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第九章~西国での動き~
西日本大騒動15
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「まずは表面上だけでも徳川につかせたことで何かあれば今度は手打ちとすることが可能になります。故に長宗我部にはその火種となってもらうつもりで滅ぼしませんでした。」
「ほう、つまりは再度長宗我部が河野を攻めた暁には河野を窮地に追いやるつもりだと言うことだな?」
「はい。それでも毛利へと河野家が考えるなら大人しく滅んでもらいます。ですがもし徳川への気持ちを強めるようであれば救い、これからは徳川のために働いてもらいますよ。」
「ふっ、神威家は安泰だな。」
「は?」
「稀代の名将の息子は皆愚か者だと世間では言うが、神威家は別だ。刹那殿、そして直虎殿、どちらも名将たる人物よ。」
「父上はとても才あるお方で尊敬しております。しかし、私はまだ父を越えることなど出来ておりません。私が名将とは遠い言葉にのざいます。」
「ふっ、刹那殿に比べたら皆、才なき者になってしまうわ。安心せい、直虎殿は名将の器だ。故にこれからも油断なく精進なされよ。さすれば父上も越す名将になるやも知れぬぞ?」
「ありがとうございます。義重殿の期待を裏切ることがないよう、努力して参ります。」
「ところで、直虎殿は明日には勝瑞城をお出になるのか?」
「はい、そのつもりでおりました。父上が霧山におらぬ今、私が代わりを務めねばなりませぬゆえ。」
「そうか。では刹那殿にまた遊びに行くと伝えてくれ。」
「承知いたしました。」
翌日、直虎は霧山御所へと帰って行った。
その後ろ姿を見ながら義重は
「本当にあの時に素直に徳川に降伏して良かった。そうでなければ今頃佐竹の名はなくなっていたであろうな。」
そう独り言を呟くのであった。
一方、直虎の四国遠征を見送った刹那は霧山御所を出立した後に一度本願寺顕如の元を訪れていた。
「そうですか、これから播磨のほうへ。」
「ええ、秀吉殿が毛利と事を起こそうとする動きが見られまして。毛利家より依頼を受けたのです。」
「刹那殿には休む暇もありませぬなぁ。」
そう言いながら顕如は茶を啜った。
「ははは、家康さまに天下人になっていただくと決めた時からそれは覚悟しておりますよ。ですがこれでもゆっくりしているほうなのですよ?」
「ほう、そういえば確かにここで茶を啜ることなど戦に行く前にはなかなか難しいはず。」
「今回の主軸となるのは四国の長宗我部との戦いでしょうからね。それを直虎に任せておりますから、私はゆっくりと播磨へ向かいますよ。」
「刹那殿がそこまで信頼しておいでとは、ご子息もなかなかの武士なのですな。」
「本人には言いませんが、優れた男ですよ。」
刹那が身内を素直に褒めるのを見て微笑ましい顔で相槌を打つ顕如であった。
「して、刹那殿が戦の前にここに来るのは茶だけではないと思いますが、どのような本題がおありで?」
顕如は先ほどの優しげな顔から数万もの門徒をまとめる宗主の顔に変わった。
「さすがは顕如殿、お話が早くて助かります。門徒の下間頼廉殿をお借りしたい。」
「ほう、頼廉をですか。どうしてまた?」
「今回の羽柴との戦いは毛利家の援軍だけにあらず、羽柴の勢いを完璧に抑える必要があるのです。」
「羽柴の勢いを。」
「新たな織田家が誕生したとはいえ、旧織田家の名だたる者達の半数ほどは羽柴家に入りました。優れた武将が多いところは小国でも油断ならぬもの。しかし、羽柴は小国にあらず、ここで毛利へと領土を拡大されては後々に我らへの大きな脅威となるやもしれません。そのためにも今回の羽柴との対峙は我らが優位に立ち、下手に行動すれば羽柴家が滅ぶ。そう思わせたいのです。」
「そのために頼廉を借りたいと?」
「はい。本願寺の軍部をまとめていた手腕をお借りしたい。当家は現在半数を四国へと送っており少々迫力にかけてしまうのです。」
「ほっほっほ、あれほどの武将を揃えていて迫力にかけるとはさすがは刹那殿ですな。よろしいでしょう。我らは大和へと移ることを決めた時から神威家に出来る限りの助力すると決めておりますからな。下間頼廉、そして本願寺の僧侶 1000人ほどお貸ししましょう。僧侶達もいればあちらの浄土真宗を信仰している兵が降伏してくるやもしれませんしな。」
「ありがとうございます。これで必ずや我らが勝利して羽柴の勢いを削げることでしょう。」
「では代わりに戻られたら門徒達に御高説をたまわりたいのですがよろしいですかな?」
「ええ、私のような者の話でよければいくらでも。」
「刹那殿のお話は私どもも含めて皆勉強になりますからな。」
こうして刹那の軍には下間頼廉と僧侶兵1000が加わったのである。
僧侶兵がいた効果は大きく、播磨に入るまで志願兵が2000も増えることとなった。
「伝令、神威軍が有岡城へと迫っております。」
「なにっ!」
神威軍の行動に秀吉は驚いた。
