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第九章~西国での動き~
西日本大騒動6
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それから直虎への目通りは予定通り叶い、直昌は直虎の部屋へと通された。
「お初にお目にかかります。私は河野家家臣、大野直昌と申します。」
「これは御丁寧な挨拶痛み入ります。神威直虎です。それで、私への目通りとのことでしたが、どのようなことでしょうか?確か昨日、父上と目通りなされたと聞いておりますが。」
「はい。刹那殿に我ら河野家への援軍をお頼み致しました。されど、毛利家との手前、援軍を出すことは出来ぬと断られまして。そこで、次期当主であられる直虎殿に刹那殿を説得していただけないかと思いまして。」
直虎は直昌の話を聞いて少し考えるそぶりを見せた。
「当家では父上の申すことに異義を申すのは簡単ではありません。なにせ、徳川をこれほどまでの家にしたのは父上の才あればからこそです。私も父上へ意見することはまだ多くありません。なぜなら父上の話には道理があるからです。どんな者が聞いても納得する道理が。」
直虎の話しぶりに直昌の心には大きな焦りが生じる。
頼みの綱であった次期当主である直虎までが刹那と同じようなことを言うつもりなのではないかと感じたからである。
「ですが、父上に意見を申すことができる方もいます。」
「それは。」
「当家がお仕えする主、徳川家康様です。我らは徳川の家臣、いくら父上が何かを言おうが家康様がやると申されれば我らはそれに従うのみ。」
「ではっ。」
「ですが、大野殿がお仕えなされている河野家は毛利家と誼を通じている言わば毛利家の庇護下にある家柄です。そしてその毛利家と我ら徳川家は友好関係にあります。それが父上が今回の援軍をお断りした理由です。では、もしもですよ。河野家が毛利の庇護下ではなく、徳川の庇護下に置かれた家柄ならどうでしょうか?」
「徳川の庇護下。」
「徳川の庇護下にある家柄としては佐竹や武田などがありますが、もし長宗我部家が佐竹家に軍を向けたなら我らは即座に佐竹家を助けるために援軍を出すでしょう。」
「ですが、その判断を私の一存で決めることは出来ませぬ。」
「では、こう致しましょう。私が軍を率いて河野家の領内まで行き、河野家の御当主に目通りします。そこで皆さんで毛利家の庇護下から徳川の庇護下に入るか否かを決めていただく。そこでもし徳川の庇護下になられるのなら我らが全力を持って河野家をお助け致しましょう。」
「もし、もし徳川の庇護下に入らないと決めた時は。」
「毛利家の庇護下にある家に我らの軍がいるのは問題です。即座に軍を戻すのみ。」
直虎が言っているのは言わば主家替えの提案である。
しかもそれを断れば河野家は間違いなく滅ぶ。
ある種の脅しだ。
しかし、刹那の言うことも直虎の言うこともすべてもっともである。
この状況で家臣に過ぎない直昌が出せる答えはひとつだけである。
「わかりました。私の命に代えてでも説得して見せます。どうか、援軍をお出しください。」
直昌はそう言って直虎に頭を下げた。
それからの神威家の行動は早かった。
直虎はすぐに刹那に話を通し、刹那はその話を聞いた後すぐに用意させていた援軍を翌日には出立すると命令を出した。
「では、父上。行って参ります。」
「あぁ。直虎、しっかり役目を果たせ。」
「出陣っ!!」
「「「「「おおおおおおおおおっ!!!!!」」」」」
直虎の出立を見届けた刹那はそばに控えていた直政に、
「では、我らも羽柴との領土境に行くとしようか。」
「はっ。」
そう会話をしてその日のうちに軍を進めた。
神威勢が進軍したことはすぐさま家康の元に届けられた。
「直親、では頼んだぞ。」
「はっ。では、行って参ります。」
家康は刹那からの頼みを受けて援軍を出して空になる神威領内に警備の兵を出すことを決定しており、その指揮官として直親を選んだのである。
刹那が羽柴との領土境に進軍を開始してから数日後に秀吉は本拠地である姫路城でその知らせを受けた。
「なっ、それは誠か官兵衛っ!」
「はい。どうやら我らが毛利へ軍を進めることどこからか漏れたようにございます。」
「なんだとっ。これでは予定よりも多く領内に兵を残さねばならんではないか。」
「はい。それが懸命かと思われます。」
「だが、そうなれば毛利への攻勢が遅れをとるぞ。せっかく山名を降し、宇喜多も配下に加えたと言うに。」
「お気持ちは重々承知しておりますが、神威は油断ならぬ相手、警備の兵を少なくすれば後ろから攻められることにもなりかねません。」
「ではどうする?」
「我らの兵の半数を神威側へ、もう半数のうち7割を毛利へ当てましょう。」
「残りの3割は?」
「神威との動きが平行線であるならば毛利侵攻へ、もし神威が予想以上であればそちらの援軍へ。」
