マリーハルケン王朝建国物語 〜婚約破棄されたのでお祖父様の悲願が達成されそうです〜

魚夢ゴールド

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卒業パーティー前 〜宮殿内でも移動するのに護衛が付く王太子の浮気がバレないなんて物語は存在しない〜

35、北の塔の最上室からの秘密の脱出法

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国王誕生日の夜の部の舞踏会で壇上の王太子ハミルはチラチラと壇上からブルーウッド公爵を見ていたが訳が。

この王太子ハミルとブルーウッド公爵の結託を歓迎する勢力も当然あった。

兄王の誕生日に王都アンゼル入りをしていたニヒル・アフス大公などは歓迎する側である。

ニヒルは壇上の王太子ハミルの視線に気付かなかったが、王子時代からの使える側近参謀にして悪友のロロウス・ホースマー侯爵が目敏く気付いて耳元で教えてくれた。

それも噛み砕いて親切丁寧に、である。

「(分かりますか、閣下。第1王子がブルーウッド公爵に視線を向けてる意味が?)」

このロロウス、大公と同年なので中年である。

髪は異世界あるあるの紫色。カフス海から流れてきた異国人の血が入っている為に茶褐色肌のナイスミドルの伊達男なのだが。

結婚した妻が3人とも死んでおり(3人目が階段での転落死で妻の実家が騒いで国王が裁定する御前裁判にもなったが、ギリ無罪)、かなりの喰わせ者だった。

危険な色気を纏う男でもある。

「(いいや)」

「(お気に入りの子爵令嬢を公爵家の養女にして結婚するつもりですよ、あれは)」

「(さすがにないだろ。マリーハルケン公爵家が暴れるのを抑える為の王家の政略婚姻をする予定なのに)」

「(それが若い第1王子には耐えられぬのでしょう)」

「(ないと思うがな)」

「(道が開けるかもしれませんぞ、閣下)」

「国王になれる」という意味だ。

さすがに危険な会話な事を理解しているニヒルが慌てて、

「(この場ではよせ、ロロウス)」

そう言って止めたが、元々国王になりたかったニヒルだ。

国王になれる道筋があるのか自然と探ってしまう。

やはりネックは母親の王太后だ。王太后の承認があれば、母親の実家のサランド公爵家が味方してくれる。サランド公爵家の同意が得られれば、あの家は政略結婚をしまくっていてマリーハルケン公爵家やベーレ公爵家とも血縁なので話が簡単にまとまるのだが。

王太子がバカをやっても国王が失態を演じた事にはならない。

もう国王になってるのだ。

退位させるのにはよっぽどの理由が必要となる。

やはり王子2人を殺して王太子となるのが一番楽な道筋だろう。

問題は王太子は簡単に自滅しても、第2王子だ。

まだ6歳だ。バカに育つ保証はどこにもない。

やはり王妃に第2王子を殺させてから、王太子を失脚させるのが一番なのだが、そう上手くいく訳もないからな~。

などと考えていると、悪友のロロウスが、

「(では別の話を。王太子が暴発するようにこちらで焚き付けましょうか?)」

「(?)」

「(妻を3人殺したと噂される私が打診するのですよ、王太子のお気に入りの子爵令嬢を嫁にくれと。それだけで王太子が勝手に動きを加速させますぞ)」

「(それでは露骨過ぎるであろうが。おまえはどう見ても私の陣営だぞ。王太子の失態をこちらのせいにされてはたまらんから却下だ)」

ニヒルは却下したが、ロロウスの考えは違う。

ビビり過ぎなんだよな~、この王子様は。

もう少し度胸があったら絶対に国王になれてたのに。

それに自分はキレ者だと自負して疑っていないようだが、実は少し頭の方も悪い。

その証拠に、

「(まさか品行方正な王太子が北の塔に謹慎させられるとはな。縄梯子に細工しておけは除けたかもしれぬのに)」

ニヒルがそう小声でロロウスに囁きかけた訳だが、ロロウスは長年ニヒルに仕えていながらも初耳の情報な訳でピクリと反応し、

「(何の話です?)」

「(北の塔の最上室にはな。緊急時に備えて窓の外側に嵌めこまれてる鉄格子の1つが外れて縄梯子で脱出出来る仕様になっておるのさ。それで私も何回か抜け出した事があってな)」

まるで笑い話のようにニヒルは語った訳だが。

どうして、そんな大切な情報を側近の私に教えていないんだ、この男は?

それがロロウスの率直な意見である。咎めるように、

「(初耳ですが?)」

「(王族の秘密だからな)」

詳しく聞けば、外れる窓の鉄格子は宮殿から見えない北側だという事らしいが。

「(縄梯子はどこにあるのです?)」

「(クローゼットの2重底だ)」

「(細工しましょうか?)」

「(・・・任せる)」

「(畏まりました)」

「(そうだ、ロロウス。イクシー銀山送りになったサバルス商会の会頭の息子が居たろ。あれを助けてサバルス商会に恩を売ろうと思うのだが)」

王族の秘密を話してたと思ったら、今度はズレた事を言い始めたぞ。

サバルス商会は宰相のブラックスがベッタリで危険過ぎる案件なのは知ってる癖に。

接触したら、あっという間に国王の耳に入るに決まっている。

ロロウスは内心で呆れながら、

「(あれは宰相の釣り針が付いてるので無理かと)」

「(罠・・・という事か?)」

「(はい)」

「(よくやる)」

本当に分かってるんだろうな、この王子様?

私に内緒で手を出して国王になる芽を潰すとか勘弁してくれよ。

そんな事を思いながらロロウスは主君のニヒルの顔を盗み見たのだった。
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