「官兵衛、神威軍は脅しだけで攻めてはこないと予想したことははずれたようだぞ。」
「ご安心を。その事も考えて有岡城には池田恒興殿を入れたのではありませんか。」
「ほう、つまりは再度長宗我部が河野を攻めた暁には河野を窮地に追いやるつもりだと言うことだな?」
「はい。それでも毛利へと河野家が考えるなら大人しく滅んでもらいます。ですがもし徳川への気持ちを強めるようであれば救い、これからは徳川のために働いてもらいますよ。」
「ふっ、神威家は安泰だな。」
「は?」
「稀代の名将の息子は皆愚か者だと世間では言うが、神威家は別だ。刹那殿、そして直虎殿、どちらも名将たる人物よ。」
「父上はとても才あるお方で尊敬しております。しかし、私はまだ父を越えることなど出来ておりません。私が名将とは遠い言葉にのざいます。」
「ふっ、刹那殿に比べたら皆、才なき者になってしまうわ。安心せい、直虎殿は名将の器だ。故にこれからも油断なく精進なされよ。さすれば父上も越す名将になるやも知れぬぞ?」
「ありがとうございます。義重殿の期待を裏切ることがないよう、努力して参ります。」
「ところで、直虎殿は明日には勝瑞城をお出になるのか?」
「はい、そのつもりでおりました。父上が霧山におらぬ今、私が代わりを務めねばなりませぬゆえ。」
「そうか。では刹那殿にまた遊びに行くと伝えてくれ。」
「承知いたしました。」
翌日、直虎は霧山御所へと帰って行った。
その後ろ姿を見ながら義重は
「本当にあの時に素直に徳川に降伏して良かった。そうでなければ今頃佐竹の名はなくなっていたであろうな。」
そう独り言を呟くのであった。
一方、直虎の四国遠征を見送った刹那は霧山御所を出立した後に一度本願寺顕如の元を訪れていた。
「そうですか、これから播磨のほうへ。」
「ええ、秀吉殿が毛利と事を起こそうとする動きが見られまして。毛利家より依頼を受けたのです。」
「刹那殿には休む暇もありませぬなぁ。」
そう言いながら顕如は茶を啜った。
「ははは、家康さまに天下人になっていただくと決めた時からそれは覚悟しておりますよ。ですがこれでもゆっくりしているほうなのですよ?」
「ほう、そういえば確かにここで茶を啜ることなど戦に行く前にはなかなか難しいはず。」
「今回の主軸となるのは四国の長宗我部との戦いでしょうからね。それを直虎に任せておりますから、私はゆっくりと播磨へ向かいますよ。」
「刹那殿がそこまで信頼しておいでとは、ご子息もなかなかの武士なのですな。」
「本人には言いませんが、優れた男ですよ。」
刹那が身内を素直に褒めるのを見て微笑ましい顔で相槌を打つ顕如であった。
「して、刹那殿が戦の前にここに来るのは茶だけではないと思いますが、どのような本題がおありで?」
顕如は先ほどの優しげな顔から数万もの門徒をまとめる宗主の顔に変わった。
「さすがは顕如殿、お話が早くて助かります。門徒の下間頼廉殿をお借りしたい。」
「ほう、頼廉をですか。どうしてまた?」
「今回の羽柴との戦いは毛利家の援軍だけにあらず、羽柴の勢いを完璧に抑える必要があるのです。」
「羽柴の勢いを。」
「新たな織田家が誕生したとはいえ、旧織田家の名だたる者達の半数ほどは羽柴家に入りました。優れた武将が多いところは小国でも油断ならぬもの。しかし、羽柴は小国にあらず、ここで毛利へと領土を拡大されては後々に我らへの大きな脅威となるやもしれません。そのためにも今回の羽柴との対峙は我らが優位に立ち、下手に行動すれば羽柴家が滅ぶ。そう思わせたいのです。」
「そのために頼廉を借りたいと?」
「はい。本願寺の軍部をまとめていた手腕をお借りしたい。当家は現在半数を四国へと送っており少々迫力にかけてしまうのです。」
「ほっほっほ、あれほどの武将を揃えていて迫力にかけるとはさすがは刹那殿ですな。よろしいでしょう。我らは大和へと移ることを決めた時から神威家に出来る限りの助力すると決めておりますからな。下間頼廉、そして本願寺の僧侶 1000人ほどお貸ししましょう。僧侶達もいればあちらの浄土真宗を信仰している兵が降伏してくるやもしれませんしな。」
「ありがとうございます。これで必ずや我らが勝利して羽柴の勢いを削げることでしょう。」
「では代わりに戻られたら門徒達に御高説をたまわりたいのですがよろしいですかな?」
「ええ、私のような者の話でよければいくらでも。」
「刹那殿のお話は私どもも含めて皆勉強になりますからな。」
こうして刹那の軍には下間頼廉と僧侶兵1000が加わったのである。
僧侶兵がいた効果は大きく、播磨に入るまで志願兵が2000も増えることとなった。
「伝令、神威軍が有岡城へと迫っております。」
「なにっ!」
神威軍の行動に秀吉は驚いた。
「官兵衛、神威軍は脅しだけで攻めてはこないと予想したことははずれたようだぞ。」
「ご安心を。その事も考えて有岡城には池田恒興殿を入れたのではありませんか。」
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