となるはおとわの実家をなくすことになりかえないとそこについて言うことは出来なかったのである。

「刹那殿、これからは殿とお呼びし、お支えしたいと思いますがよろしいですかな?」

「もったいないお言葉直盛殿ほどのお方が支えてくださるのなら伊勢をより栄えた国にしなければなりませんな。直親殿もよろしくお願い致す。」

「義兄上のお力になれますように精進致します。」

「刹那。これで伊勢のほうは問題なくなりそうか?」

「はい。殿、ご配慮ありがとうございます。これで私が伊勢を離れて殿の元に向かう時も安心して家臣達に任せることができます。これからはしばしば殿の元に伺いますのでご覚悟してくださいね。」

「いっ、いや、こちらは忠次や忠世もおる。そこまで無理をしなくても良いのだぞ?」

「いえ、忠次殿にも来るように頼まれておりますので。」

刹那が笑顔でそう言うのを見た家康は苦笑いを浮かべるのであった。

それから刹那は家康に伊勢の状況を見せるために領内を周り、夜には三河などの情勢やこれからの方針について話し合った。

刹那は直盛と直親を一門衆とし、刹那の身近なことの処理を任せることから始め、直親には家臣達から色々学んで成長するようにと指示をした。

家康は3日かけて伊勢、志摩の状態を確認すると浜松へと帰っていった。
家康が帰った翌日、左近が刹那に頼まれた人物を連れて帰ってきた。

「殿、ただいま戻りました。殿が求めていた方々をお連れしました。ただいま、部屋でお待ちいただいております。」

「左近、ご苦労だったね。今から会おう。」

刹那は左近を連れて待たせている部屋へと入った。

「よく来てくださいました。まずは表を上げてくださいませ。」

「殿、こちらの方が藤堂虎高殿。」

「お初にお目にかかります。藤堂虎高にございます。こたびは私のような者をお引き立てくださいましてまことにありがとうございます。微力ではありますが、神威様を殿と仰ぎ忠誠をお誓い申します。」

「そしてこちらが石田正継殿にございます。」

「石田正継にございます。武勲はございませんが、算術、雑務などはお任せくださりませ。」

「私が徳川家家臣、神威刹那です。家康様より伊勢と志摩の統治を任せていただいております。お二人共、これより神威家家臣として存分にお力を発揮してください。正継殿は算術や内政の腕が、虎高殿には武田家前当主の武田信虎殿に認められた武があります。よろしく頼みます。」

刹那はそう言うと頭を下げた。

それを見た二人は急いで頭を下げ返すのであった。
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