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卒業パーティー前 〜宮殿内でも移動するのに護衛が付く王太子の浮気がバレないなんて物語は存在しない〜
19、その日、貴族学校の生徒の登校が少ないのには理由がある
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それは王太子ハミルがマリーハルケン公爵邸に突撃してから8日の事だった。
◇
その日は色々と貴族学校の様子が最初から変だった。
登校した生徒の数が普段よりも少なかったのだ。
「欠席者が多い」という事だ。
現在の季節は「晩春」、または「初夏」である。
「季節の変わり目でもないのに欠席者が続出なんて変じゃないか?」
と不思議に思った生徒も居た訳だが。
事情通の生徒から言わせば「えっ、知らないの、おまえ?」だった。
「何言ってるんだ。今日は王太后陛下と国王陛下の弟の大公閣下と前マリーハルケン公爵閣下の3人が王都アンゼルから発つ日じゃねえか」
「えっ、そうなの?」
「ああ、3人同時に出発するとかで誰の見送りに行くかでうちの親も頭を悩ませ・・・ヤベ、言っちゃ駄目だったんだ、今の。誰にも言うなよ。頼むから」
そうなのだ。
実はこの日、王都アンゼル入りしていたアンドレーヌ王国の大物達がそれぞれの保養地や領地の帰る日だった。
それも「示し合わせたように同日の同時間に」である。
誰の見送りに行くかで貴族達は頭を悩まし、令息令嬢達もその見送りに動員され(つまりは代理として見送りに参加させられて)、それが貴族学校で欠席者が多い理由だった。
そして、その日は奇しくも王太子ハミルがマリーハルケン公爵邸に突撃して8日目だった。
7日目ならば休日だったのだが、8日目の今日は平日である。
その頃には王都アンゼルはもちろん貴族学校内にもアンヌ・ラリー子爵令嬢の王太子ハミルの「側妃候補」の噂が飛び交い、それによって学年トップの優等生アンヌは更に生徒達に遠巻きにされていた。
今やこの貴族学校でアンヌと普通に接しているのは生徒会のメンバーくらいである。
その生徒会メンバーの会計だった平民の特待生のイーグルは近衛騎士のアンゼル宮殿に連れて行かれた後、自主退学していたが。
まあ、自主退学は表向きの理由だ。
実際は王太子ハミルのアンゼル宮殿脱走幇助の罪に問われて銀山で労役5年が言い渡されたのだから。それも言葉だけではなく本当に罪人だらけの採掘場に切れ者の自負していたイーグルは連行されて力仕事をやらされていた。表向きの話だが。
非公式ながら宰相ブラックスの血を引いた孫なのに。
「認知されていない系譜は貴族に非ず」という事だ。
本当に貴族社会は世知辛い。
それも国王執務室での顛末をジョンが父親の内務卿のジョール・サンドスに教えた事で「父ブラックスが孫のイーグルを見捨てた」と判断した事から、サンドス家の種をばら撒かれるのを嫌った内務卿のジョールが動いた為に「イーグルは子供が作れるように断種される」というオマケ付きでの移送となった。
こうしてイーグルは完全にこの物語から退出していったのだが。
それはさておき。
この日はその生徒会メンバー全員が欠席していた。
王太子ハミルは「謹慎」だと聞こえが悪いので、貴族学校には「アンゼル王国政府の王太子の執務で欠席」と公休措置が取られていた。
完全な嘘っぱちだが、アンドレーヌ王国は絶対王制であるのでそんな事も可能なのである。
だが、他の生徒会メンバーは違う。
フイトミーもジョンもチャックも昨日までは元気に貴族学校に来ていたのに本日は欠席していた。
理由は「大物の見送り」であるが、そんな理由での欠席が認められる訳もなく、ただの欠席となったのだった。
◇
欠席は卒業後に王太子ハミルと結婚する公爵令嬢エルゼーシア・マリーハルケンも同じである。
マリーハルケン前公爵のエドモンドではなく、王太后ムーラの出発の見送りの為にアンゼル宮殿に出向いていたアルゼーシアを発見したムーラが意外そうに、
「あら、エルゼちゃんはこちらに来ちゃったの?」
「はい、王太后陛下はわたくしが大好きだったお祖母様のお姉様ですから」
「本当にちゃんとしてるわね、エルゼちゃんは」
ムーラが感心したように頷きながら扇を開いて口元を隠しながら、
「それに引き換え、ハミルは。今回が『最後の警告』だから。これで駄目ならエルゼちゃんの好きにしていいわよ」
「・・・殿下は知っておられるのですか?」
「まさか、謹慎中だもの」
「また『わたくしのせい』だとか言いそうですが」
「その時は見限っていいわよ」
あっさりと孫を切り捨てた王太后ムーラに試されてるのか読めずエルゼーシアが困るように、
「・・・波風が立つのは避けたいのですが」
「そう40年前の皆が思った結果が今よ。好きにするといいわ」
そう笑いながらムーラは用意された馬車に乗り込んで、窓から、
「では、皆さん、ごきげんよう」
挨拶をして王都アンゼルから王家直轄の保養地に旅立っていったのだった。
そして同時刻に、
「やれやれ、どうして私までがこんな茶番に。陛下にも困ったものだ」
懐中時計で出発時間を確認したニヒル・アフス大公と、
