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卒業パーティー前 〜宮殿内でも移動するのに護衛が付く王太子の浮気がバレないなんて物語は存在しない〜
40、大公への罰
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アフス大公の手駒のアドラ・スルン男爵は速攻で動いた。
国王の世代の年代で、髪の色は銀色、そしてちょいとおデブ。それがスルン男爵の外見である。
おデブなのは重要である。機敏には動けないので。
走る事もないので尾行も余裕という事だ。
騎士団が見張っていたら、そのスルン男爵本人が自ら馬車でイクシーの街に乗り込んだ。
滞在する事、2日。
看守の隊長やらに金を渡して手筈を整え、偽イーグルをイクシー銀山から街に移送して貰い、宿屋で面会しているところを騎士団が乗り込んで、
「スルン男爵、おまえを逮捕する。罪状は公文書偽造、罪人の逃亡幇助だ。神妙にしろ」
「くっ、どうしてこんなに早く」
驚いたが、おデブなので窓から逃げる事も出来ない。
あっさりと逮捕された。
そして5日後のアンゼル宮殿に大公であるニヒル・アフスが国王カミルに呼ばれたのである。
何故か側近であるロロウス・ホースマー侯爵も。
アンゼル宮殿に到着してすぐに国王カミルと謁見とはならない。
国王は色々と忙しいのだから。
アンゼル宮殿の待合室で待たされるのが通常である。
その待合室で主君筋のニヒルとバッタリ会い、「一緒に呼ばれた」と気付いた瞬間、ロロウスは「何かやりやがったな、このバカ王子」と瞬時に気付いた。
「何をやったので?」
「何もさ」
「そういう嘘はいいですから。何ですか?」
ロロウスは辛抱強く我慢して詰め寄った。キレなかった自分を褒めてやりたい。
「アドラがイクシーの街に行ったらしいぞ」
他人事のように言ったが事態は最悪である。
アドラとはスルン男爵で、そのスルン男爵は数少ないニヒル直属の配下の貴族なのだから。
「何をやってるんですか、駄目だって言いましたよね、サバルス商会は」
「仕方ないだろ。小金が欲しかったんだから」
「あのですね~」
と呆れ果ててるところにドアが開き、国王カミルが入ってきた。
逮捕されて縄で縛られているアラド・スルン男爵も一緒にだ。
「ニヒル、久しいな」
「はっ、兄上。それで本日はどのような御用件で?」
ニヒルは逮捕された手駒のスルン男爵が同室しても余裕綽々である。
これは虚勢ではない。
それが王族なのだ。
アンドレーヌ王国では王族はよっぽどの事がなけれは罪に問われない。
元王族であっても扱いは同じだ。
国王の弟なのだから。
例えばだが「兄王に逆らったりしなければ」罪には問われないのだ。
今回はサバルス商会から金をせびろうとしただけなのだから王族のニヒルから言わせれば微罪である。
こんな事で罪に問われてたら王族はいなくなる。
「おまえの家来がイクシーの街でサバルス商会の会頭の息子を脱獄させてな。そこを逮捕された」
「何という事を。兄上の決定に逆らうなど万死に値しますな」
「と弟は言ってるぞ、スルン男爵」
「そんな、大公閣下。私は大公閣下の御命令で動いただけですのに」
「何だ。オレを罠に嵌める気か? 誰に頼まれた? はは~ん、分かったぞ。マリーハルケン公爵に頼まれたな」
こんな適当な言い逃れで、本当に言い逃れ出来るのが元王族の強みである。
文書等々の証拠を残すようなヘマもしていないので。
「そ、そんな」
絶望するアラドと違って、国王カミルの方は想定内だ。
とはいえ、呆れながら、
「これで無傷は虫が良過ぎると思わんか、ホースマー侯爵?」
「何をお望みなのでしょうか」
「周囲に分かるような罰だ。何かないか? 考えるが面倒なので侯爵を呼んだのだからな。何か案を出せ。それでニヒルを許してやる」
