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第九章~西国での動き~
西日本大騒動16
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「そっ、そうであったな。恒興なら大丈夫であろう。」
池田恒興、織田信長の古くからの家臣で信長が心を許した数少ない武将の一人。
信長が本能寺で倒れると同じ家臣の秀吉と行動を共にした。
秀吉の横柄な態度をあまりに快くは思っていないが今さら信孝の元に行くことも出来ずに仕方なく今回の有岡城入城が決まったのである。
「父上、神威軍が攻めてきました。」
息子である元助が恒興にそう進言してきた。
「やはり来たか。秀吉め、面倒な立ち回りをさせおって。」
「ここは秀吉殿の援軍が来るまで籠城致しますか。」
「それしかあるまい。誰か、秀吉へ援軍を要請せよ。」
一方、有岡城を包囲した刹那は、
「予想通り、有岡城には池田恒興殿を入れてきたか。」
「では、手筈通りに?」
「あぁ。」
左近の問いに刹那がそう答えると音もさせずに忍が現れた。
「これを池田恒興殿へ渡してくれ。」
忍は刹那から書状を渡されるとすぐにその場からいなくなった。
刹那が忍に恒興への書状を託した夜、
恒興は一人、自室でこれからのことを考えていた。
「なにやつっ!」
部屋の外に人の気配を感じた恒興はそう言いながら襖を開けた。
すると中庭に控える一人の忍を見つけた。
「どこの者だ。」
「私は神威家の忍、伊賀衆の赤松と申します。主より池田恒興様宛ての書状を預かりましたのでお持ちいたしました。」
赤松が出してきた書状を静かに受け取るとその場で読み出した。
書状を読み終えた恒興は一言。
「あいわかった。」
そう返事をした。
恒興の返答を聞いた赤松はその場から姿を消した。
「殿。」
本陣で一人考え事をしていた刹那の元にそう声が届いた。
「戻ったか赤松。どうであった。」
「あいわかった。とのことでございました。」
「そうか。では明日、頼んだぞ。」
「はっ。」
赤松がいなくなると刹那は綺麗に晴れた夜空を眺めた。
翌日、神威軍は包囲だけで攻勢に出ることはなかった。
そしてその夜、恒興は赤松に連れられてとある場所まで来ていた。
「お待ちしておりました恒興殿。」
そこには刹那が一人、兵も連れずにやってきていた。
「まさか、このような形でお会いすることになろうとは。お久しぶりですな、刹那殿。」
「ええ、全くです。恒興殿。清洲での後継者を決める会議以来ですね。息災のようでまずはなによりです。」
「昔話はよそう。それでわざわざ私を呼び出した理由をお聞きしたい。」
「恒興殿が秀吉殿に付いている理由を訪ねたい。そのために話ができるように書状を出させてもらいました。」
すると恒興は静かに、
「ふっ。なぜに私は秀吉の元にいるんだろうか。それは、私にもよくわからん。秀吉が信長様に気に入られていたからなのか、はたまたあの人垂らしにほだされたのか。気付いたら私は秀吉の元にいた。そして今、信長様のご子息である信孝様の師であり養父である刹那殿と敵味方と別れて対峙しているわけだ。」
恒興の悲しそうな顔を見た刹那は、
「今からでも信長殿への忠義をまた思い出しませんか?」
刹那の言葉に
「信長様への忠義を?」
「はい。信孝を預かった時に信長殿に言われたのです。信孝は親からの愛情をそれほど与えてやれなかった。その代わり、勝家、そして恒興には世話になったのだ。と。そして信孝も申しておりましたよ。今日の私がいるのは恒興や勝家のおかげだ。とね。」
「ふっ。信孝様がそのようなことを。」
「恒興殿が信孝の新たな織田家へと入れば信孝は相当心強いでしょう。」
刹那の言葉に恒興は笑みを浮かべながら首を横に振った。
「それは出来ぬよ、刹那殿。私は一度織田家を裏切ったのだ。大恩ある織田家を。それに新たな織田家に私のような古株は邪魔になるでしょう。」
「ではまた有岡城に戻り秀吉の部下として過ごすと。」
その問いに恒興は頷く。
「それが私に残された定めだ。」
「そうですか。では、私はそんなあなたをここから生きて帰すわけにはいきませんね。」
刹那はそう言うと自分の刀を抜くと恒興に切りかかった。
恒興はそれに対して逆らうことなく斬られようとした。
刹那の刀が恒興の頭を斬ろうとした瞬間その刃は直前で止まった。
いつまでも来ない刃を不思議に思った恒興がゆっくり目を開けると目の前に刃があった。
刹那は刀をそこから終うと
「恒興殿、これであなたはこの世から死んだ。今、神威刹那に討ち取られて死んだのです。ですが、実際にはあなたは生きている。その意味がお分かりになりますよね?」
「新たに生まれ変わりこの後の人生を始めろと。」
刹那は頷いた。
「確かに私はここで死んだろう。だが、それでも信孝様の元へ行くことは出来ない。これだけは譲れんのだ。」
「なぜですかっ!あなたほどの人物を私は殺したくないっ!あなたにはこれからも生きてやるべきことがあるはずだ。」
刹那が必死に説得をするのを見て恒興は小さく笑った。
