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第五章~近畿大波乱~
崩壊、そしてゼロからのスタート11
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「なに、内々に刹那と飲むために来たのだ。」
そう言うと信長は酒や肴を用意させ刹那と飲み始めた。
「刹那、信孝の件だが、どうしてあそこまで断る。信孝では不満か?」
「いえ、そのようなことはございません。信孝殿は良き武将になるでしょう。」
「ならばなぜだ。なぜに断る。」
「それは、私が家康様に天下人になってほしいと思っているからです。」
信長は刹那の本音に驚きを隠せなかった。
天下人を目指している信長相手に天下人になるのは家康だと宣言したのだから無理もない。
「わしでは天下人には不足だと。」
「はい。不足だと思います。もし、信長様が天下人の器であったなら私は信長様の元にお仕えしていたでしょう。」
信長は酒を一杯煽ると
「なにがわしに不足していると刹那は思うのだ。」
信長の真面目な顔を見た刹那は、
「人を思いやる心でございます。」
そう一言返した。
「思いやる心か。」
「信長様の才覚はまさに天下人に相応しいものがあると感じています。先を見る力はまさしく天下人そのものでしょう。しかし、信長様がそうでも周りの者はそれについてくることはできません。天下とは一人で手に入るものではないのですから、皆がついてこれなければダメなのです。」
「刹那はわしの考えについてこれるではないか。」
「私一人がそうであってもほかの多数が理解せねば同じことにございます。」
「家康にはそれがあると?」
「はい。ございます。家康様は先を見る力はそこまでありませぬが、とても家臣思いでお優しいのです。そのため、徳川の兵は殿のために死ぬことに躊躇がないのです。」
「そうか。だが、それで信孝を預かれぬのはどう繋がる?」
「わしに天下人の才がないのであれば信孝をお主の元においても問題はないと思うが。」
信長の言うことはもっともである。
信長では家康に勝てないと言ったのだからその息子である信孝を預かれぬと言う話は矛盾が生じる。
「信孝殿は次男の信雄殿よりも才覚がおありになると噂されております。だからこそ信孝殿を私の元においては兄弟に亀裂が生じるでしょう。そうなれば一番辛いのは信忠殿でしょう。兄として、次期当主として二つの顔で弟たちを見なければならないのですから。」
信長は黙って刹那の話を聞き続けた。
「それに、私は昌幸を家臣とする時にも本人が望めばと条件をつけました。信孝殿は織田を出て私の元に来ることを望まれるでしょうか?」
「わからぬ。我が子ながらそこまで子と関わりを持ってはおらぬからな。あやつがどう考えているかはわからん。」
「そうですか。では、一度信孝殿に二人で会わせていただけないでしょうか?それで信孝殿がどのようなお考えを持たれた子なのか見させてください。」
「わかった。明日その時間を設けよう。」
「ありがとうございます。」
本題の話が終わり、二人の飲みは緩やかに進んだ。
「刹那はわしが家康と敵対することを恐れておるな。」
「はい。信長様は野心が強いお方ゆえ、徳川が邪魔になれば倒そうとするのではないかと考えております。」
その返答に信長は ふっと少し笑うと
「安心せぇ。お主がいる徳川に敵対しても勝ち目などないのはよう理解しておる。徳川と手をとることはあっても敵対するつもりは毛頭ないわ。」
信長の言葉に心からそう述べていると感じた刹那は頭を軽く下げた。
「道三がわしに美濃を譲ると考えた時の気持ちはこんな感じだったのかも知れんな。」
そうぼそっと言って酒を飲んだ。
二人だけの飲みはその後信長が帰るまで続き、その日から二日後。
刹那は安土城のとある一室で信孝が来るのを待っていた。
「神威様、信孝様がお着きになりました。」
信長の小姓からそう声をかけられた刹那は頭を下げて信孝が入ってくるのを待った。
「神威様、どうぞお顔をおあげください。」
信孝は用意されていた上座に座ることなく刹那の座る下座の隣に座った。
これにはさすがの刹那も驚いた。
「(ほう、素直に用意されている上座に座ることなく対等であることを示そうとしたか。)」
「お初にお目にかかります。徳川家筆頭家老を務めております、神威刹那にございます。」
「織田信長が三男、織田信孝にございます。お会いしとうございました。」
そう言うと信孝は満面の笑みを見せた。
「織田家当主のご子息様にそのように言っていただいて光栄にございます。」