「私が考えるのですか」
「そうだ」
「では・・・」
下手に庇うと罪が重くなりそうなので、
「御子息殿の嫁は高位貴族は諦めて伯爵にしますかな」
「伯爵ねえ」
不機嫌そうに国王カミルが言ったので、
「仕方ない、子爵令嬢で手を打ちましょう。ちょうど『王太子殿下の側妃候補』とか言われてる有名人がおりますし、そちらを引き取らせるというのは?」
「ないな。下手につつくとハミルが暴れ出しそうだからな」
その言葉にはピクリとニヒルもロロウスも反応した。
そんなに美人なのか。
これは使える情報かもな。
「だが、力の弱い子爵家と婚約させるのは良い案だ。それでよかろう。良いな、ニヒル」
力の弱い子爵家か。ロロウスがサバルス商会は駄目だと言った訳だ。
高く付いたな。
「はい、兄上」
「では、それで。スルン男爵は処刑、断絶で良いな?」
ん、厳し過ぎる、とニヒルもロロウスも思ったが、気軽に疑問を口にしたのはニヒルの方だった。
「スルン男爵は本当は何をやったので?」
「アンゼル宮殿の隠し通路の存在を知ってるサバルス商会の会頭の息子に接触したのでな」
「聞いていません、そんな情報」
処刑と聞いて青ざめていたアドラはそう必死に身の潔白を主張した。
偽イーグルなのだから、そんな情報を知ってる訳もないので聞く事自体、出来ない事を国王カミルも知っていたが、
「そうは言ってもな。本当は聞いていてこの2人に知られると困る訳だから諦めろ」
そう処遇を決定した。
ニヒルの方は興味津々で眼を輝かせながら、
「えっ、隠し通路ってそんなのこの宮殿にあるんですか?」
「教える訳がないだろ。王家の秘中の秘だぞ・・・おっと、2人とも他言無用だからな、今のは」
「ええ~」
「ニヒル」
「分かりました、兄上」
「ホースマー侯爵も」
本当にあるのか、隠し通路なんて。
罠に掛ける為にわざと私に聞かせてる?
アドラに奴、他に何かしくじって国王を怒らせたのか。
「・・・畏まりました」
この決定で本当にスルン男爵家は処刑、お家断絶の処置が下された。
無論、表向きにはイクシー銀山での罪人を脱獄された件で処罰されたのだったが、サバルス商会絡みだったので貴族達は別に不審には思わなかった。
国王の世代の年代で、髪の色は銀色、そしてちょいとおデブ。それがスルン男爵の外見である。
おデブなのは重要である。機敏には動けないので。
走る事もないので尾行も余裕という事だ。
騎士団が見張っていたら、そのスルン男爵本人が自ら馬車でイクシーの街に乗り込んだ。
滞在する事、2日。
看守の隊長やらに金を渡して手筈を整え、偽イーグルをイクシー銀山から街に移送して貰い、宿屋で面会しているところを騎士団が乗り込んで、
「スルン男爵、おまえを逮捕する。罪状は公文書偽造、罪人の逃亡幇助だ。神妙にしろ」
「くっ、どうしてこんなに早く」
驚いたが、おデブなので窓から逃げる事も出来ない。
あっさりと逮捕された。
そして5日後のアンゼル宮殿に大公であるニヒル・アフスが国王カミルに呼ばれたのである。
何故か側近であるロロウス・ホースマー侯爵も。
アンゼル宮殿に到着してすぐに国王カミルと謁見とはならない。
国王は色々と忙しいのだから。
アンゼル宮殿の待合室で待たされるのが通常である。
その待合室で主君筋のニヒルとバッタリ会い、「一緒に呼ばれた」と気付いた瞬間、ロロウスは「何かやりやがったな、このバカ王子」と瞬時に気付いた。
「何をやったので?」
「何もさ」
「そういう嘘はいいですから。何ですか?」
ロロウスは辛抱強く我慢して詰め寄った。キレなかった自分を褒めてやりたい。
「アドラがイクシーの街に行ったらしいぞ」
他人事のように言ったが事態は最悪である。
アドラとはスルン男爵で、そのスルン男爵は数少ないニヒル直属の配下の貴族なのだから。
「何をやってるんですか、駄目だって言いましたよね、サバルス商会は」
