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第九章~西国での動き~
世代交代への波2
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「あぁ。問題なく対応したぞ。」
「父上っ。」
昌幸は涙が止まらず言葉につまった。
「幸隆が、ずっと寝ているから皆心配して見守っていたのですよ。」
おとわがそう優しく話しかけると
「そうでございましたか。」
幸隆はそう言うと体を起こした。
それを支えるように刹那が補助に入った。
「殿。」
「なんだ。」
「長い間お世話になりました。幸隆は先にお暇をいただくことになりましたな。」
「なにを申すか。こちらこそお前には返しきれないほど世話になった。」
「必ずや、殿が望む徳川家に天下を取らせる野望、叶えてくださいませ。幸隆は空から見守っております。」
「わかった。」
「おとわ様、これからも殿のこと、お支えくださいますよう。」
「もちろん。」
「若、昌幸はまだ未熟なれど必ずや若のお力になりましょう。どうか、次期当主として精進なさいますよう。」
「あぁ。私の名がじぃの元へ轟くほど活躍をしてみせる。」
「海玄殿、いえ、最後にございます。ここは御館様とお呼びさせていただきます。幸隆はお先に失礼しますが、御館様はせめて松姫様のお子を見てからいらしてくださいませ。」
「わかっておる。幸隆、今までよくわしに着いてきてくれたな。」
「最後に昌幸。」
「はいっ。」
「お前は兄達に比べてもわしによく似ておる。これからも殿の元で学び、若の支えとなれるように日々精進せよ。」
「はいっ。父上に負けぬよう精進して参りますので、御安心下さりませ。」
昌幸は最後に笑顔でそう返事を返した。
それを見た幸隆は満足したようにゆっくりと目を閉じた。
武田信玄の頭脳として、そして神威家の年寄り衆として数々の功績を残してきた真田幸隆、ここに死す。
幸隆の葬儀は本人の希望もあり厳かに執り行われた。
「はぁ。」
刹那が中庭で一人でぼーっとしていると
「あなた。」
おとわが声をかけてきた。
「おとわ。本当に幸隆殿が死んでしまったな。海玄のあの落ち込みようはすごかった。」
「それだけ幸隆殿は海玄殿にとっても大切な方だったと言うことですね。」
「あぁ。信玄公の時代から自分を支えたくれた重臣で海玄となった後も自分のそばにずっといた人物だからな。それだけ思い入れが強いのだろう。」
「ですが、海玄殿のことです、きっと明日には切り替えて普段の態度をしておられると思いますよ。」
「そうだな。私もそうせねばならんな。」
「はい。あなたは神威家の御当主様ですから。ですが、今日くらいは泣いてもよろしいのではないですか?」
「だが、家臣に見られたら。」
「自分の殿が家臣のために涙を流している。それはほかの家臣の心に忠誠心を抱かせることはあっても失望させることはないと私は思いますよ。少なくとも私は涙を流さないあなたよりも人間らしいあなたのほうが好きにございます。」
「そうか。」
刹那がそういうと目から大量の涙を溢れさせた。
「幸隆殿・・・・・。」
刹那はそれから多くの涙を流した。
翌日、改めて今回の羽柴、長宗我部への対応を報告する軍議が行われた。
「皆、幸隆が死んで悲しいだろうが気持ちを切り替えろ。そんなことでは幸隆にあの世から叱られるぞ!」
「そうじゃぞ、皆、幸隆の小言は嫌と言うほど聞いてきたはずじゃ。」
刹那、海玄がそう言うと軍議の雰囲気は普段のものへと変わった。
それからまず直虎が河野への援軍であったことを報告した。
「そうか、直虎良くやった。お前の判断は正しいと私も思うぞ。」
「はっ。ありがとうございます。」
「それで、そこに控えるのが大野直昌か?」
刹那が一番下座に控えている直昌を見てそう言った。
「お初にお目にかかります。大野直昌と申します。」
「よく来てくれた。これからは直虎の家臣として直虎を支えてやってくれ。」
「はっ。」
「直虎に聞くかぎり相当に優秀な武士だそうだ、直政もうかうかとしてられないな。」
刹那がそう言いながら笑うと家臣達も同様に笑った。
「殿。私だって直虎様をお支えする立場として負けるわけには行きませぬ!」
「うむ、その粋だ!昌幸や吉継、氏郷、高虎、ほかにも多くの若い者達には直虎の支えとなってもらわねばならん。期待しているぞ。」
「「「「「はっ。」」」」」
「殿。」
「どうした左近?」
