マリーハルケン王朝建国物語 〜婚約破棄されたのでお祖父様の悲願が達成されそうです〜

魚夢ゴールド

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卒業パーティー前 〜宮殿内でも移動するのに護衛が付く王太子の浮気がバレないなんて物語は存在しない〜

13、噴水事件

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階段を転落したアンヌ・ラリー子爵令嬢はハミル達がアンゼル宮殿に戻った直後の夜6時30分頃には眼を覚ましていた。

30分前までは王太子ハミル以下、フイトミー以外の全員が廊下に残っていたのだが、今はもういない。

「頭部を打っているから病院に転院させるわね」

保健室担当の女医がそう診断し、アンヌは「入院なんて大袈裟な」と思ったが、

「大丈夫よ、治療費は貴族学校持ちだから。貴族学校の判断だからいいわね」

半ば強引にアンヌは病院に転院させられる事となったのだった。





それから3日間、容態を見る為に入院し、別に嘔吐や頭痛などは何もなく経過は良好で、入院中に謹慎中のハミル以外の生徒会のメンバーのお見舞いなどもあって、4日目には退院し、





 ◇





5日後にはアンヌは無事貴族学校に戻ったのだが。





アンヌが通学を再開した頃には貴族学校の雰囲気はガラリと変わっていた。

主にアンヌの周囲だけが。

生徒達がアンヌを見る目が、

「学年トップの優等生」

との好意的な評価から、

「王太子殿下にプレゼントをねだった女」

「マリーハルケン公爵令嬢の誕生日パーティーを王太子殿下に欠席させた女」

「王太子殿下を謹慎させた女」

「下位貴族の令嬢の分際で側妃の座を狙っている女」

悪意あるものに変わっていたのだから。





それも、誰もが巻き添えを恐れてアンヌに教える事はなかった。

なので、

「?」

アンヌも雰囲気が妙なのには気付いたが、何故か理由が分からず、





「入院して気遣われてる」とポジティブに取ってしまった為に警戒などはしておらず、





 ◇





ドン、ザボン。





まさかの復帰初日にして市井で流行している恋愛小説の定番「噴水落ち」を自ら体験する破目になってしまったのだった。

アンヌが噴水広場の噴水の傍を歩いていた時に背後から押されて、本当にザブンと。

明確に「両手で背中を押された」という感触があり、晩春なので噴水の水は冷たいというよりは少し気持ち良かったのだが。

それでも落ちる前に噴水の縁で膝を強打し、そちらは少し痛かった。

噴水に落ちてアンヌがずぶ濡れになる中、噴水広場に居る生徒達は数名がその卑劣な行為に嫌悪感を示した表情を作った他は全員が馬鹿にしたように、

「あら、やだ」

「お似合いですわね」

「ったく何をやってるんだか」

と嘲笑ったのだった。

そして、アンヌが落ちた噴水の縁に立つピンク髪のツインテールの可愛らしい女子生徒が、

「ごめんなさ~い。肩がぶつかっちゃって~」

誠意がまったく感じられない白々しい謝り方をしながらも、とんでもない主張をしてきた。

えっ、肩がぶつかった?

「背中を押された」と思ったけど・・・違うの?

噴水落ちなど初めての体験のアンヌは、謝罪する女生徒を前にリアクションに困ってしまったのだが。

この噴水広場は本校舎と東校舎がL字に囲み、東校舎の噴水広場を挟んだ正面の西側には貴族学校固有の施設、ダンスホールがある。

その為、本当に噴水広場は開けた場所となっており、どこからも丸見えで、今の噴水落ちの一部始終を目撃していたのか教師陣が慌てた様子で校舎やダンスホール前からワラワラと集まってきて、

「そこ、何をしている」

「見てたぞ、両手で押したの。噴水に生徒を落とすなんて悪ふざけにしては度が過ぎてる。傷害未遂——退学案件だぞ。分かっているのか?」

「ち、違います~。肩がぶつかって~」

アンヌと「肩がぶつかった」と言い張る女生徒はそう抗弁したが、

「そんな言い訳が通ると思ってるのか」

「来なさい。校長室に」

貴族学校の教師20人近くが集まってきて、教師数名に囲まれてその女生徒は連れて行かれ、

「ラリーさん、大丈夫?」

「タオルを使いなさい。確か保健室に予備の制服があったはずだから着替えるといいわ」

女性教師に囲まれて保健室に案内されていったのだった。
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