刹那のこの発言に対して信孝は少し考えた後に、
「なるほど、神威様は私を試しておいでなのですねっ!」
そう口にしたのだった。
そう言うと信長は酒や肴を用意させ刹那と飲み始めた。
「刹那、信孝の件だが、どうしてあそこまで断る。信孝では不満か?」
「いえ、そのようなことはございません。信孝殿は良き武将になるでしょう。」
「ならばなぜだ。なぜに断る。」
「それは、私が家康様に天下人になってほしいと思っているからです。」
信長は刹那の本音に驚きを隠せなかった。
天下人を目指している信長相手に天下人になるのは家康だと宣言したのだから無理もない。
「わしでは天下人には不足だと。」
「はい。不足だと思います。もし、信長様が天下人の器であったなら私は信長様の元にお仕えしていたでしょう。」
信長は酒を一杯煽ると
「なにがわしに不足していると刹那は思うのだ。」
信長の真面目な顔を見た刹那は、
「人を思いやる心でございます。」
そう一言返した。
「思いやる心か。」
「信長様の才覚はまさに天下人に相応しいものがあると感じています。先を見る力はまさしく天下人そのものでしょう。しかし、信長様がそうでも周りの者はそれについてくることはできません。天下とは一人で手に入るものではないのですから、皆がついてこれなければダメなのです。」
「刹那はわしの考えについてこれるではないか。」
「私一人がそうであってもほかの多数が理解せねば同じことにございます。」
「家康にはそれがあると?」
「はい。ございます。家康様は先を見る力はそこまでありませぬが、とても家臣思いでお優しいのです。そのため、徳川の兵は殿のために死ぬことに躊躇がないのです。」
「そうか。だが、それで信孝を預かれぬのはどう繋がる?」
「わしに天下人の才がないのであれば信孝をお主の元においても問題はないと思うが。」
信長の言うことはもっともである。
信長では家康に勝てないと言ったのだからその息子である信孝を預かれぬと言う話は矛盾が生じる。
「信孝殿は次男の信雄殿よりも才覚がおありになると噂されております。だからこそ信孝殿を私の元においては兄弟に亀裂が生じるでしょう。そうなれば一番辛いのは信忠殿でしょう。兄として、次期当主として二つの顔で弟たちを見なければならないのですから。」
信長は黙って刹那の話を聞き続けた。
「それに、私は昌幸を家臣とする時にも本人が望めばと条件をつけました。信孝殿は織田を出て私の元に来ることを望まれるでしょうか?」
「わからぬ。我が子ながらそこまで子と関わりを持ってはおらぬからな。あやつがどう考えているかはわからん。」
「そうですか。では、一度信孝殿に二人で会わせていただけないでしょうか?それで信孝殿がどのようなお考えを持たれた子なのか見させてください。」
「わかった。明日その時間を設けよう。」
「ありがとうございます。」
本題の話が終わり、二人の飲みは緩やかに進んだ。
「刹那はわしが家康と敵対することを恐れておるな。」
「はい。信長様は野心が強いお方ゆえ、徳川が邪魔になれば倒そうとするのではないかと考えております。」
その返答に信長は ふっと少し笑うと
「安心せぇ。お主がいる徳川に敵対しても勝ち目などないのはよう理解しておる。徳川と手をとることはあっても敵対するつもりは毛頭ないわ。」
信長の言葉に心からそう述べていると感じた刹那は頭を軽く下げた。
「道三がわしに美濃を譲ると考えた時の気持ちはこんな感じだったのかも知れんな。」
そうぼそっと言って酒を飲んだ。
二人だけの飲みはその後信長が帰るまで続き、その日から二日後。
刹那は安土城のとある一室で信孝が来るのを待っていた。
「神威様、信孝様がお着きになりました。」
信長の小姓からそう声をかけられた刹那は頭を下げて信孝が入ってくるのを待った。
「神威様、どうぞお顔をおあげください。」
信孝は用意されていた上座に座ることなく刹那の座る下座の隣に座った。
これにはさすがの刹那も驚いた。
「(ほう、素直に用意されている上座に座ることなく対等であることを示そうとしたか。)」
「お初にお目にかかります。徳川家筆頭家老を務めております、神威刹那にございます。」
「織田信長が三男、織田信孝にございます。お会いしとうございました。」
そう言うと信孝は満面の笑みを見せた。
「織田家当主のご子息様にそのように言っていただいて光栄にございます。」
刹那のこの発言に対して信孝は少し考えた後に、
「なるほど、神威様は私を試しておいでなのですねっ!」
そう口にしたのだった。
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