「若者に頑張ってもらうのはもちろん大事ですが、我ら殿が若き頃よりお仕えする者らも若者にはまだまだ負けませぬぞ。」
「父上っ。」
昌幸は涙が止まらず言葉につまった。
「幸隆が、ずっと寝ているから皆心配して見守っていたのですよ。」
おとわがそう優しく話しかけると
「そうでございましたか。」
幸隆はそう言うと体を起こした。
それを支えるように刹那が補助に入った。
「殿。」
「なんだ。」
「長い間お世話になりました。幸隆は先にお暇をいただくことになりましたな。」
「なにを申すか。こちらこそお前には返しきれないほど世話になった。」
「必ずや、殿が望む徳川家に天下を取らせる野望、叶えてくださいませ。幸隆は空から見守っております。」
「わかった。」
「おとわ様、これからも殿のこと、お支えくださいますよう。」
「もちろん。」
「若、昌幸はまだ未熟なれど必ずや若のお力になりましょう。どうか、次期当主として精進なさいますよう。」
「あぁ。私の名がじぃの元へ轟くほど活躍をしてみせる。」
「海玄殿、いえ、最後にございます。ここは御館様とお呼びさせていただきます。幸隆はお先に失礼しますが、御館様はせめて松姫様のお子を見てからいらしてくださいませ。」
「わかっておる。幸隆、今までよくわしに着いてきてくれたな。」
「最後に昌幸。」
「はいっ。」
「お前は兄達に比べてもわしによく似ておる。これからも殿の元で学び、若の支えとなれるように日々精進せよ。」
「はいっ。父上に負けぬよう精進して参りますので、御安心下さりませ。」
昌幸は最後に笑顔でそう返事を返した。
それを見た幸隆は満足したようにゆっくりと目を閉じた。
武田信玄の頭脳として、そして神威家の年寄り衆として数々の功績を残してきた真田幸隆、ここに死す。
幸隆の葬儀は本人の希望もあり厳かに執り行われた。
「はぁ。」
刹那が中庭で一人でぼーっとしていると
「あなた。」
おとわが声をかけてきた。
「おとわ。本当に幸隆殿が死んでしまったな。海玄のあの落ち込みようはすごかった。」
「それだけ幸隆殿は海玄殿にとっても大切な方だったと言うことですね。」
「あぁ。信玄公の時代から自分を支えたくれた重臣で海玄となった後も自分のそばにずっといた人物だからな。それだけ思い入れが強いのだろう。」
「ですが、海玄殿のことです、きっと明日には切り替えて普段の態度をしておられると思いますよ。」
「そうだな。私もそうせねばならんな。」
「はい。あなたは神威家の御当主様ですから。ですが、今日くらいは泣いてもよろしいのではないですか?」
「だが、家臣に見られたら。」
「自分の殿が家臣のために涙を流している。それはほかの家臣の心に忠誠心を抱かせることはあっても失望させることはないと私は思いますよ。少なくとも私は涙を流さないあなたよりも人間らしいあなたのほうが好きにございます。」
「そうか。」
刹那がそういうと目から大量の涙を溢れさせた。
「幸隆殿・・・・・。」
刹那はそれから多くの涙を流した。
翌日、改めて今回の羽柴、長宗我部への対応を報告する軍議が行われた。
「皆、幸隆が死んで悲しいだろうが気持ちを切り替えろ。そんなことでは幸隆にあの世から叱られるぞ!」
「そうじゃぞ、皆、幸隆の小言は嫌と言うほど聞いてきたはずじゃ。」
刹那、海玄がそう言うと軍議の雰囲気は普段のものへと変わった。
それからまず直虎が河野への援軍であったことを報告した。
「そうか、直虎良くやった。お前の判断は正しいと私も思うぞ。」
「はっ。ありがとうございます。」
「それで、そこに控えるのが大野直昌か?」
刹那が一番下座に控えている直昌を見てそう言った。
「お初にお目にかかります。大野直昌と申します。」
「よく来てくれた。これからは直虎の家臣として直虎を支えてやってくれ。」
「はっ。」
「直虎に聞くかぎり相当に優秀な武士だそうだ、直政もうかうかとしてられないな。」
刹那がそう言いながら笑うと家臣達も同様に笑った。
「殿。私だって直虎様をお支えする立場として負けるわけには行きませぬ!」
「うむ、その粋だ!昌幸や吉継、氏郷、高虎、ほかにも多くの若い者達には直虎の支えとなってもらわねばならん。期待しているぞ。」
「「「「「はっ。」」」」」
「殿。」
「どうした左近?」
「若者に頑張ってもらうのはもちろん大事ですが、我ら殿が若き頃よりお仕えする者らも若者にはまだまだ負けませぬぞ。」
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