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ライオンの尻尾
金一封は2000銀貨
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戦勝祭は2日間。
翌日の戦勝祭は軍隊学校の生徒達も休みで王都カモントに繰り出せた。
朝食時に寮の食堂でガモン教官が、
「分かってると思うが飲酒はするなよ? 特にレストっ!」
「飲みませんよ」
「女も買うなよっ! 馬鹿な酔っ払いとも喧嘩をするなっ! おまえ達は栄えあるモルリント王国の兵士候補なんだからなっ!」
それで普段は終わるのだが、
「それと・・・2年のガンダがまだ帰ってきていない。ガンダを発見したら連れて戻るようにな。金一封も出るから覚えておくように」
「厳密にはいくらなんですか?」
そんな質問をするのはレストだけだ。
「銀貨で2000枚だ。卒業時に支払われる」
「1人ずつ? それとも全員で2000枚?」
そんな質問をしながらレストは、
(諜報部が身柄を押さえてるんじゃなくて逃げた訳ね)
と推察した。
「2000枚だけだ。複数の場合は勝手に山分けしろ。それじゃあ、おまえら、楽しんで来い。但し、門限は18時だからな。遅れた奴は覚悟するように。特にレストっ!」
「遅れませんって」
そんな注意事項の後、本日は余暇となった。
レストがやる事は決まってる。
ガンダと仲の良かったロイの尾行だ。
寮前から付けた。
寮は軍隊学校の敷地にあるが、その軍隊学校は王都カモントの南西側に建つ。
正直、立地はかなり悪い。
増築区画なのだから。
内城門と呼ばれてる門を潜らないと都心部に移動出来なかった。
ロイが向かった先は増築区画の西門方面だった。
レストはロイを尾行してたが、不意に視線に気付き、振り返った。
戦勝祭なので人が繰り出してる。
30人程居たが、レストはその1人を指差して、笑顔で手招きした。
指差された男が苦笑しながらレストの前にやってきた。
昨日、レストに質問した男だ。
「何だ?」
「ガンダに逃げられた、でいいんですよね?」
「ああ」
「オレとロイ、どっちを尾行してるので?」
「おまえだったが、今はおまえが尾行してるあっちの方が気になるな。おまえはどうしてアイツを尾行してるんだ?」
密偵の男の質問にレストが、
「えっ? 見て分からないんですか、それともオレを試してる?」
「・・・とりあえず、おまえがアイツに注目した点を言ってみろ」
「見ての通り、歩き方ですよ。軍隊学校で最初に教わるのは馬鹿みたいな行進です。お陰で歩き方に兵士特有の変な癖が付くんですよ。故意に直さないとあの素人歩きは出来ませんから」
「おまえ、優秀だな」
密偵の男がそう評する中、レストはポケットの中から石を出して、
「因みに、アイツを泳がせるのと今、捕縛、どっちが最短ですか?」
尋ねた。
密偵が苦笑しながら、
「泳がせる、だな」
「なら、それで」
そんな事を喋りながらレスト達はロイを尾行した。
「どこに向かうか分かるか?」
「西門にあるノルス商会がガンダの緊急の連絡先だって言ってましたけど、アイツがライオンの尻尾側なら本当の事をいう訳がないですからね」
ライオンの尻尾という隠語を聞いて、密偵が、
「・・・おまえ、どこまで知ってる?」
「ベンデ教官にガンダが校長室で書類を書き写してたって教えたのはオレです」
「・・・何でおまえ、アイツを追ってるんだ?」
「もちろん、銀貨2000枚の為ですよ。ガンダを連れ帰るだけで貰えるんですから」
「・・・嘘じゃないよ」
と小声で情報交換をしてロイを尾行してた時だった。
横道から通過する1台の荷馬車が一瞬、レストの視界から先を歩くロイの姿を隠し、荷馬車が通り過ぎた時にはロイの姿が手品のように消えていた。
「はあ?」
「変な声を出すな。どうやらこちらの尾行は気付かれてたようだな。素人はここまでにしておけ。後はオレ達に任せな」
「チッ、ガンダを連れ帰るだけで銀貨2000枚って結構美味しかったのに」
レストはそう呟いて諦め、
「仕方ない。色街にでも行くかな」
「おまえ、まだ訓練生だろうが?」
「あれ、まだオレの事、調べてないんですか? オレの故郷は王都の色街なんですよ。死んだ母親は娼婦、父親は不明。天涯孤独で、軍隊学校には入学試験なしで入学。意外に怪しいでしょ?」
