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卒業パーティー前 〜宮殿内でも移動するのに護衛が付く王太子の浮気がバレないなんて物語は存在しない〜
42、サバルス商会の会頭コンドルの病死
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アンゼル宮殿に定期の御用聞きとしてやってきたサバルス商会の2代目会頭コンドルは捕縛される憂き目に遭っていた。
理由は「税の過少申告、その分の脱税」となる訳だが。
アンゼル宮殿の騎士を背後に従えて、その罪状を言い渡したのが妻の兄である内務卿ジヨール・サンドスだったので言われたコンドルは戸惑ってしまった。
戸惑うのは当然である。
妻の兄のジョールとは面識があったからだ。
家族としてではなく、裏金の受け渡しで。
というか、コンドルの逮捕理由となっている裏金をどれだけサンドス伯爵家に送金したと思ってるのだ。そもそもあの脱税と裏金作りは宰相ブラックスの指示なのだから。
そして受け取る相手のブラックスはアンドレーヌ王国のナンバー2の宰相である。
スケジュールはビッシリだ。
金を受け取る時間があるほど暇ではない。
なので、代理人がその金を受け取る訳だが、その金は税金をチョロまかしているのだから当然ながら後ろ暗い「裏金」である。
信用のおける奴が代理として受け取る事となる。
どうして信用のおける奴かと言えば、もしその代理人に裏切られたら宰相ブラックスの政治生命と貴族生命は「おしまい」だからだ。
そして宰相ブラックスが一番信用出来る人物は、息子で、サンドス伯爵家の後継者で、このサバルス商会からの裏金送金システムを受け継ぐ、ジョール・サンドスとなる訳で、そのジョールが殆ど裏金の受け渡しの宰相側の窓口だった訳なのだが。
なので、その完全に裏金に噛んでるジョールが面と向かって、
「おまえを逮捕する」
そう言ってきている訳で、コンドルはリアクションに困りながら、
「えっと」
戸惑った、というのが正直な感想である。
ジョールはその裏金作りに関係している完全な一味なのだから。
コンドルが何かを言おうとしたが、ジョールが左目で何度もウインクの合図を周囲の騎士達に見えぬように送ってきたので「ああ、逮捕はポーズだけか。もしかして密告でもあったのか?」と勝手に納得して、
「誤解です。そんな事はしておりません」
背後に控える騎士団に見せるように迫真の演技で潔白を訴え、
「それはこれから調べる。場合が場合だ。もし無実だったら風聞に関わるのでこのまま宮殿の地下牢へ移せ」
そんな訳でコンドルはアンゼル宮殿の地下牢に入れられた訳だが。
逮捕した2時間後にようやく、
鉄格子を挟んだ廊下に宰相ブラックス自らがやってきて、周囲に誰も居ない事を確認してから、
「宰相閣下、これはどういう事ですかな?」
「それはこっちの台詞だわ。密告があって動かざるを得なかったぞ。もう少ししっかりして貰わねば困るな」
何と宰相ブラックスはここへきて「芝居をした」のだった。
当然の事ながら、本当の事を教えて娘婿を「絶望させるのは忍びない」と思っている訳ではない。
「殺される」とコンドルが知ったら死ぬまでの間に色々と喋りまくるに決まってる。
「それをされる」とブラックスが困るのでこんな芝居を打っていたのだった。
そしてブラックスの職業は宰相である。
嘘も出来ないと務まらない職業なので嘘もつけた。
なので、コンドルも「自分が安全圏にいる」と誤解したまま、
「もしやマリーハルケン公爵の手の者が?」
そうコンドルが尋ねたのはサバルス商会の存在をアンドレーヌ王国内で一番快く思っていないのがカフス海利権を握るマリーハルケン公爵家だからである。
宰相ブラックスも即興芝居で話を合わせるように、
「多分な。だが向こうも証拠を残すようなヘマはしないであろうさ」
そんな事を答えたのだった。
国王と宰相がコンドルを「サバルス商会の会頭」から下ろす為にやっている事なのに。
「やれやれですな。何日くらい入らねばならないのでしょうか?」
「内務省と騎士団が合同でサバルス商会の本店の調査を終えて、おまえが『無実だった』と分かるまでだからな。何の証拠も出ず経歴に傷が付く事に焦った担当者が粘るだろうから、10日は覚悟するようにな」
「そんなに?」
「まあな。因みに例の裏帳簿は?」
「御安心下さい。宰相閣下の指示通り、国境を越えたサラット王国の支店に隠してありますので」
「なら安心だな」
「はい」
「では10日間は我慢するように」
「はっ」
「次に会うのはおまえが牢を出る時だからな」
「畏まりました」
自分がとうに切り捨てられているとは知らないコンドルはそう訳知り顔で頷いた訳だが。
その日の夕食時間に出された料理を食べたその夜に「ゲホッ」と咳をしたら血を吐いたのだった。
遅効性の毒である。
食事の最中に血など吐かれたら毒だとモロバレになるので。
「こ、これは・・・まさか、毒? どうして・・・宰相閣下? 違う。サバルス商会の存在を快く思っていないマリーハルケン公爵陣営の仕業か。そこまで恨まれていたのか、私は? クソ、私に手を出せば宰相閣下が黙っていないのを知らぬのか・・・く、苦しい」
