マリーハルケン王朝建国物語 〜婚約破棄されたのでお祖父様の悲願が達成されそうです〜

魚夢ゴールド

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卒業パーティー前 〜宮殿内でも移動するのに護衛が付く王太子の浮気がバレないなんて物語は存在しない〜

20、毒の「木の実」混入事件

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 ◇





貴族学校の授業は午前中だけではない。午後もある。

では生徒達は昼食はどうしているのか?

無論の事、貴族学校の校内にも食堂という食事がとれる施設が存在した。

まあ、高位貴族の中にはラントボックスどころか、ランチ皿を使用人に屋敷から運ばせる生徒もいたが。

実は王太子ハミルや公爵令嬢エンゼーシアもそちらの部類である。

毒を警戒しての事なのだが。





まあ、貴族学校の食堂だ。

働いている職員の素性もちゃんと調べられており、貴族に反感を抱く平民などは働いてはいない。

それどころか貴族学校の食堂の仕事は給料も他よりも格段に良い。

更に、これは内緒なのだが。

接触してきた妙な奴の事を通報すると給与が特別に出る。

家族に何か類が及んでも騎士団が特別介入して解決してくれる。ある程度の安全が保証される他、医者にも優先的に掛かれたりと至れり尽くせりだった訳だが。





 ◇





その生徒がいつもよりも少ない貴族学校の食堂では最近孤立気味のエルゼが周囲から遠巻きにされて1人でランチを食べていた。

お貴族様の学校の食堂なのだからビッフェ方式ではない。

個別に用意される。それもお貴族様が椅子に座るとウェイターやウェイトレスが執事やメイドのように何を食べるのか注文を取りにくるシステムだ。

貴族学校の今年の生徒数は(退学者1人を出して)197人。

お貴族様は順番待ちを嫌う。なので注文係だけで40人が採用されていた。

その注文係も今日は登校してる生徒が少ないので簡単に捌けていたが。

ランチは高位貴族の令息令嬢が満足するくらいの味だった。

正直、かなり豪華である。

アンヌのラリー子爵家よりも。

貴族学校の食堂では下世話なお金のやり取りはない。

事前に授業料とは別に食事費も支払っている。

利用しない貴族家もだ。たまに利用するかもしれないので。

というか、ランチ皿を持参する高位貴族にとって食事費程度は端金なのだから余裕で支払っていた。

平民の特待生達は学費の他にも食費も免除なので豪華なランチを食べ過ぎる傾向にあったが。

貴族の生徒達は要注意だ。

食べ過ぎて太ると容姿が損なわれるのだから。

アンヌも食べ過ぎに注意しながらもメニューを決めて食べていた。

1人で食べようが、美味しいものは美味しい。

だが、不意に、アンヌが不調に気付いた時には視界が真っ暗になって意識を失った。

アンヌはそこで意識を失ったので何も覚えていないのだが。

食堂に居合わせた他の生徒達に言わせれば、顔に突っ伏したアンヌはトラウマ物の不気味さだった。

美しい顔は真っ青になり、白眼を剥いて、口からは白い細かい泡を出して、身体をピクンピクンと痙攣させていたのだから。

まさしくホラーである。

というか、一目で分かる。

毒だ。

いくらアンヌを遠巻きにしてるとはいえ、さすがに生徒達は一斉に、

「キャアア」

「嘘だろ」

「毒だ。先生を呼べっ!」

「まさか、オレのランチも? うげ、喰っちまったぞ」

「いや大丈夫そうだが」

「ってか、冗談じゃないわよ」

騒ぎ出して食堂は騒然としたのだった。





 ◇





アンヌはすぐに処置されたので死ぬ事はなかった。

そもそも致死量の毒ではなかったらしいので。

「あれ、ここって」

保健室のベッドでアンヌは眼を覚ました。

「良かった、気が付いたのね?」

前にもお世話になった女の保健医が顔を覗かせた。

「えっと、どうして私はここに・・・確か食堂に居たと思ったんですけど」

「食中毒よ。どうも毒性の木の実が料理に混ざってたらしくて。まあ、最初から致死量じゃなかったんだけど。常備してる中和薬が効いて良かったわ」

「・・・そうなんですか」

そんな事ある訳ないじゃないの。貴族学校の食堂で。

それに毒を食べたの私だけっぽいし。

他のベッドが空いてるのをチラ見してアンヌは思った。

王太子殿下の婚約者のマリーハルケン公爵令嬢からの嫌がらせかしら?

でも、これって犯罪よね?

「えっと、犯人は?」

「毒性の木の実を卸した八百屋が捕まったらしいわ」

「料理人の逮捕者は?」

「いえ、居なかったはずよ」

何よ、それ?

ピンポイントで私が狙われたのに無関係な八百屋さんが捕まるなんて。

料理人、もしくは料理を運んだウェイトレスが怪しいのに。

私、死に掛けたのよ?

それなのに。

あっ、もしかして最初から捕まる人間が決まっていた?

これで決着?

こんな事が出来るなんて、さすがはマリーハルケン公爵家。

確かに凄いけど、死に掛けた私から言わせれば「あり得ない」んだけど。

「えっと、多分ですけど、その八百屋さんは無罪かと」

アンヌがそう指摘すると保健医は溜め息を1回吐いてから、

「騎士団の調査に文句は言わない方がいいわね。下手するとアナタが犯人にされるから」

「はい?」

「自作自演で毒の木の実を食べたと言われかねないから」

「死に掛けたのに?」

「『致死量じゃなかった』って言ったでしょ。それに被害者は『アナタだけ』。これ以上この件を掘り返すのは止めなさい。いいわね。アナタの為よ」

「でも・・・分かりました」

アンヌはそう無理矢理納得し、

「帰っても?」

「あのね~。毒の木の実を食べたのよ? 帰れる訳ないでしょ、容態を見るから病院に転院よ」

「またですか?」

「そう、またよ」
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