マリーハルケン王朝建国物語 〜婚約破棄されたのでお祖父様の悲願が達成されそうです〜

魚夢ゴールド

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卒業パーティー前 〜宮殿内でも移動するのに護衛が付く王太子の浮気がバレないなんて物語は存在しない〜

14、謹慎中の抜け出し

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アンゼル宮殿で謹慎中の王太子ハミルの耳に貴族学校のアンヌが落ちた噴水事件が伝わったのは謹慎6日目の事である。

つまりは噴水事件の翌日。

その日は休日でアンゼル宮殿に、昼間から謹慎中の王太子ハミルの様子窺いと共に学校の書類を届けに生徒会のお馴染みのメンバー(とは言っても、アンヌはアンゼル宮殿に気軽に出向ける身分ではなく、フイトミーは婚約者との交流日なので2人は居らず)ジョン、チャック、イーグルの3人がきていた訳だが。

その3人中2人は「謹慎が明けるまでは」と話題にもしなかったのだが、残る1人が口を滑らせて貴族学校であったアンヌが被害者となった噴水事件の事をハミルに教えてしまっていた。

いや「口は滑らせた」は正確ではない。王太子のハミルに「忠誠心を示せ、なおかつ使える奴だ」とアピールする絶好の機会だったので「故意に伝えた」のだから。

素知らぬ顔で噴水事件の事を伝えたのはイーグルだった。

祖父である宰相ブラックスの血だろうか。「商人ながら政治にも精通している私って凄いな」と思っているのは本人だけである。

何故ならばこの伝達は完全な悪手なのだから。

本当に「最低なくらい」は喋らなかった残る2人も分かっており「教えるか、普通」「拙いな、殿下の性格を考えると」一瞬だけだがイーグルが喋った事に不快感を表したのだが。

「な、アンヌがそんな事に?」

「はい」

他者を出し抜いた、と思って鼻高々のイーグルが「役立つでしょ、私めは? 国王になられた際は引き続きサバルス商会のお引き立ての方よろしくお願いしますね」との知的なドヤ顔で頷いている訳だが。

伝えられて一番にハミルが思った事は、

「エルゼか? アイツが私が誕生日パーティーに行かなかった腹いせに取り巻きにやらしたのか?」

「切れ者」を自称するイーグルに抜かりはない。

ちゃんと総ての情報を精査してからハミルに伝えていたので、

「いえ、退学になった女生徒は王家直轄のロリエ・モカ男爵令嬢です。領地は北部、パルプス山脈近くだったかと」

そうなのだ。

噴水にアンヌを落とした女生徒は当日の夕方には貴族学校を本当に退学になっていた。

「噴水に突き飛ばした」ごときで。

さすがはお貴族様が通う貴族学校だ。

平民が通う学校とは規律が違う。

つまりは「今回は被害者が子爵令嬢だったから良かったものの、噴水に突き飛ばすなどという野蛮な事をする令嬢は王太子殿下や未来の王妃のマリーハルケン公爵令嬢にも同じ事をするぞ、さっさと退学だ」と実家の爵位が男爵だった事もあり一発退学となった訳だ。

これが王太子ハミルが通学する代の貴族学校側の対応である。

「どうせ、エルゼがその男爵令嬢にやらせたのであろう」

顔見知りのアンヌが被害に遭い、その義憤で視野を狭くしたハミルはそう決め付けた。

決め付けただけならば良かったが、「とんでもない事」を言い始めた。

「今からエルゼに会いに行くぞ、おまえ達、手伝え」

「はい? 今からとは? 殿下は謹慎中ですけど?」

分かり切った事を指摘したのはチャックである。

そう質問したチャックは別に脳筋だからでも頭が悪いからでもない。

確かにチャックの家のアリストン伯爵家は武門だが、騎士団の幹部には兵の指揮や兵糧の計算も必要なので、身体だけではなくちゃんと頭の方も幼少期から鍛えられている。

では「どうしてそんな質問をしたのか」と言うと、騎士団長の父親に厳しく育てられていた為「謹慎中に抜け出す」などという違反行為が一切、頭の中になかったのだ。

「だから抜け出すのだ」

「なりません、殿下。そうでなくてもマリーハルケン公爵令嬢の誕生日パーティーを欠席した事で両陛下からお叱りを受けておりますのに」

正論を口にしたのは1歳年下のジョンである。

だが、1歳の年齢差以前に王子と臣下だ。例え言ってる事が「正しかろう」と上が言えば正論など簡単に吹き飛ぶ。

「そんな事はいいからともかく手伝え」

それが王太子ハミルの決定だった。

チャックとジョンが困惑しながら顔を見合わせる中、乗り気のイーグルが、

「どのようになされますので?」

「窓から出る」

ハミルは視線を窓に向けた。この部屋は2階だ。

「カーテンを結び、ロープのようにし、巡回の途切れた隙に抜け出すのだ」

「妙案だろ?」とドヤ顔をする王太子ハミルに対して、

「さすがは殿下、見事な策です」

追従したのはイーグルだけである。

チャックとジョンは互いに視線だけで、

(謹慎中に抜け出すなんて駄目だよな?)

(当然です)

(おまえの従兄ってバカなのか?)

(あんなのが従兄なんてボクは認めてませんが)

(なら、さっさと排除しないと拙いぞ)

(祖父に言っておきます)

そんな会話をした訳だが。





信じられない事にその後、謹慎中の王太子ハミルによるアンゼル宮殿の抜け出し計画は本当に実行されたのだった。
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