マリーハルケン王朝建国物語 〜婚約破棄されたのでお祖父様の悲願が達成されそうです〜

魚夢ゴールド

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卒業パーティー前 〜宮殿内でも移動するのに護衛が付く王太子の浮気がバレないなんて物語は存在しない〜

26、西国境ハジノス城にはカードレートの街から補給物資が続々届く

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夏になった。

夏のアンドレーヌ王国のアンゼル宮殿での最大のイベントはアンドレーヌ王国中の貴族が集まる国王カミルの誕生日パーティーである。

だが、その国王カミルの誕生日パーティーに毎年出席を免除されている貴族もいた。

それがタル草原と隣接する西国境の警備任務を強いられるモスール辺境伯を含めた西国境貴族8家である。

「どうして国王の誕生日に王都アンゼルに来て出席しないのだ? 不敬ではないか」と思うかも知れないが、タル草原と面する西国境は夏はそれどころではなかったのだ。

夏になるとタル草原の覇者、騎馬民族タルが侵攻してくる。

侵攻の目的は略奪である。

略奪こそが騎馬民族タルの生活の一部なのだから。

よって戦わねば略奪される。

財も食糧も人も。

その撃退の為に夏は戦っているのに、国王の誕生日を祝うごときで、馬で15日も日数が掛かる王都アンデルに向かうなど出来る訳もなかった。

そんな訳で「欠席しても許されてる」訳だが。





 ◇





騎馬民族タルが侵攻してくる夏を迎えた今年の西国境のハジノス城は一味違っていた。

西国境のハジノス城は城塞都市である。

囲んだ城壁の中に街が存在し、ハジノスの産業は毛織物や加工肉、蜂蜜酒を作って住民は生活している訳だが。

街の雰囲気は夏になれば重くなるのが例年の事なのだが、





まずは西国境を守るドルオ・モスール辺境伯がわざわざ王都アンゼルに出向いて国王力ミルから勝ち取ってきた援軍3000人。

こいつらは駄目だ。使えない。

それがハジノス城を長年守る地元の兵士達の率直な感想だった。

貴重な食料を無駄に食いまくって消費するのは、まあ、我慢しよう。一緒に食料も運んできてくれたので。

だが、中央の援軍の兵の認識が本当にダメダメで、

「なぁ~に、蛮族くらいオレがこの剣で10人だろうと20人だろうと斬り伏せてくれるわ。いつでもきやがれってんだ、ハハハハ」

という考え方の連中が殆どだった。

強い騎馬民族を相手に城から出撃して真正面から戦う訳がないだろ。

城壁の上から弓矢で応戦して諦めて帰るのを待つだけだよ、毎年。

それがハジノス城の兵士達の認識だったので、そいつらに分かりやすく教えてやるも、

「城から撃って出ないなんて西国境の兵士は臆病者なんだな」

との感想を言う始末だ。

なので本当に「使えない」というのがハジノス城の兵士達の認識だった。





にもかかわらずハジノス城の元からいる兵士達の士気は異常に高い。

街の住民の雰囲気もだ。

理由は5日間隔でカードレートの街からやってくる輸送部隊のせいである。

まだまた輸送隊の到着を耳にしたモスール辺境伯の嫡子で王太子と同世代だが貴族学校の通学を免除されているアスレオが、

「父上、またカードレートから輸送隊が到着しました。今度は矢じり8万個ですって」

眼を輝かせて大喜びしながら執務室に報告にやってきた。

「もう武器庫に入らんわ。確かに援助を頼んだがやり過ぎだろう、あの爺様」

報告を受けたドルオ・モスール辺境伯がそう苦笑するのも無理はなかった。

最初に到着した輸送隊が運んできたのが完成された矢5万本だったのだから。

その後も、完成された矢3万本、弓300本、小麦袋150袋、矢じり8万個、剣350本、矢1万5000本、小麦袋80袋、弓200本、鎧100個、槍200本、矢じり 4万個。

5日間隔で軍事物資や補給物資が送られてくる。

それだけではなく、補給物資を運んできた輸送部隊も弁えており、

「カードレートの街を治めるマリーハルケン公爵家からの物資です。どうぞお使い下さい」

「マリーハルケン公爵家からの支援ですので、その名をお忘れなく」

ちゃんと抜け目なくマリーハルケン公爵家の名前を宣伝していく。

お陰でもうハジノス城の兵士の中にマリーハルケン公爵家の名前を知らない兵士はいない。

軍事物資が枯渇していた昨年までが嘘のようだ。

ハジノス城の兵の士気は上がりっぱなしだった。

「もう勝ちましたね」

息子のアスレオが眼を輝かせるが、それを見て内心で自分もそう思っていたが、気を引き締めて、

「まだ分からんぞ、足を引っ張る味方が居るからな」

「ああ、出撃したがってるあいつらですね。あれをどうされるんですか、父上?」

「前に父が使った策を使う。あの時はまだ若かったから酷いと思ったが、自分で使い、我が父の偉大さをこの身に感じる事になろうとは」

そうドルオは父親を懐かしんだのだった。
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