斬られ役、異世界を征く!! 弐!!

通 行人(とおり ゆきひと)

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聖剣士強襲編

少年、啖呵を切る

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 16-①

「行くぞ、イットー!!」
〔応ッッッ!!〕

 武光は超聖剣イットー・リョーダンを鞘から抜いた。

 超聖剣イットー・リョーダンは、およそ三百年前……この地を恐怖のどん底に叩き落とした魔王シンの討伐を目指す勇者の為に、当時最高の技術を持つ刀匠と、不思議な力を持つエルフと呼ばれる一族の長である《大賢者》によって作り出された剣であり、復活した魔王を討伐する為にこの世界に連れてこられた武光と共に旅を続ける中で一度大破した物を強化・改修したものである。

 日本刀型の刀身はアナザワルド王国随一の刀匠、ジャトレー=リーカントが途轍とてつもない強度を誇るオーガの角を百本以上溶かして純化精錬し、鍛えに鍛え、磨きに磨き抜いた至高の逸品である。
 八角形のつばには、四角く細長い棒状の護拳が取り付けられており、柄には緋色の柄紐が菱巻きされ、柄頭には心臓部であるみどりの宝玉がめ込まれている。

「へへへ……それが伝説の聖剣イットー・リョーダンか……想像以上に凄え剣じゃねぇか!! さぞかしよく斬れるんだろうなぁ、ええ!? 俺の物にして……人を斬りまくってやるぜ!!」

 伝説の聖剣、イットー・リョーダンを前に舌舐めずりするインサンを武光とイットーは一笑に付した。

「フン、よく斬れる『だろう』やと……無理やな……お前にイットーは使いこなされへん!!」
〔ああ、お前は……僕を扱える器じゃない!!〕

「テメェ……!! 俺様に使いこなせないかどうか……その剣を奪ってテメェ自身の身体で試してやるよ!!」

 インサンが獲物に飛びかからんとする猛獣のように姿勢を低くした。迎え撃つ武光達も剣を構える。

「インサン=マリート……血に飢えた獣を野放しには出来ません。ここで討ちます!!」
「ククク……姫様よぉ、せっかく拾った生命をまた捨てに来るとはなぁ。今度は逃がさねぇ……せいぜい、足掻あがいて見せろよ!!」
「行くわよ、武光!!」
「よっしゃっっっ!!」

 ミトと武光が、インサンに向かって突撃した。

「はぁぁぁっ!! せいっ!! やぁぁぁっ!!」
「……チィッ!?」

 ミトの繰り出す鋭い連撃をさばきながら、インサンは舌打ちした。前に戦った時に比べて攻撃の鋭さが増している。だが……!!
 インサンはミトの斬撃を紙一重でかわすとミトの背後に回り込んだ。

「姫様よぉ、すきありだ!!」
「それは……どうかなぁぁぁっ!!」
「うっ!?」

 ミトの背中を斬りつけようと剣を振り上げたインサンを、武光の繰り出した刺突が襲う!!
 インサンは身をよじって間一髪で武光の攻撃を躱した。インサンのコートの下襟したえりに切れ込みが入る。
 インサンは、血走った目で武光を睨みつけた。

「テメェ……!!」
「言うといたるわ!! 今のミトに隙なんかあらへん、何故なら……コイツのすきは俺が埋めるからな!!」
「……チッ!!」
「もう一度行くわよ!!」
「よっしゃ!!」

 武光とミトが再びインサンに攻撃を仕掛ける。
 共に幾多の死線を潜り抜けてきた二人の息の合った連携の前に、インサンは明らかに攻めあぐねており、その光景を見た護衛の少女達は目を見張った。

 武光の戦い方を見て、クレナは息を呑んだ。

(凄い……!! あの人、まるで、姫様の次の動きが分かっているみたい……姫様の隙を完璧に補って……!!)

 ミトの戦いぶりを見て、ミナハは唇を噛んだ。

(今の姫様は……私達の時のように、あの男に『右に注意しなさい』だの『左に気をつけなさい』だのと、いちいち指示を出したりはしていない、目の前の敵に全力を集中出来ている。私達は……姫様をお守りしている気になっていただけで、姫様に守られていたのだ)

 二人の連携を見て、キクチナは自分達の戦いを思い返した。

(私達があの方に翻弄されたのは単に個々の武力だけの差ではない。私達は、てんでバラバラに動いていて連携が全く取れていなかった……だからあそこまで翻弄されて……)

「チッ!! これなら……どうだ!!」

 ごうを煮やしたインサンは、ミトの水平斬りを後方に飛び退いて躱しながら、懐から二本の操影刀を取り出し、足元の自分の影に向かって投げつけた。
 インサンの影に突き立った操影刀が妖しく光り、二体の人型影魔獣が立ち上がる。

「行け、影魔獣共……そいつらの動きを止めろ!!」

 インサンの命令を受けた二体の人型影魔獣は、右腕の肘から先を剣状に変化させ、左右から武光達を挟み込むように襲いかかった。

「来るわよ、武光!!」
「くっ!?」

 “ドガッ!!” 
 “キンッッッ!!” 

「なっ!? テメェら……!!」

「フリード!?」
「貴女達!?」

 人型影魔獣の攻撃を、フリードの恐竜型影魔獣と護衛の少女達が止めた。

「武光さん!! コイツは僕に任せて下さい!!」
「姫様は……っ!!」
「我々が……!!」
「ま、守ってみせます!!」

 影前獣の前に立ちはだかったフリード達を見て、インサンが鬱陶しそうに吐き捨てる。

「邪魔だクソガキ共!! テメェら如きが……俺様の影魔獣をどうにか出来るとでも思ってんのか!?」

 凄むインサンだったが、フリードは不敵に笑った。

自惚うぬぼれるなよ……インサン=マリート!!」
「何だとぉ……!?」
「抗ってやるさ、最後の力が枯れるまで……ここから!! 一歩も!! 下がらない!!」

 武光はインサンから視線を離さないようにしつつ、小声でフリードに話しかけた。

「お前……大丈夫なんか!?」
「全然大丈夫じゃありませんよ!! 六幹部が生み出した影魔獣です、な……長くは持ちこたえられないかもしれません……」
「ほんなら……」
「仕方ないでしょう……僕にだってち◯ちんが付いてるんです!!」
「そやな……ち◯ちん付いてるならしゃーない!!」
「ええ、ち◯ちん付いてるんで!!」
「武光様、フリード君も女子の前でその……連呼するのはやめて下さいっ!!」

 ナジミに怒られて女子一同の刺すような視線に気づいた武光とフリードはゴホンと咳払いをした。

「よっしゃ、フリード……頼んだ!!」
「ええ、任せて下さい!!」

 フリードは力強く頷くと、自身が生み出した恐竜型影魔獣、《黒王》に命じた。

「忠実なる我がしもべよ……我が敵を打ち砕け!!」
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