マリーハルケン公爵邸で、
「エルゼめ。祖父の見送りに立ち会わぬとは・・・分かっているではないか」
ニヤリと笑ったエドモンド・マリーハルケン前公爵も馬車で領地に向かって旅立っていったのだった。
◇
その日は色々と貴族学校の様子が最初から変だった。
登校した生徒の数が普段よりも少なかったのだ。
「欠席者が多い」という事だ。
現在の季節は「晩春」、または「初夏」である。
「季節の変わり目でもないのに欠席者が続出なんて変じゃないか?」
と不思議に思った生徒も居た訳だが。
事情通の生徒から言わせば「えっ、知らないの、おまえ?」だった。
「何言ってるんだ。今日は王太后陛下と国王陛下の弟の大公閣下と前マリーハルケン公爵閣下の3人が王都アンゼルから発つ日じゃねえか」
「えっ、そうなの?」
「ああ、3人同時に出発するとかで誰の見送りに行くかでうちの親も頭を悩ませ・・・ヤベ、言っちゃ駄目だったんだ、今の。誰にも言うなよ。頼むから」
そうなのだ。
実はこの日、王都アンゼル入りしていたアンドレーヌ王国の大物達がそれぞれの保養地や領地の帰る日だった。
それも「示し合わせたように同日の同時間に」である。
誰の見送りに行くかで貴族達は頭を悩まし、令息令嬢達もその見送りに動員され(つまりは代理として見送りに参加させられて)、それが貴族学校で欠席者が多い理由だった。
そして、その日は奇しくも王太子ハミルがマリーハルケン公爵邸に突撃して8日目だった。
7日目ならば休日だったのだが、8日目の今日は平日である。
その頃には王都アンゼルはもちろん貴族学校内にもアンヌ・ラリー子爵令嬢の王太子ハミルの「側妃候補」の噂が飛び交い、それによって学年トップの優等生アンヌは更に生徒達に遠巻きにされていた。
今やこの貴族学校でアンヌと普通に接しているのは生徒会のメンバーくらいである。
その生徒会メンバーの会計だった平民の特待生のイーグルは近衛騎士のアンゼル宮殿に連れて行かれた後、自主退学していたが。
まあ、自主退学は表向きの理由だ。
実際は王太子ハミルのアンゼル宮殿脱走幇助の罪に問われて銀山で労役5年が言い渡されたのだから。それも言葉だけではなく本当に罪人だらけの採掘場に切れ者の自負していたイーグルは連行されて力仕事をやらされていた。表向きの話だが。
非公式ながら宰相ブラックスの血を引いた孫なのに。
「認知されていない系譜は貴族に非ず」という事だ。
本当に貴族社会は世知辛い。
それも国王執務室での顛末をジョンが父親の内務卿のジョール・サンドスに教えた事で「父ブラックスが孫のイーグルを見捨てた」と判断した事から、サンドス家の種をばら撒かれるのを嫌った内務卿のジョールが動いた為に「イーグルは子供が作れるように断種される」というオマケ付きでの移送となった。
こうしてイーグルは完全にこの物語から退出していったのだが。
それはさておき。
この日はその生徒会メンバー全員が欠席していた。
王太子ハミルは「謹慎」だと聞こえが悪いので、貴族学校には「アンゼル王国政府の王太子の執務で欠席」と公休措置が取られていた。
完全な嘘っぱちだが、アンドレーヌ王国は絶対王制であるのでそんな事も可能なのである。
だが、他の生徒会メンバーは違う。
フイトミーもジョンもチャックも昨日までは元気に貴族学校に来ていたのに本日は欠席していた。
理由は「大物の見送り」であるが、そんな理由での欠席が認められる訳もなく、ただの欠席となったのだった。
◇
欠席は卒業後に王太子ハミルと結婚する公爵令嬢エルゼーシア・マリーハルケンも同じである。
マリーハルケン前公爵のエドモンドではなく、王太后ムーラの出発の見送りの為にアンゼル宮殿に出向いていたアルゼーシアを発見したムーラが意外そうに、
「あら、エルゼちゃんはこちらに来ちゃったの?」
「はい、王太后陛下はわたくしが大好きだったお祖母様のお姉様ですから」
「本当にちゃんとしてるわね、エルゼちゃんは」
ムーラが感心したように頷きながら扇を開いて口元を隠しながら、
「それに引き換え、ハミルは。今回が『最後の警告』だから。これで駄目ならエルゼちゃんの好きにしていいわよ」
「・・・殿下は知っておられるのですか?」
「まさか、謹慎中だもの」
「また『わたくしのせい』だとか言いそうですが」
「その時は見限っていいわよ」
あっさりと孫を切り捨てた王太后ムーラに試されてるのか読めずエルゼーシアが困るように、
「・・・波風が立つのは避けたいのですが」
「そう40年前の皆が思った結果が今よ。好きにするといいわ」
そう笑いながらムーラは用意された馬車に乗り込んで、窓から、
「では、皆さん、ごきげんよう」
挨拶をして王都アンゼルから王家直轄の保養地に旅立っていったのだった。
そして同時刻に、
「やれやれ、どうして私までがこんな茶番に。陛下にも困ったものだ」
懐中時計で出発時間を確認したニヒル・アフス大公と、
マリーハルケン公爵邸で、
「エルゼめ。祖父の見送りに立ち会わぬとは・・・分かっているではないか」
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