オレはスキル【殺虫スプレー】で虫系モンスターを相手に無双する

アポリス王国理月編

空の散歩

　オレはワイバーンの背に乗って空を飛んでいた。

　凄い。

　草原を疾走する狼の騎乗も心地良かったが、空を飛ぶのは更に気持ち良かった。

　地上の霧平原があんなに小さく見えてるし～。

　森や荒野が絵画のように見えてる～。

　空も雲も綺麗だし。

　何より人工物がない。

　この異世界ファンタジーの自然が空から満喫出来た。

　風も心地良いし。

　ピヨピヨ。

　頭の上のピピーも御機嫌だ。

　まあ、ピピーは聖フェニックスだからな。

　空を飛ぶのが普通なんだろうが。

　そして今のオレの周囲にはワイバーンが14匹も居た。

　ちゃんと数えたから間違いない。

　ローセファースの街のクラン【氷の百合】の屋敷に降り立ったワイバーンは4匹だったが街を飛び立った後にワイバーン軍団が空で合流して、今やこの大編隊だった。

　ワイバーンに乗る人数は2人乗りも居るので20人以上。

　そしてその全員がお姉さんだった。

　ムフフ。

　どうやら、あのお姫様は本当にお姫様で間違いないらしい。

　ったく、最初から手順を踏んで玄関から入ってきてくれれば何の問題なかったのにな～。

　もしくはこの大軍団で庭に降り立つか。

　他国だから遠慮した？

　窓を蹴破って入ってきたあのお姫様が？

　ないない。

　あっ、そうか。

　非常識なのはあのお姫様だけで、お姫様の周囲は常識人の集まりだから他国なので遠慮したのか。

　そんな結論に達して納得しながら、オレは前の席に座るいい匂いの（屋敷内には入らずワイバーンの番を表庭でしていた、つまり蹴ってない）紺髪ショートのお姉さんが操縦するワイバーンに乗って空の散歩を楽しんだのだった。





　そのまま何事もなく空の散歩を楽しめたら良かったのだが･･･





　◇





　それは突然だった。

　ワイバーンの前の席のお姉さんが、

「えっ！　どうしたの？」

　と呟いた瞬間にはワイバーンが制御を失い、突然、凄い速度で螺旋降下を始めた。

「うわっ！」

　だから言ったんだよ。

　空は危険だってっ！

　落下中なので色々と問題があるが一番の問題は・・・

　ピピピッ。

　オレの頭の上に居たピピーがオレから離れて空に放り出された事だった。

　なっ！

　クソ、ピピー、待ってろ。

　オレは背からピピーに向かってジャンプしようとして腹に巻かれたベルトに邪魔された事に気付いた。

「じゃ～ま～」

　ベルトに装備してた剥ぎ用ナイフで背鞍と繋がる命綱の腰に巻かれたベルトを切断して背鞍を蹴って空に投げ出されたピピーに向かってジャンプする。

　オレは無事に空に投げ出されたピピーを両手でキャッチした。

　ピヨピヨ。

　今、空を飛んでたよ、って言ってるっぽい。

　オレの気も知らないで呑気なんだから～。

「もう心配したぞ」

　ピピーの頭にキスをする。

　そして落下中のオレは周囲を見渡した。（0.1秒）

　一番近いワイバーンはあれか。

　オレは魔法の腕輪の【アイテムボックス】から投擲用にストックしてあった木の盾20枚の内の1枚を取り出すとそれを足場に一番近いワイバーンに向かってぶっつけ本番でジャンプした。

　おっ、出来た。

　クラン【氷の百合】の本部に貯蔵されてた技本の達人技の項目に書かれてたけど本当に。

　そしてオレは別のワイバーンの背鞍に着地して、

「お邪魔しま～す」

　魔術師姿の銀髪ロングの三つ編みお姉さんにそう挨拶して座ったのだった。

「嘘、何をやったの、今？　空中ジャンプよね？」

　魔術師のお姉さんがナイスリアクションをしてる。

　いや～、完全にまぐれで『もう一回やって見せて』って言われても出来るとは思えないけど、オレは空気が読める男なので、

「まあ、そんなところです」

　前髪を指先でカッコ良く掻き揚げたのだった。

　ピピーはもう空では手で大切に持ってるからね。





　◇





　ーーでだ。

　あの墜落。

　オレを驚かせる為の悪ふざけだったらしい。

　オレが最初に乗ってたワイバーン、地上すれすれで当たり前のように飛行姿勢を持ち直して滑空してたから。

　お姫様の指示っぱい。

　アホか。

　そういう悪ふざけをするからアッパーカットを喰らって白眼を剥いてダウンする破目になるってのが分からないのかね～。

　いつか痛い目を見るぞ、あのお姫様。





　あっ、そうそう。





　アラン・ザク。14歳。LV397。

　ジョブ:棒使い、精霊獣使い、聖天魔術師、大鳥釣り師、new飛獣乗り

　スキル:【殺虫スプレー】（33）（33）（33）（33）（33）ノズルタイプ（30）（30）cold（30）（30）ムカデ専用（30）（7）蜘蛛専用（30）蜂専用（33）蟻専用（30）

　称号:【貴族名鑑】【神童】【格上潰し】【英雄の雛】【精霊獣の契約者】【聖雛を連れて歩く者】【蜂殺し】【聖天を司る者】【女神の裁きの代行者】【古代種殺し】【白霧の狩人】【打の極みへの道】【無傷の強者】【弱きを貪る者】【流しの解体屋】【虫殺し】【骨竜殺し】【幸運の緑竜鱗】【大地の成竜牙】【熱中のコーラル】【攻撃の赤竜爪】【闇大鷲の天敵蛇】【銀のフィーク】new【死の13階段（執行保留）】new【騎翼の風】new【舞う羽根】





　【死の13階段（執行保留）】アポリス王国への反逆罪。刑の執行は保留。





　取得条件:アンリ王女を殴り、交渉して交換条件を引き出す。





　【騎翼の風】飛獣での飛行戦闘、飛行中の行動が解禁。ジョブ:飛獣乗り解禁。





　取得条件:飛獣で20分飛行と空恐怖を克服する。





　【舞う羽根】条件付きで空中歩行（ジャンプ）解禁。





　取得条件:空中で達人曲芸成功。





　1つは無視するとして。

　称号が2つ増えてたから～。

　空系の解禁だけど。

　ってか、空中歩行解禁って。

　人間技じゃないだろ、それ～。

　さすがは異世界ファンタジーだぜ～。