「仕方ないだろ。小金が欲しかったんだから」
「あのですね~」
と呆れ果ててるところにドアが開き、国王カミルが入ってきた。
逮捕されて縄で縛られているアラド・スルン男爵も一緒にだ。
「ニヒル、久しいな」
「はっ、兄上。それで本日はどのような御用件で?」
ニヒルは逮捕された手駒のスルン男爵が同室しても余裕綽々である。
これは虚勢ではない。
それが王族なのだ。
アンドレーヌ王国では王族はよっぽどの事がなけれは罪に問われない。
元王族であっても扱いは同じだ。
国王の弟なのだから。
例えばだが「兄王に逆らったりしなければ」罪には問われないのだ。
今回はサバルス商会から金をせびろうとしただけなのだから王族のニヒルから言わせれば微罪である。
こんな事で罪に問われてたら王族はいなくなる。
「おまえの家来がイクシーの街でサバルス商会の会頭の息子を脱獄させてな。そこを逮捕された」
「何という事を。兄上の決定に逆らうなど万死に値しますな」
「と弟は言ってるぞ、スルン男爵」
「そんな、大公閣下。私は大公閣下の御命令で動いただけですのに」
「何だ。オレを罠に嵌める気か? 誰に頼まれた? はは~ん、分かったぞ。マリーハルケン公爵に頼まれたな」
こんな適当な言い逃れで、本当に言い逃れ出来るのが元王族の強みである。
文書等々の証拠を残すようなヘマもしていないので。
「そ、そんな」
絶望するアラドと違って、国王カミルの方は想定内だ。
とはいえ、呆れながら、
「これで無傷は虫が良過ぎると思わんか、ホースマー侯爵?」
「何をお望みなのでしょうか」
「周囲に分かるような罰だ。何かないか? 考えるが面倒なので侯爵を呼んだのだからな。何か案を出せ。それでニヒルを許してやる」
「私が考えるのですか」
「そうだ」
「では・・・」
下手に庇うと罪が重くなりそうなので、
「御子息殿の嫁は高位貴族は諦めて伯爵にしますかな」
「伯爵ねえ」
不機嫌そうに国王カミルが言ったので、
「仕方ない、子爵令嬢で手を打ちましょう。ちょうど『王太子殿下の側妃候補』とか言われてる有名人がおりますし、そちらを引き取らせるというのは?」
「ないな。下手につつくとハミルが暴れ出しそうだからな」
その言葉にはピクリとニヒルもロロウスも反応した。
そんなに美人なのか。
これは使える情報かもな。
「だが、力の弱い子爵家と婚約させるのは良い案だ。それでよかろう。良いな、ニヒル」
力の弱い子爵家か。ロロウスがサバルス商会は駄目だと言った訳だ。
高く付いたな。
「はい、兄上」
「では、それで。スルン男爵は処刑、断絶で良いな?」
ん、厳し過ぎる、とニヒルもロロウスも思ったが、気軽に疑問を口にしたのはニヒルの方だった。
「スルン男爵は本当は何をやったので?」
「アンゼル宮殿の隠し通路の存在を知ってるサバルス商会の会頭の息子に接触したのでな」
「聞いていません、そんな情報」
処刑と聞いて青ざめていたアドラはそう必死に身の潔白を主張した。
偽イーグルなのだから、そんな情報を知ってる訳もないので聞く事自体、出来ない事を国王カミルも知っていたが、
「そうは言ってもな。本当は聞いていてこの2人に知られると困る訳だから諦めろ」
そう処遇を決定した。
ニヒルの方は興味津々で眼を輝かせながら、
「えっ、隠し通路ってそんなのこの宮殿にあるんですか?」
「教える訳がないだろ。王家の秘中の秘だぞ・・・おっと、2人とも他言無用だからな、今のは」
「ええ~」
「ニヒル」
「分かりました、兄上」
「ホースマー侯爵も」
本当にあるのか、隠し通路なんて。
罠に掛ける為にわざと私に聞かせてる?
アドラに奴、他に何かしくじって国王を怒らせたのか。
「・・・畏まりました」
この決定で本当にスルン男爵家は処刑、お家断絶の処置が下された。
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