「刹那殿、そこまで申されるのなら、この池田恒興をお主の配下に加えてみんか?」
池田恒興、織田信長の古くからの家臣で信長が心を許した数少ない武将の一人。
信長が本能寺で倒れると同じ家臣の秀吉と行動を共にした。
秀吉の横柄な態度をあまりに快くは思っていないが今さら信孝の元に行くことも出来ずに仕方なく今回の有岡城入城が決まったのである。
「父上、神威軍が攻めてきました。」
息子である元助が恒興にそう進言してきた。
「やはり来たか。秀吉め、面倒な立ち回りをさせおって。」
「ここは秀吉殿の援軍が来るまで籠城致しますか。」
「それしかあるまい。誰か、秀吉へ援軍を要請せよ。」
一方、有岡城を包囲した刹那は、
「予想通り、有岡城には池田恒興殿を入れてきたか。」
「では、手筈通りに?」
「あぁ。」
左近の問いに刹那がそう答えると音もさせずに忍が現れた。
「これを池田恒興殿へ渡してくれ。」
忍は刹那から書状を渡されるとすぐにその場からいなくなった。
刹那が忍に恒興への書状を託した夜、
恒興は一人、自室でこれからのことを考えていた。
「なにやつっ!」
部屋の外に人の気配を感じた恒興はそう言いながら襖を開けた。
すると中庭に控える一人の忍を見つけた。
「どこの者だ。」
「私は神威家の忍、伊賀衆の赤松と申します。主より池田恒興様宛ての書状を預かりましたのでお持ちいたしました。」
赤松が出してきた書状を静かに受け取るとその場で読み出した。
書状を読み終えた恒興は一言。
「あいわかった。」
そう返事をした。
恒興の返答を聞いた赤松はその場から姿を消した。
「殿。」
本陣で一人考え事をしていた刹那の元にそう声が届いた。
「戻ったか赤松。どうであった。」
「あいわかった。とのことでございました。」
「そうか。では明日、頼んだぞ。」
「はっ。」
赤松がいなくなると刹那は綺麗に晴れた夜空を眺めた。
翌日、神威軍は包囲だけで攻勢に出ることはなかった。
そしてその夜、恒興は赤松に連れられてとある場所まで来ていた。
「お待ちしておりました恒興殿。」
そこには刹那が一人、兵も連れずにやってきていた。
「まさか、このような形でお会いすることになろうとは。お久しぶりですな、刹那殿。」
「ええ、全くです。恒興殿。清洲での後継者を決める会議以来ですね。息災のようでまずはなによりです。」
「昔話はよそう。それでわざわざ私を呼び出した理由をお聞きしたい。」
「恒興殿が秀吉殿に付いている理由を訪ねたい。そのために話ができるように書状を出させてもらいました。」
すると恒興は静かに、
「ふっ。なぜに私は秀吉の元にいるんだろうか。それは、私にもよくわからん。秀吉が信長様に気に入られていたからなのか、はたまたあの人垂らしにほだされたのか。気付いたら私は秀吉の元にいた。そして今、信長様のご子息である信孝様の師であり養父である刹那殿と敵味方と別れて対峙しているわけだ。」
恒興の悲しそうな顔を見た刹那は、
「今からでも信長殿への忠義をまた思い出しませんか?」
刹那の言葉に
「信長様への忠義を?」
「はい。信孝を預かった時に信長殿に言われたのです。信孝は親からの愛情をそれほど与えてやれなかった。その代わり、勝家、そして恒興には世話になったのだ。と。そして信孝も申しておりましたよ。今日の私がいるのは恒興や勝家のおかげだ。とね。」
「ふっ。信孝様がそのようなことを。」
「恒興殿が信孝の新たな織田家へと入れば信孝は相当心強いでしょう。」
刹那の言葉に恒興は笑みを浮かべながら首を横に振った。
「それは出来ぬよ、刹那殿。私は一度織田家を裏切ったのだ。大恩ある織田家を。それに新たな織田家に私のような古株は邪魔になるでしょう。」
「ではまた有岡城に戻り秀吉の部下として過ごすと。」
その問いに恒興は頷く。
「それが私に残された定めだ。」
「そうですか。では、私はそんなあなたをここから生きて帰すわけにはいきませんね。」
刹那はそう言うと自分の刀を抜くと恒興に切りかかった。
恒興はそれに対して逆らうことなく斬られようとした。
刹那の刀が恒興の頭を斬ろうとした瞬間その刃は直前で止まった。
いつまでも来ない刃を不思議に思った恒興がゆっくり目を開けると目の前に刃があった。
刹那は刀をそこから終うと
「恒興殿、これであなたはこの世から死んだ。今、神威刹那に討ち取られて死んだのです。ですが、実際にはあなたは生きている。その意味がお分かりになりますよね?」
「新たに生まれ変わりこの後の人生を始めろと。」
刹那は頷いた。
「確かに私はここで死んだろう。だが、それでも信孝様の元へ行くことは出来ない。これだけは譲れんのだ。」
「なぜですかっ!あなたほどの人物を私は殺したくないっ!あなたにはこれからも生きてやるべきことがあるはずだ。」
刹那が必死に説得をするのを見て恒興は小さく笑った。
「刹那殿、そこまで申されるのなら、この池田恒興をお主の配下に加えてみんか?」
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