官兵衛の策を聞いて秀吉は、
「わかった。すべて官兵衛に任せる。」
「お初にお目にかかります。私は河野家家臣、大野直昌と申します。」
「これは御丁寧な挨拶痛み入ります。神威直虎です。それで、私への目通りとのことでしたが、どのようなことでしょうか?確か昨日、父上と目通りなされたと聞いておりますが。」
「はい。刹那殿に我ら河野家への援軍をお頼み致しました。されど、毛利家との手前、援軍を出すことは出来ぬと断られまして。そこで、次期当主であられる直虎殿に刹那殿を説得していただけないかと思いまして。」
直虎は直昌の話を聞いて少し考えるそぶりを見せた。
「当家では父上の申すことに異義を申すのは簡単ではありません。なにせ、徳川をこれほどまでの家にしたのは父上の才あればからこそです。私も父上へ意見することはまだ多くありません。なぜなら父上の話には道理があるからです。どんな者が聞いても納得する道理が。」
直虎の話しぶりに直昌の心には大きな焦りが生じる。
頼みの綱であった次期当主である直虎までが刹那と同じようなことを言うつもりなのではないかと感じたからである。
「ですが、父上に意見を申すことができる方もいます。」
「それは。」
「当家がお仕えする主、徳川家康様です。我らは徳川の家臣、いくら父上が何かを言おうが家康様がやると申されれば我らはそれに従うのみ。」
「ではっ。」
「ですが、大野殿がお仕えなされている河野家は毛利家と誼を通じている言わば毛利家の庇護下にある家柄です。そしてその毛利家と我ら徳川家は友好関係にあります。それが父上が今回の援軍をお断りした理由です。では、もしもですよ。河野家が毛利の庇護下ではなく、徳川の庇護下に置かれた家柄ならどうでしょうか?」
「徳川の庇護下。」
「徳川の庇護下にある家柄としては佐竹や武田などがありますが、もし長宗我部家が佐竹家に軍を向けたなら我らは即座に佐竹家を助けるために援軍を出すでしょう。」
「ですが、その判断を私の一存で決めることは出来ませぬ。」
「では、こう致しましょう。私が軍を率いて河野家の領内まで行き、河野家の御当主に目通りします。そこで皆さんで毛利家の庇護下から徳川の庇護下に入るか否かを決めていただく。そこでもし徳川の庇護下になられるのなら我らが全力を持って河野家をお助け致しましょう。」
「もし、もし徳川の庇護下に入らないと決めた時は。」
「毛利家の庇護下にある家に我らの軍がいるのは問題です。即座に軍を戻すのみ。」
直虎が言っているのは言わば主家替えの提案である。
しかもそれを断れば河野家は間違いなく滅ぶ。
ある種の脅しだ。
しかし、刹那の言うことも直虎の言うこともすべてもっともである。
この状況で家臣に過ぎない直昌が出せる答えはひとつだけである。
「わかりました。私の命に代えてでも説得して見せます。どうか、援軍をお出しください。」
直昌はそう言って直虎に頭を下げた。
それからの神威家の行動は早かった。
直虎はすぐに刹那に話を通し、刹那はその話を聞いた後すぐに用意させていた援軍を翌日には出立すると命令を出した。
「では、父上。行って参ります。」
「あぁ。直虎、しっかり役目を果たせ。」
「出陣っ!!」
「「「「「おおおおおおおおおっ!!!!!」」」」」
直虎の出立を見届けた刹那はそばに控えていた直政に、
「では、我らも羽柴との領土境に行くとしようか。」
「はっ。」
そう会話をしてその日のうちに軍を進めた。
神威勢が進軍したことはすぐさま家康の元に届けられた。
「直親、では頼んだぞ。」
「はっ。では、行って参ります。」
家康は刹那からの頼みを受けて援軍を出して空になる神威領内に警備の兵を出すことを決定しており、その指揮官として直親を選んだのである。
刹那が羽柴との領土境に進軍を開始してから数日後に秀吉は本拠地である姫路城でその知らせを受けた。
「なっ、それは誠か官兵衛っ!」
「はい。どうやら我らが毛利へ軍を進めることどこからか漏れたようにございます。」
「なんだとっ。これでは予定よりも多く領内に兵を残さねばならんではないか。」
「はい。それが懸命かと思われます。」
「だが、そうなれば毛利への攻勢が遅れをとるぞ。せっかく山名を降し、宇喜多も配下に加えたと言うに。」
「お気持ちは重々承知しておりますが、神威は油断ならぬ相手、警備の兵を少なくすれば後ろから攻められることにもなりかねません。」
「ではどうする?」
「我らの兵の半数を神威側へ、もう半数のうち7割を毛利へ当てましょう。」
「残りの3割は?」
「神威との動きが平行線であるならば毛利侵攻へ、もし神威が予想以上であればそちらの援軍へ。」
官兵衛の策を聞いて秀吉は、
「わかった。すべて官兵衛に任せる。」
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