斬られ役、異世界を征く!! 弐!!

通 行人(とおり ゆきひと)

文字の大きさ
9 / 282
聖剣士強襲編

聖剣士、動く

しおりを挟む

 9-①

「良いですか、武光様?」
「うん」

 ナジミは地面に木の枝で時計の文字盤のような円を描き、更にその中心に小さな円を描いた。

「外側の大きい丸がこの国で、真ん中の小さい丸がこの国の中心にあるタンセード・マンナ火山です」
「うん」
「で、前回この世界にやって来た時の始まりの地……私の故郷アスタト村がここです」

 そう言ってナジミは時計の文字盤でいう所の11時の辺りに✖印をつけた。

「そして今私達がいるのがココ……本島最南端の街、《サンナ・イタン》です」

 ナジミは6時の位置に✖印をつけた。

「なるほど」
「王国軍の駐屯地がある場所で、ここから一番近い所は……ココですね、《シューゼン・ウインゴ》という街です」

 そう言ってナジミはサンナ・イタンの北西……8時のあたりの位置に✖印をつけた。

「ほんなら、とりあえずはそのシューゼン・ウインゴ目指して行ったらええねんな?」
「はい!!」
「よっしゃ!! 皆……今度こそ行くぞーーーーー!!」
〔ああ、行こう!!〕
〔おー!!〕
「出発しましょう、武光様!!」
「行きましょう!!」

 武光一行はシューゼン・ウインゴ目指して出発した。

 9-②

 武光一行がサンナ・イタンを出発して二日……とある場所にある、薄暗い部屋の中では、六人の男女が円卓を囲んでいた。六人共、フード付きのロングコートを着用しており、フードを目深まぶかに被っている。

 ……彼らこそ、アナザワルド王国に破壊と混乱をもたらしている謎の集団、暗黒教団の幹部達であった。

教皇きょうこう陛下……サンナ・イタンへの《くさび》は既に打ち込みましてございます」

 聖女シルエッタ=シャードからの報告を受け、教皇と呼ばれた男は頷いた。

「うむ……聖女シルエッタよ、大儀であった。だが……アスタトの巫女は仕留めそこなったようだな」
「申し訳ございません……思わぬ邪魔がは入りました」
「邪魔?」
「はい、唐観武光からみたけみつと名乗る男です……あの男は『帰ってきた』と言っていました。恐らくは《異界人いかいびと》かと……どうやら以前にこの世界に来た事があるようです」

 シルエッタの隣で報告を聞いていた細身の男がクククと笑った。フードの奥で凶悪な光を宿した目が光る。

「フン、聖女様ともあろうお方が、その異界人とやらに聖女の証である聖杖を破壊されておめおめと逃げ帰ってきたと?」

 シルエッタは、細身の男に答えた。

「聖剣士インサン……あの男……唐観武光は、聖剣イットー・リョーダンを持っています」

 シルエッタの報告を聞いて一同はざわついた。

「……その力、『一振りで千の悪鬼天魔を薙ぎ払う』と言われるあの……」
「伝説の勇者の封印されし聖剣……」
「まさかそんな事が……本当なのか、聖女殿?」

「……これが、その証拠です」

 シルエッタは自分の隣の何も無い空間に穴を作り出し、穴の中から二つに分かれた聖杖を取り出した。
 紫の宝玉がはめ込まれた先端部のすぐ下から真っ二つに切断されている。

「なんと……百斤(=約60kg)の斧を叩き付けても傷一つ付かぬ聖杖が……!?」
「見事に真っ二つに……これが聖剣!!」
「恐るべき聖剣の威力……!!」

「いいや……違うな」

 ざわめく一同だったが、聖杖の切断面を親指でなぞっていた細身の男が異を唱えた。《聖剣士》の称号を持つ男、インサン=マリートである。

「だからお前らは素人だってんだよ……どんなに鋭い剣でも、使い手がド素人じゃあ、切断面がこうも綺麗になるまいよ。そのナントカって野郎……恐らく歴戦のつわものだ。面白れぇ……!!」

 ニヤリと笑って立ち上がったインサンをシルエッタがとがめた。

「どこへ行くのです、インサン=マリート!?」
「ククク……決まってるじゃねぇか……我らが聖女様の敵討かたきうちだよ」
「勝手な事を……!! 貴方には使命が与えられて──」
「構わん」
「教皇陛下!?」
「行け、聖剣士よ。我が与えしその黒き聖剣を振るい、我らの道を阻もうとする邪悪なる者を討ち払え」
「ククク……話が分かるねぇ!! よっ、教皇!!」
「教皇陛下に対し、何と無礼な!!」

 敬意の欠片も無いインサンの態度をシルエッタが咎めたが、インサンはまるで悪びれない。

「おお、怖い怖い……お任せ下さい、教皇陛下殿」

 インサンは芝居がかった大仰おおぎょうな動きで一礼すると、部屋を出て行った。

「……申し訳ございません教皇陛下。あのような血に飢えただけのけだものを『聖剣士』候補として連れて来た私の落ち度です」
「フフフ、構わぬ。奴の腕は……確かだ」
「……百人殺し」

 シルエッタは……インサンのもう一つの異名を呟いた。


 そしてその頃、武光達は……野盗と間違われていた!!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。 日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。 両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日―― 「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」 女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。 目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。 作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。 けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。 ――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。 誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。 そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。 ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。 癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!

異世界に行った、そのあとで。

神宮寺あおい@1/23先視の王女の謀発売
恋愛
新海なつめ三十五歳。 ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。 当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。 おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。 いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。 『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』 そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。 そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜

楠ノ木雫
恋愛
 病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。  病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。  元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!  でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

処理中です...