そんな勘違いをしながらコンドルは毒で息絶え、検査官が既に言い含められていたのであっさりと病死として処理されたのだった。
理由は「税の過少申告、その分の脱税」となる訳だが。
アンゼル宮殿の騎士を背後に従えて、その罪状を言い渡したのが妻の兄である内務卿ジヨール・サンドスだったので言われたコンドルは戸惑ってしまった。
戸惑うのは当然である。
妻の兄のジョールとは面識があったからだ。
家族としてではなく、裏金の受け渡しで。
というか、コンドルの逮捕理由となっている裏金をどれだけサンドス伯爵家に送金したと思ってるのだ。そもそもあの脱税と裏金作りは宰相ブラックスの指示なのだから。
そして受け取る相手のブラックスはアンドレーヌ王国のナンバー2の宰相である。
スケジュールはビッシリだ。
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なので、代理人がその金を受け取る訳だが、その金は税金をチョロまかしているのだから当然ながら後ろ暗い「裏金」である。
信用のおける奴が代理として受け取る事となる。
どうして信用のおける奴かと言えば、もしその代理人に裏切られたら宰相ブラックスの政治生命と貴族生命は「おしまい」だからだ。
そして宰相ブラックスが一番信用出来る人物は、息子で、サンドス伯爵家の後継者で、このサバルス商会からの裏金送金システムを受け継ぐ、ジョール・サンドスとなる訳で、そのジョールが殆ど裏金の受け渡しの宰相側の窓口だった訳なのだが。
なので、その完全に裏金に噛んでるジョールが面と向かって、
「おまえを逮捕する」
そう言ってきている訳で、コンドルはリアクションに困りながら、
「えっと」
戸惑った、というのが正直な感想である。
ジョールはその裏金作りに関係している完全な一味なのだから。
コンドルが何かを言おうとしたが、ジョールが左目で何度もウインクの合図を周囲の騎士達に見えぬように送ってきたので「ああ、逮捕はポーズだけか。もしかして密告でもあったのか?」と勝手に納得して、
「誤解です。そんな事はしておりません」
背後に控える騎士団に見せるように迫真の演技で潔白を訴え、
「それはこれから調べる。場合が場合だ。もし無実だったら風聞に関わるのでこのまま宮殿の地下牢へ移せ」
そんな訳でコンドルはアンゼル宮殿の地下牢に入れられた訳だが。
逮捕した2時間後にようやく、
鉄格子を挟んだ廊下に宰相ブラックス自らがやってきて、周囲に誰も居ない事を確認してから、
「宰相閣下、これはどういう事ですかな?」
「それはこっちの台詞だわ。密告があって動かざるを得なかったぞ。もう少ししっかりして貰わねば困るな」
何と宰相ブラックスはここへきて「芝居をした」のだった。
当然の事ながら、本当の事を教えて娘婿を「絶望させるのは忍びない」と思っている訳ではない。
「殺される」とコンドルが知ったら死ぬまでの間に色々と喋りまくるに決まってる。
「それをされる」とブラックスが困るのでこんな芝居を打っていたのだった。
そしてブラックスの職業は宰相である。
嘘も出来ないと務まらない職業なので嘘もつけた。
なので、コンドルも「自分が安全圏にいる」と誤解したまま、
「もしやマリーハルケン公爵の手の者が?」
そうコンドルが尋ねたのはサバルス商会の存在をアンドレーヌ王国内で一番快く思っていないのがカフス海利権を握るマリーハルケン公爵家だからである。
宰相ブラックスも即興芝居で話を合わせるように、
「多分な。だが向こうも証拠を残すようなヘマはしないであろうさ」
そんな事を答えたのだった。
国王と宰相がコンドルを「サバルス商会の会頭」から下ろす為にやっている事なのに。
「やれやれですな。何日くらい入らねばならないのでしょうか?」
「内務省と騎士団が合同でサバルス商会の本店の調査を終えて、おまえが『無実だった』と分かるまでだからな。何の証拠も出ず経歴に傷が付く事に焦った担当者が粘るだろうから、10日は覚悟するようにな」
「そんなに?」
「まあな。因みに例の裏帳簿は?」
「御安心下さい。宰相閣下の指示通り、国境を越えたサラット王国の支店に隠してありますので」
「なら安心だな」
「はい」
「では10日間は我慢するように」
「はっ」
「次に会うのはおまえが牢を出る時だからな」
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自分がとうに切り捨てられているとは知らないコンドルはそう訳知り顔で頷いた訳だが。
その日の夕食時間に出された料理を食べたその夜に「ゲホッ」と咳をしたら血を吐いたのだった。
遅効性の毒である。
食事の最中に血など吐かれたら毒だとモロバレになるので。
「こ、これは・・・まさか、毒? どうして・・・宰相閣下? 違う。サバルス商会の存在を快く思っていないマリーハルケン公爵陣営の仕業か。そこまで恨まれていたのか、私は? クソ、私に手を出せば宰相閣下が黙っていないのを知らぬのか・・・く、苦しい」
そんな勘違いをしながらコンドルは毒で息絶え、検査官が既に言い含められていたのであっさりと病死として処理されたのだった。
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