「そうでもないぞ、おまえは。勲章授与の際に一度調べたから」
などと喋って、レストはその密偵と別れたのだった。
翌日の戦勝祭は軍隊学校の生徒達も休みで王都カモントに繰り出せた。
朝食時に寮の食堂でガモン教官が、
「分かってると思うが飲酒はするなよ? 特にレストっ!」
「飲みませんよ」
「女も買うなよっ! 馬鹿な酔っ払いとも喧嘩をするなっ! おまえ達は栄えあるモルリント王国の兵士候補なんだからなっ!」
それで普段は終わるのだが、
「それと・・・2年のガンダがまだ帰ってきていない。ガンダを発見したら連れて戻るようにな。金一封も出るから覚えておくように」
「厳密にはいくらなんですか?」
そんな質問をするのはレストだけだ。
「銀貨で2000枚だ。卒業時に支払われる」
「1人ずつ? それとも全員で2000枚?」
そんな質問をしながらレストは、
(諜報部が身柄を押さえてるんじゃなくて逃げた訳ね)
と推察した。
「2000枚だけだ。複数の場合は勝手に山分けしろ。それじゃあ、おまえら、楽しんで来い。但し、門限は18時だからな。遅れた奴は覚悟するように。特にレストっ!」
「遅れませんって」
そんな注意事項の後、本日は余暇となった。
レストがやる事は決まってる。
ガンダと仲の良かったロイの尾行だ。
寮前から付けた。
寮は軍隊学校の敷地にあるが、その軍隊学校は王都カモントの南西側に建つ。
正直、立地はかなり悪い。
増築区画なのだから。
内城門と呼ばれてる門を潜らないと都心部に移動出来なかった。
ロイが向かった先は増築区画の西門方面だった。
レストはロイを尾行してたが、不意に視線に気付き、振り返った。
戦勝祭なので人が繰り出してる。
30人程居たが、レストはその1人を指差して、笑顔で手招きした。
指差された男が苦笑しながらレストの前にやってきた。
昨日、レストに質問した男だ。
「何だ?」
「ガンダに逃げられた、でいいんですよね?」
「ああ」
「オレとロイ、どっちを尾行してるので?」
「おまえだったが、今はおまえが尾行してるあっちの方が気になるな。おまえはどうしてアイツを尾行してるんだ?」
密偵の男の質問にレストが、
「えっ? 見て分からないんですか、それともオレを試してる?」
「・・・とりあえず、おまえがアイツに注目した点を言ってみろ」
「見ての通り、歩き方ですよ。軍隊学校で最初に教わるのは馬鹿みたいな行進です。お陰で歩き方に兵士特有の変な癖が付くんですよ。故意に直さないとあの素人歩きは出来ませんから」
「おまえ、優秀だな」
密偵の男がそう評する中、レストはポケットの中から石を出して、
「因みに、アイツを泳がせるのと今、捕縛、どっちが最短ですか?」
尋ねた。
密偵が苦笑しながら、
「泳がせる、だな」
「なら、それで」
そんな事を喋りながらレスト達はロイを尾行した。
「どこに向かうか分かるか?」
「西門にあるノルス商会がガンダの緊急の連絡先だって言ってましたけど、アイツがライオンの尻尾側なら本当の事をいう訳がないですからね」
ライオンの尻尾という隠語を聞いて、密偵が、
「・・・おまえ、どこまで知ってる?」
「ベンデ教官にガンダが校長室で書類を書き写してたって教えたのはオレです」
「・・・何でおまえ、アイツを追ってるんだ?」
「もちろん、銀貨2000枚の為ですよ。ガンダを連れ帰るだけで貰えるんですから」
「・・・嘘じゃないよ」
と小声で情報交換をしてロイを尾行してた時だった。
横道から通過する1台の荷馬車が一瞬、レストの視界から先を歩くロイの姿を隠し、荷馬車が通り過ぎた時にはロイの姿が手品のように消えていた。
「はあ?」
「変な声を出すな。どうやらこちらの尾行は気付かれてたようだな。素人はここまでにしておけ。後はオレ達に任せな」
「チッ、ガンダを連れ帰るだけで銀貨2000枚って結構美味しかったのに」
レストはそう呟いて諦め、
「仕方ない。色街にでも行くかな」
「おまえ、まだ訓練生だろうが?」
「あれ、まだオレの事、調べてないんですか? オレの故郷は王都の色街なんですよ。死んだ母親は娼婦、父親は不明。天涯孤独で、軍隊学校には入学試験なしで入学。意外に怪しいでしょ?」
「そうでもないぞ、おまえは。勲章授与の際に一度調べたから」
などと喋って、レストはその密偵と別れたのだった。
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